K-1、PRIDE、RIZIN…一日限りのプロ格闘家が、日本格闘技界の夜明けを告げる『七帝柔道記外伝』【堀江貴文の月イチ漫画レビュー】
【堀江貴文の月イチ漫画レビュー】は、漫画を愛する堀江貴文氏が超多忙を極める合間に読んでおもしろかった作品を毎月レビューするコーナーです。長文レビューもあれば超短文レビューもありますが、そこはご愛嬌。本当におもしろいと思ったものしかレビューしませんので、どうぞお付き合いください。(編集部)
【レビュアー/堀江貴文】
まず、「外伝」とある通りこの物語はあくまでも『七帝柔道記』のスピンオフ漫画である。が、私は『七帝柔道記』を読まずにこの漫画を読んでしまった。東京マンガレビュアーズでのおすすめだったからである。
日本でまだ総合格闘技がメジャーでなかった頃。まだプロレスとの区別すらついていなく、お互いガチンコなのかシナリオがあるのかなんて言い争いをしていたような時代だ。
『七帝柔道記外伝』は、その後日本でもPRIDEやK-1全盛となり世界ではUFCなどがメジャーとなっていく、その前夜の物語だ。
ヒクソン・グレイシーに代表されるグレイシー柔術は勿論日本の柔術が源流ではあるのだが、その後スポーツ競技化していった柔道とは違い、ガチの殴り合い格闘技に寝技をミックスした総合格闘技に昇華して行く源流の一つとなった。
そのヒクソン・グレイシーに挑戦するイベントとして企画されたVTJオープンというイベントに最初で最後の挑戦をした中井祐樹という一選手の苦闘の物語がこの『外伝』。彼は北海道大学柔道部の出身だったのである。
七帝戦というトーナメントがあることを私は知らなかった。東大柔道部にでも入っていれば知っていたのかもしれないが、私は小学校の六年間無理やり柔道をやらされていたので大学に入ってまであの汗臭い柔道部なんか入るのは、真っ平ごめんでなわけである。
このトーナメントの特徴はガチの寝技中心であることだ。つまり泥臭い努力と練習の継続なのである。そんなマニアックな魅力に取り憑かれた者だけが熱中する場所だ。そこで徹底的に努力をし尽くして万年最下位だった北大柔道部を再興させたのがこの中井祐樹であり、中退してプロの格闘家を目指すのである。
体力的にハンデしかないこの総合格闘技トーナメントで相手の反則に苦しめられながら、寝技特有の締め技と関節技を駆使して体格の大きな選手に立ち向かう姿は観ているものを感動させた。不幸なアクシデントからこれが最後の試合になるものの彼はヒクソン・グレイシーに次いで準優勝を遂げる事になる。
日本の総合格闘技界の夜明けに相応しい良い試合のドキュメンタリーを楽しんでほしい。