ヤクザが「推し」尊ぶ心に共感しすぎて首が落ちる『やくざの推しごと』
【レビュアー/上原梓】
令和になってから、私は毎日毎日泣き暮らしています。
特に2022年になってからは、けっこうな高確率で泣いています。
40代の女性が毎日のように泣き暮らす…そんな日々は………
超幸せ!!
そう!
私の涙の理由、それは「宝塚歌劇団」にどっぷりハマっているから!!
今年になってから始まった月組公演がですね、めちゃくちゃ泣けるんです!!思い出すだけでうっすら涙目になっちゃうくらいの素晴らしさ…!尊い…レッツ輪廻……。
もちろん、嬉し涙だけではありません。
東京での花組・雪組の公演が新型コロナウイルスの猛威のせいで休止になってしまった時などは、「彼女たちの努力の披露の場が失われるなんて…!」と漫画のように膝から崩れ落ちて落涙したものです。そんなふうに心が乱れるのも、全て推しがいるせい!!
そんな心情が、とんでもない業界を舞台にしっかりくっきりと描き出されている作品を発見してしまいましたのでご紹介させて下さい。
強面のヤクザ、「鷲尾組」若頭の金城健(39)。ある日金城は、組長以外に命張って仁義を尽くしたいモンができてしまいます。それは……
韓流アイドルMNW!!
『やくざの推しごと』(八田てき/一迅社)1巻より引用
組長の一人娘・恵にMNWのドキュメンタリー映画を見せられる金城。MNWのメンバー、JUNに侠(オトコ)を感じた金城は、恵と一緒に祝いの場(=ライブ)に行くことに。なんと、超神席のアリーナ最前でMNWのJUNの神ファンさを浴びてしまった金城は、もう二度と戻れない沼に沈み込んでいったのでした。その時から、任侠の世界で生き抜いてきた強面オトコの推し事がはじまるのです。
この作品はですね、、、
分かりみ強すぎて、首が落ちます。
例えば金城がJUNくんに完落ちした神ファンサ。あんなの受けたら金城同様、絶対にその場で走馬灯が見えます。つうか、死ぬ時に見るリアルな走馬灯に絶対に出てきてほしい! そしたら幸せなまま死ねるから!! 宝塚観劇で浴びたあの視線、あのウインク、あのハート飛ばし、思い出すだけで私のA10神経が暴走して死ぬほどドーパミンが出ます。
はぁ尊い! ヤクザですら尊みで溢れさせてしまう推し、本当に凄い。
この作品、そんな感じでヤクザ・金城と感情がシンクロするだけでもとっても楽しいのですが、私たちの「推し」への思いをとっても明確に言語化してくれているのが最高です。そう、私たちはただ「かっこいい!」「すてき!!」っていう思いだけで推しているわけではないのです。
推しが影でどんな努力を積み重ねているのか、辛く苦しい研鑽の末に発露する奇跡のような輝き、それを私たちに披露してくれる奇跡…。
はぁ〜、尊い!ただただ尊い!!
また、「同じものを推している」という一点だけで、たとえ見た目怖過ぎのヤクザでも、「もしかして…」と一気に距離縮まって仲良くなれるところなども、とってもリアル!! 年齢、居住地、職業などを全て超えて「え!?あなたもお好きなんですか!?」と一気に距離が縮まる感じ、推しがいる人ならみな覚えがあるはず。
ヲタク特有の感情が、ヤクザ用語にうまいこと置き換えられてるところも秀逸! こんなにも共感を覚えるヤクザ、この世にかつて存在しただろうか、いやいない!!
前代未聞のヤクザの世界、あなたも覗いて見ませんか…?