全4巻を2回読む価値がある漫画『鉄腕アダム』1巻表紙の返り血の意味は4巻22話で解る!
※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)
【レビュアー/新里裕人】
一部のSFファンの話題になっていたこの漫画。
最近、コミックス全4巻を一気読みする機会に恵まれました。
……お、おもしろい!!
面白いとは聞いていたけれど、何というか、じわじわくる面白さで。
まずはじめに言っておきたいのは、必ず最後まで読むべき作品である、という事。本作は「ラスト」から逆算で作られており、最後まで読んで全てがかちりと嵌るように設計された漫画なのです。
とりあえず、一話はこちらで読めます。
時は西暦2045年。
突如、宇宙の彼方から飛来した巨大生物”蝶”。それを撃退できるのは、ヒューマノイドのアダムのみ。かくして、蝶たちとアダムの人類滅亡をかけた水際の戦いが繰り広げられる……という図式。
これだけを読むと『エヴァンゲリオン』や『シドニアの騎士』を連想させる内容ですが、はっきり言って、序盤に説明された設定は全部ひっくりかえります!
蝶たちが次々と地球に飛来する理由。
蝶たちを倒せるのがアダムである理由。
アダムの開発者であるジェシー・マクスウェルがアダムを信じる理由
月面基地のAIデイジーベルが暴走事故を起こした理由
作品を構成それをするこれら基本要素が巧妙に改変され、真相が隠されているわけです。だからこそ、すべての謎が明かされた上でもう一度読み返してみると新たな面白さが見えてきます。
登場人物のふとしたセリフ。合間のカット。「事情」が分かった上で読み返してみると、その意味ががらっと変わってきます。
(そもそも、1話冒頭に出てきた舞台は■■じゃないし、■■のシーンでもない!)
本作は、膨大な科学知識に裏打ちされたSF漫画ではありますが、その根幹にあるのは「心」の物語です。
困難な戦況を切り拓いてきたのは
冷たい鉄の兵器ではなく…
いつの時代だってハートのある戦士だ
…僕が戦士?
そうさ
人の心を持ち鉄の右腕を持つ
人類史上最強の戦士さ…
蝶を倒せるのは君だけだ
開発者のジェシーがアダムに告げる、私がグッと来たセリフです。
これこそが、本作のヒーローが巨大ロボットではなく、等身大のヒューマノイドである理由。作品のテーマであり、作者の「願い」でもある部分だと感じています。
猫を飼い、村上春樹を愛読する、「心」を持ったヒーローの戦いをぜひ読んでみて下さい。