夢を諦めかけた若者たちに、70歳の新人バレリーナは何を語る……。世代を超える、夢と友情のWEBTOON『ナビレラ』
【レビュアー/初見明彦】
皆さんは「夢」を持たれていますでしょうか?
こんなクサい導入で始まってしまって申し訳ありません。人生における夢の捉え方、追い方はひとそれぞれですが、今回は様々な「夢」の描き方をぎゅっと凝縮したような作品『ナビレラ』をご紹介します。
『ナビレラ』は、昨今話題になっているスマホで読める縦読み漫画”WEBTOON(ピッコマではSMARTOONと言います)”作品です。
Netflixで人気の「地獄が呼んでいる」も、同じくNetflixでドラマ化した「梨泰院クラス」もWEBTOONが原作であることから、その存在をご存知の方も多いのではないでしょうか。
実は、今回紹介する『ナビレラ』もドラマ化されておりますので、興味がございましたらぜひ、ドラマもご覧ください。
『ナビレラ』は話数で言うと67話で完結いたします。(ピッコマでポイント課金した場合、67×有料分60話=4020pointで読み切れます!)
1話あたり5-10分程で読めますので、これまでWEBTOONを読んだことがない方でも、気軽に読んでいただける作品かと思います。
※本作品は、ピッコマでは『ナビレラ』、comicoでは『それでも蝶は舞う』というタイトルで掲載されております。
70歳のおじいちゃんがバレリーナを目指す物語
「ナビレラ」とは、韓国語で「蝶(ナビ)のように羽ばたく」という意味だそうです。
本作では、70歳を超えた主人公・シムさんが、バレエをはじめたくなるシーンからスタートします。シムさんは、長年連れ添った奥さん、まじめに育った子供3人、それに孫もいるという普通のおじいちゃんです。
そんなシムさんが、突然家族に「俺、バレエがやりたいんだ」と打ち明けるもんだから、家族は大パニック。
家族の反対を押し切り、通い始めたバレエ教室でも、講師の先生は70歳のおじいさんが怪我でもしたら責任問題にもなりかねないと心配して、必死に説得して諦めるように促します。
しかし、シムさんは負けません。そして、なんとか通い始めたバレエ教室で、才能ある若き青年チェロクと出会い、物語は進んでいきます。
それぞれの思う「夢」が詰まっている
年齢を理由に夢を諦めない高齢者のシムさん。ここまでならよくある感動ストーリーでおしまいなのですが、この作品が面白いのは、登場人物全員の夢に対する考え方なのです。
年齢を理由に夢を諦める、
家族の生活のために夢を諦める、
他人が認めないから夢を追えない、
金銭的都合で夢を追えない、
才能はあるのに勇気が出ず夢へと進めない、
夢を追っている人を素直に応援できない、
夢のことを考えるたびにわくわくしてたまらない、
夢へと続く挫折が悔しくて諦めたくなる、
夢をかなえた後で目的がわからなくなる…
そんな人々が、シムさんとの出会いをきっかけに呼応していく展開が読者の心を揺さぶります。
この作品は一見、主人公のシムさん、そのパートナーとしてバレエを指導するチェロク、二人を中心に物語が進んでいくように見えますが、物語の中心にあるのは常に人々の「夢」なのです。
本作品『ナビレラ』は、人々のつながりとストーリーを通して、「夢」に対する見方を考えさせられる作品です。
後半だれる、だがそれがいい
本作品は、夢に対するメッセージ性だけでなく、きちんと泣かせるストーリー展開も秀逸です。
私は、このWEBTOONで5回くらい泣いてしまいました。
世代を超えた友情、夢、家族とのつながり、これだけ素材がそろっていて、泣けないわけがありません。
しかし、作品のクライマックスを過ぎたあたりで、作品の展開が少し遅くなっていきます。皆様の期待するような劇的なラストもないかもしれません。
ですが皆様には、できればそこで諦めずに最後まで読んでほしいのです。
すべての話を読み終わるころには、ストーリーや、これまで登場したキャラクターの輪郭がぼやけて、ぼんやりと、あなたの考える「夢」が浮かんでくるかもしれません。
楽しいだけなのはただの趣味なんだって。
楽しくて幸せだけど、怖くて緊張して、失敗すると悔しくてイライラするのは
それは「夢」だからだよ。
『ナビレラ』(HUN/JIMMY/SUPERCOMIX STUDIO)50話より引用