VRChatお砂糖JUST街頭聞き込み調査報告書
はじめに
2023/11/06にバーチャル美少女ネム氏によって「ソーシャルVR国勢調査2023(現 ソーシャルVRライフスタイル調査2023)」が公開されました。非常に興味深い調査であった一方で「公開アンケートの性質上、VRに興味があるヘビーユーザしか回答せず、ディープな話題が誇張されているのではないか?」との指摘がされていました。
そこで、特に話題を集めていたお砂糖JUSTの項目に絞り聞き込みを行い、先行アンケートと比較することで妥当性の検証を行いました。
ソーシャルVRライフスタイル調査2023
忙しい人向け
Public/Friend+/Friendでお砂糖、JUSTの有無について聞き込み調査を行った
n = 100
お砂糖 先行アンケート 35% → 本調査 30%
JUST 先行アンケート 37% → 本調査 22%
お砂糖については同様の値が出た
JUSTについては値を大きく下回った
聞き込み調査の性質上、JUSTの有無については事実とは異なる回答も考えられる
プレイ時間500時間未満のライトユーザに絞った場合、先行アンケートを大きく下回る値が出力された
上記より、アンケート調査で懸念されていたライトユーザの実態との乖離が考えられる
一方、調査員が属する界隈の偏りの影響のため、本調査のお砂糖/just率は真値よりも小さい値が出ている可能性がある。
先行アンケートとの差文と本調査の意義について
本調査は先行アンケート調査で問題視されていた「パブリックの公開アンケートでは、VRに興味があるヘビーユーザしか回答しないのではないか」という問題に対して、妥当性を検証するために聞き込み調査を行いました。
聞き込み調査を行うことでライトユーザを含めた実態の調査を行う
特に話題を集めていたお砂糖JUSTの項目に絞り聞き込みを行い、先行アンケートと比較することで妥当性の検証を行った
また、本調査では下記内容が先行アンケートと異なることに注意してください。
先行調査ではすべてのプラットフォームに対応しているが、本アンケートではVRChatを対象に調査を行った
今回は聞き込みの対象を日本語話者に限定した
Invite+、Inviteにいるユーザには調査ができない
サンプル数が先行調査より少ない
ランダム性については、調査員の機嫌、気分にゆだねた
聞き込み調査
本アンケートでは下記の方法でアンケートを行いました。
パブリック、プライベート問わず、適当なインスタンスに入り、目についた人にアンケートを行う
グループによる偏りを無くすために、同じグループから2 ~ 3人を上限として聞き込みを行う
アンケート内容は以下です。
表示トラストランク
steamプレイ時間
性別(声により判別)
お砂糖経験の有無
JUST経験の有無
出会ったワールド名
出会ったワールドの公開レベル(Public/Friend+/Friend)
調査員とフレンドか否か
最終的に100人のVRCユーザに協力いただきました。
データセット
トラストランク
トラストランクは真のトラストランクではなく、表示されているトラストランクを記載しました。そのため、UserにはTrusted Userが含まれていることに注意してください。
Trusted User 41名
Known User 10名
User 33名
New User 10名
Visitor 7名
男女比
男女の判別については、声からの推定になります。ボイチェンを利用しているユーザについては、不明と記載しました。
男性 84名
女性 14名
不明 2名
男女比については、ネム氏の先行アンケートや株式会社VLEAPが2023年に実施した「メタバース大規模調査」でも同様の比となっています。
株式会社VLEAP メタバース大規模調査
アンケート場所
Public 63名
Friend+ 28名
Friend 8名
こちらのアンケート場所の集計について、上記メタバース大規模調査では日本人はFriend+に多く滞在すると示されていますが、本調査ではPublicが最も多くなっています。これはFriend+/Friendでの聞き込みを多くすると調査員が属する界隈に大きく依存してしまうため、「界隈に寄らない」聞き込みに近づけるためにパブリックでフレンドではない人に聞き込みを行った結果になります。
結果
全体の集計
上記のグラフより、本調査の結果はお砂糖/JUSTの両方で、先行アンケートの値を下回る結果となりました。特にJUSTの回答で大きく値が下回りました。これは、本調査が対面(VR上)であり話題がセンシティブなため、事実とは異なる回答をするユーザによる下振れが考えられます。
プレイ時間ごとの比較
先行アンケートのP.52, 56にてユーザのプレイ時間の閾値を500時間に設定し集計していたことと、本アンケートにてKnown UserとTrusted Userの閾値が500~600時間を境としてトラストランクの変化が見られたことから、500時間を閾値として、ヘビーユーザとライトユーザを分割しました。その解析結果を先行アンケートの該当ページと比較することでヘビーユーザ、ライトユーザの考察を行いました。
ヘビーユーザ(プレイ時間500時間↑) 59名
ライトユーザ(プレイ時間500時間↓) 41名
ヘビーユーザのお砂糖経験率は、先行アンケートと本調査の間で近い値を示していました。一方で、ライトユーザのお砂糖経験率には乖離が見られ、プレイ時間が500時間以下のユーザではお砂糖/JUST経験がなく、「したことがない」「存在を知らない」ユーザしかいない結果となりました。 先行アンケートは、SNS等により周知されたGoogleフォームによる公開アンケートであったため、SNS上でメタバースユーザとのつながりを持たず、当該フォームを認知できなかったライトユーザの情報が先行アンケートに反映されていない可能性があります。具体的には、steamにVRCがあったからなんとなくダウンロードしたゲーマー層や、Quest3を買ったのでとりあえずメタバースに入ってみた新規層が該当すると考えられます。
性別ごとの比較
男女の比較では、先行アンケートと同様に女性のほうが男性よりも多くのお砂糖/JUST経験があることが分かりました。女性のサンプル数は15名しかいないため、数値については確かではありませんが先行アンケートと同様の現象が見られました。
ワールドの公開レベルごと
Publicをpublicワールド、Friend+とFriendをprivateワールドと定義して両者のお砂糖/JUST経験率を比較しました。
こちらは先行アンケートとの比較はできません。
本調査は聞き込みの都合上、僕たちの界隈に寄らないようにパブリックでのアンケートを中心に行いました。プレイ時間が浅い人はパブリックにいることが多いため、その影響も考えられます。
サンプルをプレイ時間500時間未満のライトユーザと500時間以上のヘビーユーザーに分けて、publicとprivateのお砂糖経験率/just経験率を比較しました。
驚くことに、ヘビーユーザのお砂糖経験率はprivateに比べpublicで11ポイント以上も高くなっていました。一般的な感覚として、privateにいるユーザの方がpublicにいるユーザよりもお砂糖経験率が高くなると考えられますが、この感覚に反する結果が得られました。
調査員とのフレンド関係別の比較
前項の結果(ヘビーユーザのお砂糖経験率はprivateよりもpublicの方が高い)が得られた要因として、「調査員が入れるようなprivateのインスタンスには、お砂糖やjustを好むようなユーザが少ないのではないか」という仮説を立てました。
すなわち、冒頭で述べた「Friend+/Friendでの聞き込みを多くすると調査員が属する界隈に(アンケート結果が)大きく依存してしまう」という懸念が的中していると考えました。
上記の仮説を検証するため、調査員とのフレンド関係別のお砂糖just経験率を、ヘビーユーザ/ライトユーザごとに比較しました。
ヘビーユーザに限定すると、調査員のフレンドでない集団は、調査員のフレンドの集団と比較して、お砂糖経験率/just経験率ともに高い値を示していました。
この結果から、界隈の偏りによって、Privateインスタンスのお砂糖just経験率が真値よりも低く出ている可能性が示唆されます。すなわち、上記の仮説が正しい可能性は高いと言えます。
サンプル全体に目を向けると、調査員のフレンドでない集団は、調査員のフレンドの集団よりもお砂糖経験率/just経験率ともに低い傾向が見られました。お砂糖経験/just経験のないライトユーザ層が、全て調査員のフレンドでない集団に分類されているためであると考えられます。
まとめ
先行アンケートと比較して、お砂糖率は5ポイントの微減であったが、Just経験率は15ポイントも減少した
プレイ時間500時間以下のライトユーザ層のお砂糖/just経験率において、本調査は先行アンケートを大きく下回る値が出た。
先行調査では、「steamにあったためなんとなくVRCをダウンロードしたユーザ」や「Quest3を購入したためなんとなくVRCをダウンロードしたユーザ」のような、SNS、Web媒体などの昨今の話題を経由せずに、なんとなくVRCを始めたゲーマー層のデータが拾い切れていない可能性がある。
一方、調査員がjoin可能なインスタンスに入って直接聞き込みを行うという調査方法の特性上、本調査は「界隈の偏り」の影響を受けてお砂糖経験率/just経験率ともに低めの値が出ている可能性がある。
さいごに
先行アンケートを見た時に、僕個人としてはそこまで違和感を感じませんでした。パブリックアンケートの設置場所が多岐にわたっていたことと、母数が2000人近くいるためです。ですが、先行アンケートの回答者が情報感度の高いユーザであるという懸念も理解できるため本調査に踏み切りました。本調査はサンプル数こそ少ないものの、先行アンケートと近い値が出たので、個人的にかなり納得感がありました。一方で、全体的に若干値が下がったこと、プレイ時間で見た時にライトユーザの値が特に乖離していたことから、先行アンケートの回答者が情報感度の高いユーザに偏っているという当初の懸念を実感することができました。とても興味深い調査になりました。ありがとうございました。(ちんぽこDTハメ太郎)
謝辞
改めて、本聞き込み調査にご協力いただいたVRCユーザの方々に感謝申し上げます。
先行アンケートを敢行したバーチャル美少女ネム氏に特段のリスペクトと感謝を申し上げます。
聞き込み、原稿作成に協力してくれた上原アーモンド亜衣君(twitter @UeharaAlmondAi)に感謝申し上げます。
引用
ソーシャルVRライフスタイル調査2023
株式会社VLEAP メタバース大規模調査