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#28 9歳の推し活のすゝめ
先週の自宅での会話。
長女が「ママ、V君のキーホルダーを買いたい!」と私に言ってきた。
V君は私も推している歌い手グループの赤色担当で、ネット上でグッズも販売されている。
どれどれと娘が持っているタブレットを確認すると、「800円」と金額表示されているV君のキーホルダーと目が合った。
「メルカリで売られているのか、中古かな」と私が呟くと、「チュウコってなに?」と長女は私の目をじっと見ながら聞いてきた。
私が「あー中古ってのは、誰かが買って使って、要らなくなったから売っているものだよ」と多少雑な返事をしたら、長女はその場で考え込んで「・・・じゃあいいや、ちょっとかんがえて、また欲しいものあったらママに言うね!」とまた2階に上がった。
その後もV君のグッズが映っているサイトを私に見せてくるものの、全て中古品。理由は簡単で、V君のグッズで「1000円以下」のフィルターをかけると、どうしても中古品しか販売されていないのである。
毎月のお小遣いが400円の長女にとっては、定価5000円近くするV君のぬいぐるみも、アクリルスタンドセットも全く手が出なかった。
*
我が家は誕生日とクリスマスにしか、子どもたちに欲しいものを買ってあげない。
なんなら、文房具も「使い切ったら」新しいものを買ってあげるが、失くしてしまったり故意的に壊してしまったら、自分のお小遣いから買うというルールだ。
お小遣いは学年×100円。
つまり2年生の次女は200円、4年生の長女は400円、5年生の長男は500円、といった感じ。もちろん学年が上がるごとに、家のお手伝いの難易度が上がる。
あとはテストで100点とったら、50円もらえるボーナスも設けている。
それ以外はお年玉や、誕生日に祖父母からいただいたお金を貯めているのだが、長男と次女はある程度貯まったからと、去年から積立NISAで米国株を保有している。
そう、際立って浪費家なのが長女なのである。
長女は欲しいものがYouTubeで見つかると、すぐにGoogleで検索し「何とかして手に入れられないか」を考える。
私に似て好きなことに猪突猛進タイプなので、これは将来クレジットカードの限度額まで使い切るタイプだとふんでいる。
だからこそ、私は長女がねだるものは特に注意することなく、ポチってあげているのだ。もちろん彼女の貯金からなので、貯金が底を尽いたら何も買えなくなることは本人も分かってはいる。
これは一見すると、危ない金銭教育に見えるかもしれない。
しかしながら過去に多重債務で苦しんだ黒歴史を持つ私は、今のうちに「お金を使いすぎたらどうなるか」を子どもたちに身をもって分からせてあげたいのだ。
(ちなみに私の親はお小遣い制は導入せず、欲しいものがあれば私が申告して買ってもらうシステムだった。そして私がねだったものはよっぽど高額でない限り、ほとんど買ってもらっていた。
その結果「お金は使ったらなくなる」という常識が成人を迎えても身につかなかったのである。)
*
「ママ、これにする!」
30分後、長女が選んだのは子供用のメイク道具だった。
閲覧サイトはメルカリからSHEINに変わっていて、値段は1912円。
私が「送料がかかるけど・・・」と言いかけたら「知ってる、500円でしょ、だからそれも足して2412円をママに渡すけんさ、お釣りある?」
と食い気味に答える長女。
「え、本当にちゃんと確認したのかよ?」と思いながら、私は小さい『送料』のマークをタップした。『500円』と記載されている。
ほほう・・・やるな、おぬし。
でも1つだけ大きな疑問があったので長女に質問した。
「なんでV君のグッズじゃなくて、メイク道具なの?」
娘はまた私の目をじっとみて、ニコッと笑いこう続けた。
「たしかにV君のぬい(ぬいぐるみのこと)やアクキー(アクリルキーホルダーのこと)は欲しいんだけどさ、それよりも私が可愛くなったほうが、V君に近づけるかなって思ったの」
ほほう・・・グッズを買うよりも、推しのために可愛くなったほうが推しの目に留まるという考えか。
彼女は「好き」をひっそりと自分だけで愛でる方法ではなく、「相手の視界に自分を映すにはどうすべきか」を考えたのである。
ライターの私に譬えると、憧れているライター様の作品を孤独に読むだけでなく、その作品の感想を身の程をわきまえずにXでコメントする、みたいなことか。
お小遣い5か月分をはたいて買うメイク道具か。
私は今回の買い物を「しっかり考えて、本当に欲しいものを買った」として少し褒めたい気持ちがあった。
がしかし、何か引っかかるものがある。
ちょっとまって。お小遣い5か月分ってことは、私に置き換えたら給料5か月分?
つまり100万円超えている。ぎょええ。
長女の「推し活のすゝめ」は、多重債務時代の私より大幅に振り切っていた。
昨年FP資格を取得した私に、何のアドバイスができるのだろう。
ママ、今も真剣に考えてるよ。