23歳の諦観と『団地のふたり』というドラマ
今期1番私が楽しみにしていたNHK BSのドラマ、「団地のふたり」をご存知ですかい。
SNSでリサーチをしてみると、ちらほら盛り上がっているが、ドラマ好きで名が通っている有名なSNSアカウントたちはあまり触れていないよう。
こんなにも、丁寧に作られていて、こんなにも、面白いのに……??
面白いだけじゃない。
たくさんの人が見て、このドラマの素敵な道徳を共有して欲しいとすら思う。
そんな説教くさいことを書いてしまうほど、(自分も含めた)若者にこそ届いてほしい、希望にも似た50代女性のささやかで豊かな日々が綴られているドラマだ。
あらすじ
ノエチは大学の非常勤講師で、奈津子は元売れっ子イラストレーター。2人とも、薄給。2人とも、親が所有している団地の一室で暮らしている。
それでもドラマ内は多幸感で溢れており、そのスローライフに憧れもする。
団地の個性豊かな人々を、演技力抜群のキャスト陣が軽やかに、時にしっとり重厚に演じ、主演2人を振り回す。
映像も音楽も小道具も衣装もぜんぶがぜんぶ、魅力満載だ。
23歳の諦観と『団地のふたり』というドラマ
(感想です。ネタバレがあるかもしれない。)
このドラマに対し、清貧を描いていると思うというツイートを見た。確かに、薄給の独身女性2人がフリマで一喜一憂する様はそのように映ってしまうかもしれないが、このドラマは、団地で送れる些細な幸せを賛美しているだけではなく、隣人のために行動することや、家族同士でも気を遣いつつ、言葉を尽くして関係を築くことの大切さをよく描いていると思う。
それに、豊かな時代を知っている大人たちは貧しさがとても悪いことの様に思うかもしれないが、生まれた時から少子高齢化を嘆かれ、消費税は増え、自分の国の行く末と共に老後の不安がのしかかってきた23歳の私にとって、友人と過ごすささやかな団地暮らしは、理想であると感じた。
(やりたく無い職について消費社会に流され大金を使うより、やりたい職にこだわって友や家族と仲良く暮らす方が豊かではないのか?)
私たちの世代は、現実的なひやりとする絶望を老後に対して抱いていると思う。
結婚せず、子供も無く、稼ぎもなく、定年も引き延ばされ、親の介護をし、十分かもわからない年金で、老いてから楽しく過ごせるの?
こんな不安が、生まれてからずっとあるわけです。
私が将来、お金に困らず生きられるかはわからない。健康かもわからない。
ただ、『団地のふたり』のように、悩み事も小さな幸せも語り合える様な親友や、お互いが死んでからも想い合える家族がいれば、きっと日々が楽しいだろうなあ。大きな不安をみんなで薄めながら安寧な生活を送れるかもなあ。そんな希望を抱けるような作品でした。
🙂(でも、人とそんな良好な関係を築くのって大変だし面倒臭いよね)
そうなんですよ。人と関わるって最高にめんどくさくて超大変なんですよ。
だから私たちはソロ〇〇をしたり、結婚をしない選択をとるようになったり、親と連絡を取らなくなったりする。
そしてそれが正当で良しとされる価値観の世代。
もちろん、救いようの無い毒親だったら縁は切っちゃって良いし、やばいご近所さんとの付き合いは避けて良い。
ただ、面倒くさそうな全ての関わりから遠ざかり、進んで孤立してしまうのは、良いことなのだろうか?親のことを煙たがる友人たちを見て、常々思ってきた。そんな簡単に毒親なんて言っちゃって良いの?縁切っちゃって良いの……?
だからこそ、団地のご近所付き合いの面倒さ、親の小言、親友との喧嘩を描きつつも、それらを超えた先にある素敵な関係性を見せてくれる『団地のふたり』をお勧めしたいのです。
NHKオンデマンドで観れます!