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近く、遠く、それでもちかく


きっと同い年か、ひとつ違いか。
生きてきた長さはほぼ同じはずなのに
彼女は私とは程遠く、とてつもなく

優しい

ぶれない優しさを持つようにみえる。


はじめましてをしたのは2022年3月
3日間を一緒に過ごしながらも
ものすごくたくさんのことを語り合ったわけでもなく
それでも、’’うまくいなかいこと’’について、くよくよする私に
ほんっとに素敵だと思うの!私はあなたの踊りがとっても好き!
澄んだ目を向けて伝えてくれる彼女の言葉を
疑うことなくわたしは受け取っていた。

次に会ったのは5月
圧倒された。

彼女はステージで踊るという。

体調が悪くて、ずっと自分の椅子で
おとなしくいろんな人のステージを見ていたけれど
これだけはどうしても、
そう思って席を立ち、ステージに近づいた。

踊りをみて涙が出る、なんてことあるんだなあって思った。
彼女と、もうひとりのステージ
正直記憶がおぼろげ
とにかく、すごかった、ステージだった。

どんな感想を口にすれば正解なのかもわからないけど
なにかを伝えたくて、話しかけに行きたくて

その気持ちだけもって、彼女を探せばよかったんだと思う。

だけど、行かなかった。

私は明らかに嫉妬していた。悔しがっていた。

同じ年数だけ生きてきたはずなのに
彼女は人の心を動かすなにかを持っていて
それを表現する踊りというものも持っていて

なんでこんなに違うんだって、そう思ってしまって

たくさんの人に囲まれる彼女を
遠くから眺めることしかできなかった。

大好きな彼女に嫉妬してしまった自分に嫌悪感を抱きながらも
時間はすぎていって
時間がすぎてもすぎても、なかなか彼女に話しかけられない
だけど彼女を視界から外すこともできず
遠くから、「すごい人だなあ、」と眺めているだけだった。

私が彼女に嫉妬したのは、それだけじゃなかった。

大勢が盛り上がる空間で、ひとりパニックを起こした子がいて
その子は空間のうしろで、苦しそうにしていた。

その横で、背中をさすっていたのもまた
私の大好きな彼女だった。

誰よりもはやく人のSOSに気づける優しさ
気づいたときにも迷いなく手を差し伸べられる優しさ
自分のことよりも人に寄り添うことを選べる優しさ

ステージを通して、すごいものを見てしまった
そんな彼女に嫉妬してしまう
そんなことを考えて私が立ち止まっているあいだに
彼女はその優しさで、またひとり、誰かを救っている。

おかしいな、生きてきた時間は同じはずなのにな。
根っこから、なにかが違う気がするな。
どう頑張っても、彼女には敵わない気がするな。

なりたい、だけどなれない、とっても遠いその姿が
すぐ近くにいる。
彼女から遠ざかることを選んでしまった。


家に帰ってから
嫉妬からきていたはずのモヤモヤは
形をかえて私のなかにあった。

踊りにいくら圧倒されたとしても、
真似できないと思うほどにまっすぐすぎる優しさをみても、
全てを持っているように見えてしまったとしても、
遠い存在に感じてしまったとしても、

私が彼女に支えられた瞬間は確かにあって
近くで笑ってくれていた時間は確かにあって
はじめましての日から
だいすきなことに変わりはなくて

だいすきでとても大切な存在だから、やっぱり話したい
踊りはもちろん
彼女の優しさをとっても尊敬するし憧れているし
それなのに、話さないままなんて
このままにしてちゃだめだよなあって
モヤモヤはどんどん大きくなっていった。

2.3週間がたったころだったか、
ZOOM上で彼女に再会した。

何人も参加している場だったけど
ちょっとふたりで話したいんだあって言って
ようやく二人でゆっくり話すタイミングが巡ってきた。

なんてことない会話で思い出せる
彼女が遠い存在になってしまったのではなく
嫉妬心が、遠くの存在にみせていただけだったこと。

一枚の写真の話になった。
5月同じときを過ごした、その一瞬が切り取られた写真
彼女はだれかとハグをしていて
その顔はとても愛おしい大切なものを
壊れないように、でもとても力強く抱きしめ、愛を伝えるような
そんな表情。

相手はだれかわからなくて
だけど、あまりにも印象的な彼女の表情で
私はその写真のことをとってもよく覚えていた。

「この写真の相手、ゆうかだよね」

彼女に言われて、本当に驚いた。
よくみたら、確かに私がその日着てた服だし
髪型もわたしそっくりだ。

「気づかなかった、、いい表情すぎてぜんぜん相手みてなかった、、」
って言ったら

「そんないい表情を引き出してくれたのは、あなたなんだよ、あなたとのハグなんだよ」

そういってくれた。

遠くにいるように思えた5月、あの場所で
確かに彼女は目の前にいた私を
大切に大切に、ただただまっすぐ愛してくれていた。
気づくの遅くてごめん、そう思いながらも
うれしくてうれしくて
私が大好きな彼女の表情を、私が引き出していたんだって
その事実だけで十分だった。


遠くに感じていたことも、
きっとその理由が憧れや尊敬からくる嫉妬なんだということも、
だけど同時に、大好きだからこそやっぱり話したいんだということも、
感じていたことをすべて話してしまった。
これすらも、彼女の優しさに対する甘えだなあ、と思いつつ
だけどやっぱり彼女の優しさはぶれなかった。

嫉妬したり、うらやましいと思ったり、少し妬んでしまったり、
それすらも人間らしいよね。
人間なんだから仕方ないよね。

私が許せなかった私を認めてくれるこの言葉に
どれだけ救われただろう。

話すことを躊躇してしまっても
最後にこうやって私自身をみてくれて
損得なしに話したいって言ってくれること
本当にうれしいよ

彼女は最後にそう言ってくれた。

大好きな彼女の、うれしい理由になれたこと
それが私にとってとてもうれしい。
そう思った。


関東と九州
距離はとっても離れていて
だけど、ふとした瞬間思い出す姿

私の弱いところを知っている

完璧にみえる彼女にも、たくさんの葛藤があること

だけど私たちはきっとそれを
「人間らしいね」
「そんなあなたが愛おしいね」
って笑いあえる気がするなあ。










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