MPA履修の意義、卒業後の進路について
日本ではまだまだ知名度の低いMPA。そんなMPAを取得することの意義や、卒業後はどういったキャリアが広がっているか自分なりに解説します。
MPAとは?
MPAと似ていて(?)日本で知名度が高いのがMBA(Master of Business Administration)です。MBAは民間事業会社の経営に関する事柄を学ぶことが目的ですが、MPAは政府やNPO/NGOといった組織の経営に関する事柄を学ぶ学問です。
*他にもなんとなく響きが似ている修士課程名でMPP(Master of Public Policy)や、MPH(Master of Public Heath)等もあります。
MPAを日本語で訳す場合は、行政管理学修士、行政経営学修士だったり公共経営学修士となります。専門職学位の一つです。
日本だと早稲田大学や筑波大学のプログラムが有名かと思います。
MPAで学べること
MPAで学べることは、主にはパブリックセクターでの経営管理、財務戦略、人事戦略、評価手法について学びます。
経営管理、財務戦略、人事戦略関連のクラスは、実はMBA生と一緒のクラスを履修することも多いです。実際に、私が履修したクラスの3割程はMBA生と混合のクラスでした。
MBAと大きく異なる点は、
1)NPO・NGOや行政機関でのプログラム組成方法や、そうしたプログラムの評価手法について学べる点
2)各クラスで活用するケーススタディ、財務諸表、プレゼンの想定、各プロジェクトの題材はすべてパブリックセクターから持ってくる点
の2点かと思います。
パブリックセクターといった場合、行政機関(連邦政府、州政府、州以下の行政区分)、NPO・NGO機関、国際機関とありますが、これらの比重の置き方はプログラムによって異なります。
*MPHの領域かもしれませんが、医療機関運営に焦点をおいたクラスも時期によっては開講していました。
因みに、私の出身校であるブリガムヤング大学マリオットスクールのMPAでは、州政府、州以下の行政区分、NPO機関が圧倒的に多かったです。ユタ州の行政機関に数多くの卒業生を輩出していることが関係していると思います。というか、ユタ州は地理的に何のメリット(逆にMPA的にメリットのある地域はワシントンDCとか)もないです。BYUが関係を構築できているのは地元ユタ州の行政機関やNPOとなりますので、留学生は猶更BYUのMPAで学ぶ必要性は低いかと思います。また、国際機関やNGOを目指すならBYUのMPAである必要は皆無です(末日聖徒イエス・キリスト教会の会員である、という事情があればまた別かと思いますが)。
MPAを学ぶことの意義とは?
MPAを学ぶことの意義は、行政機関、NPO/NGOが取り扱う問題はどれも複雑なものが多いです。そうした複雑な問題を解決するにあたり、どのように問題解決の仮説をたて、仮説検証手法を計画・実行し、取得データを解析し、一連のプログラムを評価するかといったことを体系的に学べることだと思います。
民間事業会社の事業継続/存在理由は株主へリターンを提供し、そのリターンを最大化することかと思います。その大目的を達成するために、時にESG(Environmental, Social, and Governance)といった時に勃興するポリコレ的なことも考慮しますが、突き詰めると株主へのリターン最大化であると言えるはずです。
一方で、行政機関、NPO/NGOの受益者は株主といった明確な特定グループではないので、こちらを立てればその別の受益者の立つ瀬がない、といった事象に見舞われます。一方でリソースは当然に有限であり、世間や他団体(例えば環境保護団体とかw)から評価の目を常に向けられているので、何か一つのプロジェクトを遂行するにしても複雑になりがちです。
ではどうするのか?という点ですが、詳細な手法は私は記載できません(忘れましたのでw)ので、気になる方は是非MPAを履修してみてほしいです。
MPAを履修することで、パブリックセクターに携わる実務家としての基礎訓練が受けられると思って頂くと大きく外れないかと思います。あくまで基礎です、基礎。
※余談ですが、個人的にはMPAは実はカバー範囲が広いため「ツブシが効く」ことだと思っています。MBAと似ているのですが、「経営」といっても幅はとても広いです。財務もマーケティングも人事といった分野から、クリティカルシンキングや財務モデリングといった手法まで多岐にわたります。なので、良くも悪くもMPAだろうがMBAだろうが、それを履修して学位取得したところで現場では大して役に立たない、という点は一緒です。であればいっそ割り切って、この”広く浅い”MBA/MPAで学ぶ各分野や手法をフル稼働させて卒業後の就活に活かせばいいと思っています。
MPA取得後の進路は?
MPA取得後の進路ですが、主に以下になります(日本人が米国でMPAを取得した場合を想定しています)。
一つ覚悟しなければいけないのは、日本人である以上米国政府では働けないので、最初から行政機関はスルーすることになります。日本の公務員試験を受けることは勿論可能ですが、MPAを取得しているかどうかは全く関係ないので、日本の公務員もオプションから外しています。
① 現地NPO/NGO組織への就職
”現地”と記載しているのは、一般にNPO/NGO組織に日本で就労するとなると、ある程度の職歴が求められるからです。MPA取得前に就労経験がある場合は問題ないかもしれませんが、私のように学士がストレートでMPA取得した場合は日本のNPO/NGPはキャリア選択肢から外れてしまいます。
ただ誤解してほしくないのは、日本のNPO/NGO組織に入るよりも現地NPO/NGOに就職する方が簡単というわけでなく、単に職歴の有無で問答無用に断られたりとかが少ない、という程度です。
一方で、ここでもネックになるのがビザです。MPA取得後にOPT制度を利用することで1年程度は可能かもしれませんが、その後の継続雇用となるとかなり厳しいかと思います(労務管理的に米国人を雇用するよりも難易度が上がる)。
なので、可能性として無しではないが再現性はそんなに高くない、というのが私の感想です。
一つ、私の経験から成功例をお伝えすると、留学生(日本人ではない)が卒業後に現地(ユタ州)のNPO法人に就職しました。彼のケースでは、MPA履修中からクラスで課されるプロジェクトで現地のNPO組織と接点を持ち、プロジェクト完遂後も接点を持ち続けたようです。そうしたやり取りの中、彼自身の能力やポテンシャルを認めてもらい、卒業後の就職へつながったそうです。なので、在学中から現地のNPO/NGOと積極的にネットワークを広げて貢献することが大切なのかもしれません。
② 日本のNPO/NGO組織への就職
さっそく上記①と矛盾するのですが、ごく稀になのですが(恐らく人手不足すぎる等の理由?)職務経験が無くても受け入れてくれるNPO/NGO組織が存在します。
これは当たってみるまで分かりませんし、そうした組織はかなり小規模だったりするので給与や福利厚生面から他のキャリア選択肢と比較した場合に見劣りする可能性もあります。
ただ、そうした機関を見つけることができて且つ活動内容と自分が深めたい専門性がマッチするのであれば、それもありだと思っています。
ケースバイケースなので再現性は低いです。
③ 民間企業、JICA、日本財団等へ就職
これが一番再現性が高いです。
留学生をしていると嫌でもボストンキャリアフォーラム等の留学生向け就職活動イベントのことを耳にするかと思います。就活をしている留学生であれば、とにかく何もごちゃごちゃ考えずに参加すべきです。名だたる企業や団体が外資系、日系問わず一同に会します。これ以上にコスパがいい就活場所はこの世に存在しませんw
ここでもMPAの知名度の低さを目の当たりにするのですが、良くも悪くも日本で働いているリクルーターは学科によるレベルの違いは勿論学校名も余程有名校でない限り大して区別していません。
残念な点ではありますが、「留学にチャレンジしたこと」「成績や課外活動」「学んでいること」「志望動機」を理路整然と答えたらそこそこ内定が勝ち取れるはずです。つまりMPAでなくてもいいことの証左ですが、これが日本の現実です(博士課程は逆に生涯年収が下がるという、世界でも稀有な白痴国家ですからねw)
ボスキャリに例年参加してそう&MPAと親和性が高いなと私が感じた業界は以下になります。
国際協力銀行
日本政策投資銀行
農林中央金庫
日本銀行
商社
総合電機
プラント系
コンサルティング会社
JICA
日本財団
*青年海外協力隊や、国際機関でコンサルとして就労するという手もあるのでしょうが、詳しくないため省いております。
**既に職務経験が有る方の場合は、卒業に合わせて国際機関の各種公募情報や、タイミングが合えばリクルートミッション等に応募するのもありだと思います。残念ながら、私の周りにいたMPA生でそのケースは見れなかったですが・・