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冷静と熱狂のあいだにあるラヴェルを…
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ラヴェルのピアノ協奏曲をいくつかの演奏で聴いている。
映画『ボレロ』に役者としても出演しているアレクサンドル•タローによる演奏も少しひんやりとした味わいの名演だと思うけど、やはり僕が一番しっくりくるのは、サンソ•フランソワとアンドレ・クリュイタンスの共演した1959年のアルバムになる。
何年か前のブログに僕はこの演奏についてこんな風に書いている…
この録音当時クリュイタンス54歳、フランソワ35歳。
当時の2人の写真を見るとまるで古いフランス映画の登場人物のように苦みばしった二枚目だ。
演奏あまりに強烈すぎて、これを聴いてしまうと他のどんな演奏を聴いても物足りなく感じるほど。
ピアノ協奏曲ト長調の冒頭。
少し硬い鞭の音に続き、古いバーの扉を押して入ってくる不穏な客のようにフランソワのピアノが入ってくる。
少し足元がふらついているようだ。
しかし演奏が始まるとジャズの即興演奏のように変幻自在な音楽が広がる。
クリュイタンスの指揮はフランソワのピアノに合わせるというより、時にいなし時に煽りながらニュアンスに満ちた音楽を作り上げ、まるで名優二人の共演による一編の映画を見ている時のような充実感がある。
この演奏は冷静と熱狂のたぐいまれなバランスの上に成り立った奇跡的な名演だと思います。