寄付金と税制
日本には寄付の文化が根付いていないとよく言われています。
地域の神社や寺、それに関連する祭りなどで寄付することはありますが、
自らの前向きな意思でとなると、多くの日本人は疎いというか縁遠いのが実態に近いのではないかと思います。
日本人の多くは源泉徴収されているため、税金を納めている、政府や自治体によって執行されている事業は自分の税金が原資である、という意識がものすごく低いと思います。税を集め、公的セクターが必要と思う事業に分配するという構造を現認し、評価することが納税者としては必要な視点ですが、天引きされていることで、自分のお金という認識が薄くなりやすくなっています。
私は今ダブルワーク、トリプルワークとなっているので、年度末に確定申告をしていますが、そうするとものすごく「税金を取られている」という意識が強くなり、これを無駄に使われたらたまったもんじゃない!という思いがムクムクと湧き上がってきます。
私は全国民が確定申告をすることになったら革命が起きるんではないかと思います。それを恐れる政府が天引きという仕組みを使って納税者意識の低下を図っているのではないかとうがった見方さえしています。
ま、その話はさておき、地方自治体が税制と一体となった寄付金制度を導入することは地方の活性化、住民の自主的なまちづくり促進につながるという話を続けたいと思います。
既に全国規模でふるさと納税制度が導入され、寄付の意識が低い実態があるとはいえ、納税者の意思で寄付先を決める、つまり、税金の使い道を決める仕組みが導入されています。また、もともと所得税の寄附金控除もあり、指定された自治体や団体への寄付が所得控除される仕組みもあります。さらには住民税の寄附金税額控除も自治体の条例指定によって可能となっています。
しかし、これらの制度を積極的に利用して寄付を促進しよう、寄付をしようという意思が、行政府、政治家、そして市民にあまりないというのが実際のところではないでしょうか。寄付が文化へと昇華する、寄付の意識が市民に高まっていくことが、重要であると私は考えます。万人向けの傾向にならざるを得ない政府や自治体に代わって、特定の公益性を重視した事業を担う団体や市民に対しては、積極的支持を表明する証として市民の意思による寄付金が支えとなって事業の実行が可能となります。
ふるさと納税は、現在は返礼品で引き寄せている傾向が強いですが、自治体と市民の意思によって事業が立案され、寄付の多寡によって公益性が裏付けられ、事業も実施できる、公的なクラウドファンディングが本来の目的ではないでしょうか。本来の目的を自覚して事業が提案され、それに伴って返礼品も考えられる形になっていくことが望ましいと思います。提案側も、寄付者側も、両者で税金に代わる寄付金という意識を持つことができれば、寄付文化の芽生えと言えるのではないでしょうか。
また、住民税寄附金控除の条例制定はあまり耳にしたことがなく、各自治体が積極姿勢に転じることができれば、市民団体の公益性を認め、住民税を税額控除する寄付金制度が展開され、しっかりとした目的と意思を持った団体が活躍することが可能となります。
いずれにしても、寄付金文化が広がると、納税になり代わることとなるため、現在税を原資に事業をしている公的機関は、徴税力が弱まることを恐れ、寄付促進の仕組みに対して積極姿勢が見られない原因となっていると思われます。自治体が大胆に寄附金促進を進め、自らの公益性追求と、市民の公益活動がいい意味で刺激し合い、競い合い、万人の公益と特定の公益が補完し合うことが大切ではないでしょうか。