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台湾有事に備え、外交安全保障を最も現実的に考えたい

ロシアのウクライナ侵攻が開始され2023年2月24日で1年が経つ今、アジアでは中国の台湾進攻による有事が現実味を帯びていると報道の世界をにぎわせています。

岸田首相をはじめ、安全保障環境を現実的に考えなければならない立場の方たちからは、台湾有事が起こった際に日本はどう対処すべきかという視点から議論が起こり、防衛費に海上保安庁予算などを加え、さらにインフラ・研究開発・サイバー・国際協力のうち防衛力強化を補完する予算も加算して令和9年度までに対国内総生産(GDP)比2%を確保する考えが示されています。

私は、もっと現実的に考えなければならないと思っています。それは果たして防衛関係費をGDP比2%にしたところで、台湾有事に間に合うのか、台湾有事に実際に対処できるのか、という疑問です。私は戦後の歩みから考えても、日本の経済状況から見ても、国民のマインドが安全保障面での厳しさについていけないし、防衛力の増大をどんなに急いで準備しても時間的に間に合わない、そして、かえって日本の国力を疲弊させてしまう、とも思うのです。

国民のマインドを変えていくために、岸田首相は、そして安部元総理が生きていれば、法的な枠組みや安全保障戦略を危機管理能力を高めるために大きく改めて、国民の自覚を迫っていくのかもしれませんが、戦後の平和的な歩み、平和的環境の利益を享受してきた国民マインドを変えていくのは、そうそう簡単ではないと感じています。危機感を募らせる方々は、それを平和ボケと批判するかもしれませんが、私はこのバランス感覚は大切なことであると考えています。

また、多くの日本人はいまだに経済状況が好転しているとは感じていませんので、まずは自らの生活再建や生活力の向上を求めることを優先すべきと考えるでしょう。また、エネルギーや食料といった資源に乏しい日本が、経済安全保障の視点から原発回帰や半導体製造の囲い込み、アジア太平洋地域の民主主義国家によるブロック経済化など、を危機感を持って進めることを当然視するかのような発信が政府から為されていますが、米国以外に目を向けたときに果たしてそれでいいのかという疑問が湧いてきます。

危機を際立たせて、台湾有事への対応、ひいては安全保障能力の進化に備えよう、急進させようと意図しているかもしれませんが、ここまで述べてきたように最も現実的に考えて、今の岸田総理、政府が進めている施策や方針が、現実的対応とは言えないと思うのです。

ロシアのウクライナ侵攻がなぜ終わらないのか、その原因は、あの戦地でぶつかり合う価値観の戦いだけを見ていてはわからないのだと思います。欧米諸国がこぞってロシアを非難し、ウクライナへの物心両面で全面的に支援していたとしても、例えばインド、中東の国々、ブラジルは、その2者択一の枠組みの容易に入ってこようとしません。

それと同様に台湾有事を捉えたときに、ダムの決壊が絶対起こらないような一ミリのヒビも入らない結束で、中国に対峙できるのかと考え込んでしまうのです。

日本国内と海外情勢をそれぞれ俯瞰した時、いま日本が採るべき現実的な選択は、岸田総理が示している道ではないように思います。寺島実郎氏が述べる多次元の世界観、そして、それを基底部に置いたアジアの安全保障機構の創設、それ以前の多元外交がまずは現実的な対応ですし、日本の国力や日本世論のマインドに見合った努力だと考えます。そして、そのレールの上に乗って経済安全保障を考えるべきではないかと思います。

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