2024年6月の連作、5つ
味もつけたい
ゴミ袋大中小を使いわける平凡なゴミ生産マシン
どこかから自治区と認められているほどの立場で発言をする
生きたまま丸呑みにする食べかたは向いていないし味もつけたい
マドンナがあんな旦那に恋をしてインナーマッスルまでもしんなり
終わったら汚れていないほうの手で汚れたほうの手を洗います
捨てどき
そのときの気分に合わせて変えられないいつもと同じ空の青色
行き止まりで引き返そうと思ったら道が続いてだらだら歩く
だいたいは愛想笑いでいるものの実はわたしも有権者です
言い足りないほどの思いが湧いてこない鳥の目線で見えてしまって
右側に寄ればかたむき左側に寄ればかたむく椅子は捨てどき
庭を引きつぐ2
雑草を引き抜いたとき球の根の人の肌にも似た白いつや
裏側にわたしのほうが行って見る裏を表にすればだいなし
糸を吐き下界へ降りる幼虫の未来は特定せずに殺害
害虫がいるとわかればたかぶって皆殺しこそわたしの使命
背中とか首のうしろに幻覚の小さなツメで這いまわる虫
ブックマーク
見たところなにも変わりはないものの賞味期限は二週間前
これぐらい大きな蜂と言うときの蜂はわたしの手より小さい
ブックマークしては忘れる新聞の束ねかたTシャツのたたみかた
さざなみが音をたてずに揺れていてそれを思いとみなしてもよい
森のなかでは生きてゆけない
めずらしく蛇を見たのでこれまでもどこかに蛇はい続けたのだ
触れるのは嫌で言葉でなぞるだけでも毒のある虫もいるでしょ
葉をかじる虫を追う手もない樫にはみだすように新しい葉が
※「庭を引きつぐ2」は短歌連作サークル「置き場」第3号に掲載された連作です。
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