くろだたけし

自作の短歌をまとめています。短歌では、うたの日、うたそら、置き場などに参加しています。…

くろだたけし

自作の短歌をまとめています。短歌では、うたの日、うたそら、置き場などに参加しています。 Xは、https://twitter.com/tkuro2016 (2024/09/13)

最近の記事

自選短歌 2024年10月

大丈夫君は旅行に行きなさい僕はひたすらピザを食べます 特撮のヒーローじゃなく怪獣になって壊したあとで死にたい 似たような揺れかたをする人たちと他人のままで運ばれてゆく おすすめがハニーブレッドだとしても買いたいものはソーセージパン わたくしは救世主ではありませんだからと言って生贄は嫌 手のひらよりせまい時計に詰めこんだ時分秒月日曜日気温 目が合うと猫は動きを止めたあと塀から消える猫は無音で

    • 自選短歌 2024年9月

      本物の黒毛和牛も偽物の黒毛和牛も同じ天国 消えたのがコントラバスと気づくまで寂しいわけがわからなかった 桁数の制限により九のあと闇へ葬られる繰り上がり 月だけが明るい夜を見ていると立っているのに寝ているみたい わたくしの鍵を開ければ床の間に正座して待つ性欲がいる 覚えのない紅葉がカバンから落ちて風流人かとマークされだす 家系図の末端のまま年をとり旅をするでもなく本を読み

      • 第1回カテゴリ短歌祭 ネタ短歌賞 結果発表

        第1回カテゴリ短歌祭、ネタ短歌賞にご応募いただいた皆さま、ありがとうございました。選者をさせていただきました、くろだたけしです。 ネタ短歌賞には128首の応募があり、この中から、特選1首、入選2首、佳作5首を選びました。結果を発表いたします。 特選、1首 虫かごでツケマを飼えばことのほか寿命が長く六年生きた (よしなに) ツケマを飼うとはどういうことなのかはわからないのですが、「六年生きた」と言われると、それはツケマの生を間近で見てきた六年でありその最後にはツケマの死

        • 2024年8月の連作、2つ

          夕立 僕がいる場所は地球と言うらしい新説があるなら受け入れる 起きてから長くぼんやりしているが習慣でおはようとは言える のぼったらおりる階段生活の基準が高いところにはない 洗濯に必要なのはめもりから少しはずれた量の洗剤 こんなんじゃないだろうけど夕立がくればこの世の終わりを思う 夏について 夏と言えばグラスに残る色のない氷のことをまず思います 庭の木が知らないうちに根をのばし雨がなくてもまだ渇かない 猛暑日の人の気配のない道を死んだ金魚を売る金魚売り 少しずつ溶けていつ

        自選短歌 2024年10月

          自選短歌 2024年8月

          炒飯にハムではなくて焼き豚が入っていると増す幸福度 大声で鳴けなかったら蝉だって地味なタイプと言われてたはず 強すぎる風に踊らされていても小鳥は僕の窓には来ない 酔っていて二度と会えないあの夜の俺のまぼろしの天津麺 ヒーローがお食べと頭を差し出して手じゃ剥けないよ晩白柚マン 清潔で広く明るい店内をずっとさらしている貸し店舗 恋をしたときだけみたいS極とN極のこと考えるのは

          自選短歌 2024年8月

          2024年7月の連作、4つ

          抜け殻 七月の桜に爪を立てているゆうべ中身の消えた抜け殻 ひとつめがいた次の日にふたつめの抜け殻がいた並んだ幹に 歴史書もましてや偽書も残さずに暑くなったら鳴くだけの蝉 街に住みたい 自然とは適度な距離を置きながら他人行儀な街に住みたい 現実はきっとどこかがみにくくて大人は狡いガキは汚い 王子様にならない蛙にキスをした こっそり作る夜食のスープ 幸薄系 人生が百年続く時代でも幸薄系へ貢いでいたい 飛びこんだプールに水が無かったら不運ではなく不注意ですよ 缶のまま冷え

          2024年7月の連作、4つ

          自選短歌 2024年7月

          後頭部に傘専用の手が生えることを進化と呼ぶ雨の星 太陽に愛されたなら死ぬだろう ねえカプチーノの渦巻きも宇宙? わたしより君は幸せカレンダーの自分の誕生日に星マーク 流れない排水口を祟りだと怖がる君よ掃除しなさい 手を合わせ目を閉じたあと目を開けて早まったなとまた目を閉じる ターザンは野生児なのに俺よりもスーツが似合う面接も受かる 言い訳にならないけれど果物に思えて指でさわるくるぶし

          自選短歌 2024年7月

          2024年6月の連作、5つ

          味もつけたい ゴミ袋大中小を使いわける平凡なゴミ生産マシン どこかから自治区と認められているほどの立場で発言をする 生きたまま丸呑みにする食べかたは向いていないし味もつけたい マドンナがあんな旦那に恋をしてインナーマッスルまでもしんなり 終わったら汚れていないほうの手で汚れたほうの手を洗います 捨てどき そのときの気分に合わせて変えられないいつもと同じ空の青色 行き止まりで引き返そうと思ったら道が続いてだらだら歩く だいたいは愛想笑いでいるものの実はわたしも有権者です

          2024年6月の連作、5つ

          自選短歌 2024年6月

          本当の言葉は歌になりたがるリズムはいつもそれを待ってる われわれがなにをするかは未定だが雨天決行だけは言いたい 建物と土地の名義は書き換わりつつがなきかな固定資産税 舞台には美女の首だけ残されてこれは手品じゃないかもしれない もともとは人から奪ったものだけど奪われるのはかなり悔しい

          自選短歌 2024年6月

          2024年5月の連作、4つ

          夢ではない わたしにも寝顔はあると心配で部屋には鍵をかけてしまった 長靴に雨が入ったときわかる裸足になれぬわたしの弱さ 懐かしい甘さも実は罠だとははっと気づけばキャベツ人間 ピクルスはいてはいけない人たちに送った招待状のたくらみ 目が覚めて夢ではないと迷わずに気づいた朝は年をとります いいんじゃないか 成功はしたが卒業文集の夢と違ってなんか気まずい 脱げたまま置いていかれた片方の靴の群れではなくて枯れ葉が 花はすぐ色がくすんでしまうから造花に変えたことを忘れて 雨だけど

          2024年5月の連作、4つ

          自選短歌 2024年5月

          難しい本を読むのだわからないことばかりだと忘れないため 下っ端は先に死ぬのよ正義にも悪にも染まりきらないでいて 救いとは目覚めることか眠ることか弥勒菩薩の静かな足音 借りたまま返していない本なのに特に心に残っていない 月ぐらい遠くにいれば気の向いたときにきれいと言うだけでいい

          自選短歌 2024年5月

          2024年4月の連作、4つ

          自省 とびかかる猫の動きの先にいた獲物はちょうど陰で見えない 変わらない愛はあるのかてのひらにおさまるものはひと口サイズ 目玉焼きの目玉をいくら増やしても命の数はゼロでよかった 内臓が夜中も低くうめくのだ正論なんて魔除けのおふだ 進んだらもっと先まで見えてきて進捗率は一生二割 ぷちり 物置きはいくらか人をだめにして刈り込みバサミばかり四つも 不機嫌な羽音をたてているけれどあとからここに蜂が来たのだ リニューアルしたとおぼしき美容院の二階に古いままの看板 食パンの一番安い

          2024年4月の連作、4つ

          自選短歌 2024年4月

          どこからか来てどこかへと行く鳥がベランダの屋根にたてる足音 どうしても引っ込み思案が直せずに背後霊すらわたしの前に あいさつを元気にされて恥ずかしい悪い人ではないだけの僕 最適な太さのペンが最適でなくなってから使い切るまで ごはんにもパンにも合うと気づかれてツナにとっては不幸な時代 テーブルにそれだけ置いた食パンが廃墟に見える夕陽の加減

          自選短歌 2024年4月

          2024年3月の連作、5つ

          春のせい 立ち上がりしばらく待ってみたものの特にやる気はやってはこない あげた人ももらった人もいなくなり贈り物だけ消えずに残る 会うために必要なのは約束で眠気は春のせいにしている 眠いとは思わないまま寝たあとでなにをあきらめたのか忘れた あの頃にたいした意味はないとしてもときどき雨は降っていました 童心 なにもまだ事件は起きていないのに夢によくない予感を満たす ありものでふさいだだけの穴だから聞きたくはないことも聞こえる 爪を切るつもりで指を切っちゃだめ爪は伸びても指は

          2024年3月の連作、5つ

          自選短歌 2024年3月

          待てなくて熱すぎるまま食べるから誰も知らないたこ焼きの味 人肌のお湯にひたして待つだけでまさか木乃伊が生き返るとは 姿さえ隠れるほどの薔薇を持つ男が潔白のわけがない 我慢することをやめたら背から羽根額から角脇から触手 成しとげたあとの軽さで花びらは風のちからにすべてまかせる 家政婦は見たけどなにも言わないですべて許して天国へゆく

          自選短歌 2024年3月

          2024年2月の連作、4つ

          したい デジカメで撮った写真が多すぎて少し整理をしてあきらめて からくりは知らないけれどあてにして晴れの予報で予定をたてる すかしてたわけではなくてマスコミに踊らされても踊れない僕 見たくなる夢もあるって知らないと目を閉じているだけで寂しい やわらかい毛布のようなベランダで奇跡のような昼寝がしたい 昨日の続き 始まりと終わりがちゃんとすることはなかなかなくて昨日の続き とどまると邪魔になるから顔を上げどこかへ向かうふりをしている 木は森になっても静か集まると人は話をしな

          2024年2月の連作、4つ