栄養こそ最強最高の医療である【後編】
三島渉著『栄養こそが最高の医療である』
から抜粋、要約した内容を中心に解説
する記事、【後編】です。
【前編】をお読みでない方は、ぜひそちらからご一読ください。
③細胞の主成分はタンパク質と脂質
細胞の主な材料はタンパク質です。
体外から摂取したタンパク質はアミノ酸に分解されたあと、筋肉や皮膚、臓器などあらゆる組織の細胞の成分として、また酵素やホルモンの材料として合成されます。
細胞は核の中にそれぞれの遺伝子をタンパク質の設計図(DNA)として持っていて、自ら新しい細胞を生み出すことができます。
細胞の中でタンパク質の合成を行っているのがリボソームです。
リボソーム自体もリボ核酸(RNA)と多くのタンパク質からなる複合体で、1個の細胞の中に数百万個存在しています。
リボソームは安定性が高く長期間使われますが、栄養飢餓のときは細胞がリボソームを分解して新しいタンパク質合成を抑制し、栄養素を生命維持のために回すことが報告されています。
もう一つ、細胞の大事な材料が脂質です。
細胞は膜で覆われている構造物です。
この細胞膜の材料になるのが、リン脂質やコレステロールなどの脂質です。
細胞は細胞膜を通して、外部から必要なものを取り込んだり、細胞の中でつくられたものや不要なものを外に出したりします。
膜が固いと出し入れがうまくいかず、細胞の劣化の原因になってしまいます。
そのため、柔らかくて物質の出し入れがしやすいしなやかな膜であることが、細胞の機能を発揮させるために大切です。
この細胞膜のしなやかさを流動性といいます。
コレステロールも膜の流動性を保つために重要な働きをしています。
(抜粋ここまで)
エネルギーを産生するミトコンドリアのみならず、タンパク質を合成するリボソームも、その材料はタンパク質です。
細胞にとって十分なタンパク質が絶対に不可欠であることは明らかです。
しかも栄養飢餓、つまりタンパク質が欠乏すると、リボソームを分解して新しいタンパク質の合成を抑制するのですから、もう負のスパイラルに他なりません。
タンパク質は、毎日最低でも体重の千分の一プラス20%は摂取する必要があります。
体重50kgの人だと1日60g以上です。
これは結構高いハードルです。
朝昼晩それぞれにタンパク質を摂らなければいけません。
朝食抜き、1日2食ではクリアするのは難しいです。
3食食べていても、パン食、麺類、粉もの、ご飯ものなど、ほぼ炭水化物メニューが多いと、やはりタンパク質が不足します。
玉子、大豆食品、肉類、魚介類を、意識して3食に振り分けてください。
脂質を材料とする細胞膜は、単なる細胞を包む入れ物に留まりません。
物質の出し入れ、栄養素を取り込んだり老廃物を排出する能力も、細胞膜のクオリティ次第です。
炭水化物と同じく今の時代、脂質の摂取量が足りていない人はほぼいません。
重要なのは量ではなく質、内容です。
摂る油の種類や質、また酸化した油を摂らないこと、細胞膜の酸化を防ぐことが非常に重要です。
リン脂質は、玉子や大豆食品にレシチンとして含まれています。
コレステロールと聞くと、今でもマイナスのイメージを抱く人が多いですが、立派な細胞膜の材料です。
よくないのは、コレステロールが酸化して酸化コレステロールになってしまうと、動脈硬化の引き金になることです。
なので、玉子などから普通にコレステロールを摂って、その上で酸化を防ぐ脂溶性のビタミンEやカロテノイドをしっかり摂ることが大切です。
④ 酵素とホルモン、ビタミンとミネラルの重要性
エネルギー代謝やタンパク質の分解・合成をはじめ、生体活動が正常に行われるためには、体内で合成される酵素やホルモン、そして栄養素であるビタミンやミネラルが大きな役割を果たしています。
酵素はタンパク質の一種で、生体内の化学反応のスピードを高める触媒として働きます。
酵素がうまく働かないと、私たちは健康を保つことができません。
その酵素の働きを助ける補酵素としてビタミンやミネラルが機能しています。
ホルモンは、体の外部や内部からの情報に反応して分泌される生体内情報伝達物質の総称です。
自律神経と連動して働いて、体のホメオスタシスを維持しています。
ホルモンの分泌にもビタミン、ミネラルが大きく関わっています。
酵素やホルモンは体内で合成できますが、ビタミンやミネラルは外部から取り入れなくてはなりません。
細胞の老化や酸化を防ぎ、代謝や免疫など細胞機能を活性化させるために、ビタミンやミネラルの機能を積極的に活用していきたいものです。
(抜粋ここまで)
細胞のおもな材料がタンパク質と脂質であることは理解できたと思いますが、材料だけでは全く機能しません。
リボソームでタンパク質を合成し、ミトコンドリアでエネルギーを産生するためには酵素が必要です。
体内には5千種類の酵素が存在すると言われていて、私たちがタンパク質を摂らなければならない最大の理由は、酵素の材料を供給するためとも考えられます。
その酵素も酵素だけでは働かず、助っ人のビタミンとミネラルがスイッチを入れることではじめて酵素の役割を果たします。
書籍では、ビタミンもミネラルも補酵素とまとめていますが、正確にはビタミンを補酵素、ミネラルは捕因子といいます。
補酵素と捕因子の違いに関してはこちらの記事で解説しています。
ホルモンについても一つ補足があります。
ホルモンは3種類に分類されます。
ペプチドホルモン
アミノ酸型ホルモン
ステロイドホルモン
ペプチドホルモンは、アミノ酸が2つ以上結合して合成したもの。
アミノ酸型ホルモンは、アミノ酸単体で機能するホルモンです。
ペプチドホルモンとアミノ酸型ホルモンの2つは、その供給源はタンパク質です。
それに対して、ステロイドホルモンの材料はコレステロールです。
ステロイドホルモンには、
コルチゾールをはじめとする副腎皮質ホルモン、
精ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンなどがあります。
いずれも、ホメオスタシスの維持や炎症抑制、免疫の調整など、きわめて広範囲に働く重要なホルモンです。
ここでも、コレステロールは必要不可欠なものということが分かります。
病気とは 健康とは
(最後に本の中から、著者ご本人が今の医療現場の問題点、その核心を端的に記していると思われる箇所を紹介します。)
医学教育では、病気についてはたくさん学びます。
しかし、健康とは何かを学ぶことはありません。
ですから医師は、自分の専門領域の病気についてはよく知っていますが、健康で正常な状態のことについてあまりわかっていないし、考えようとも思いません。
何か検査をして異常を見つけたら病気と診断して対応できます。
ところが、検査をしても異常がなければ、患者さんがたとえ不調を訴えていたとしても、何もすることはないと考えますし、実際何もできません。
しかし、本当にそれでいいのでしょうか?
本来、病気とは、健康で正常な状態が少しずつ崩れていって、その積み重ねの末に発症するものです
未病の状態の時に、崩れのサインを見つけて適切な状態に戻すことができたら、それが最高の医療ではないでしょうか。
今の私は、健康について明快に定義することができます。
健康とは、細胞がその機能を十分に発揮できている状態のこと
(抜粋ここまで)
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【後編・まとめ】
細胞の主な材料はタンパク質です。
タンパク質は、筋肉や皮膚、臓器に加えて、酵素やホルモンの材料でもあります。
細胞でタンパク質の合成を行うリボソームもタンパク質が材料なので、タンパク質不足は致命傷です。
細胞を覆う細胞膜の材料が、リン脂質やコレステロールなどの脂質です。
細胞は細胞膜を通して、外部から必要なものを取り込んだり、不要なものを外に出します。膜が固いと出し入れがうまくいかず、細胞が劣化します。
エネルギー代謝やタンパク質の分解・合成をはじめ、生体活動が正常に行われるためには、体内で合成される酵素やホルモン、そして酵素の補酵素としてビタミン、捕因子としてミネラルが大きな役割を果たしています。
この記事の内容については動画もアップしています。
合わせてご覧ください。
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