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むらさきのつつじ
気密性の高いアパートの一室が、気温27度になった。ちょっとぎょっとした。
むらさきのつつじの色が去ってから、二日ほどした昨日のことだ。
小学生の頃「ヤマツツジ」、と誰かに教わってしまって、自分の中でそこに分類されている紫がある。ホントは、ヤマツツジは赤い花だ。
その紫は、薄く透けたワイン色とでも言おうか。うす紫と薄桃を混ぜた色相だ。この写真はピンク色の濃さが出すぎて現像されている。これよりもう少しだけ薄みの紫に振れた色。
では、ムラサキツツジ、と呼んでいいのかどうかがさだかでない。
カラムラサキツツジは花の形がちがう。これは花弁がかなり縦に長いのだ。この花の形でないとしっくり来なかったりする。
ムラサキツツジで葉が同時に生えるものも、これとは違う。
4月の一瞬、ほんの一瞬にしか自然が見せない色合いだ。
カタクリの一部分の紫では、ちがうのだ。藤の薄むらさきでも、ちがうのだ。言うまでもなく桜より食い込んでくる色。そしてこの写真より、肉眼に捉える色は、うっすらと匂い立っている。
この、(自分の中に入れられた誤った分類のままに)「あっ、ヤマツツジだ」という花色に会えるか逢えないか。
一年の中の、ほんの四日ほどの機会といおうか。
また一年を待つ、というわけでもない。互いに無自覚に、記銘するでもなく忙しくしている。
一年後にまた、巡り合ってはじめて「あっ、ヤマツツジの季節になったのか」とつぶやく…心でつぶやく。誰とも共有しない。
この花だけが行う、人との間の、知らぬ顔した秘めごとのような。
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