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愛すべき毎日の何気ない瞬間が、ハイライトになる。

クリスマスイブ、私は石橋商店街にいた。

普川さん(今は閉めているけど、石橋商店街で、喫茶フカワという喫茶店を営んでいたおばちゃん。私のことを娘のようにかわいがってくれる。大学卒業のときはなぜか一緒に熱海に旅行に行った)と、お好み焼き屋さんで「豚玉チーズ焼き」と「豚イカ焼きそば」を食べたあと、タローパンに行って、店長(年末年始の沖縄旅行が取り消しになってすっかり疲れた顔をしていた)の仕事の邪魔をして、コメダ珈琲で4時間居座り、締め切り直前の原稿を必死に書き上げた。

なんとか仕事が終わって携帯を開く。普川さんから「うちごはんやけど、食べて帰らんか?」ってLINEが来た。「もちろんまいります!!!♡」。

おうちに行って、ごはん作りの手伝いをする。お腹がぐうぐう鳴ってて、コッソリつまみ食いしながら。(カキフライの数、エビフライと合わなくてスミマセン。)イブだから、奈良の柿の葉寿司(イブ関係ないよね。なぜかあった)やハーゲンダッツ(これはまあ納得)もおごちそうになった。


はあ、幸せ。


こうやってたまに、大学時代から、普川家の食卓に混ぜてもらってきた。
普川さん(65くらい)がいて、普川さんの娘さん(30くらい)がいて、その息子(小2)がいて。そして私(27歳)。

娘さんは、以前は、胸くらいまであった長くてきれいな髪が、ショートボブくらいになってた。超、綺麗。10年弱、飲食店で働いていたんだけど、今年の夏あたりから事務職に転職してスーツで仕事に行っている。とても似合っている。きれいな人って何着てもきれいなんだな。
小2の息子は、相変わらず意味不明だし、普川さんにまた怒られている。テーブルにおもちゃの恐竜を持ってきて、お茶を飲ませていた。やめろ。そのあとは、「クリスマスプレゼントくれよ~~~」と生意気なことを言ってきた。かわいいから許すわ。やらんけど。
あと、まだ私のことを宇宙人だと言ってくる。(大学のときに私がそういう低レベルな子供騙しをしたため。)「宇宙にはクリスマスがあるのか」と聞いてきたが、たぶん、ない。クリスマスの意味を教えようかと思ったけど、どうせ聞いてくれないからやめた。

「イブの夜らしい」かどうかは置いておいて、
とてもすてきな、好きな一日だった。
日記もメモも、何も残していないけれど、まだ、くっきりと一つひとつを、憶えている。

・・・

クリスマスの朝、私は家から徒歩5分のところにある喫茶店にいた。

今年の夏から私がOJTトレーナーをしていた後輩とモーニングを楽しむため。ちなみにたしか、今月3回目くらい。
(実は私、6月から始まるOJTがすっげえ嫌だった。5月31日の夕方、家のベランダで夕陽に照らされながら、めっちゃ泣いていたのを憶えている。なぜか部屋の中じゃなくて外だった。なんでやろ。
すっごいナチュラルに書いているけど、一緒にモーニングをする仲になるなんて、あの時の私には考えられなかった。)
二人で、マスターが淹れるコーヒーを飲む。


その日のコーヒーは、いつもより深く、苦かった。


と、わかったように言ってしまったが、マスターがそう言っていた(笑)。一杯飲み終わると、また一杯、淹れてくれた。マスターが特別、淹れてくれる。ああ深い。(わかってない。)
店内には、ラジオのクリスマスソングが流れている。バックナンバーのアレ。あ、そっか。今日はクリスマス。「マスター!メリークリスマス!!!」(with最高の笑顔!)

・・・・・・・・・きれいに無視された(笑)。
いつもこんな扱いだからまあいいや、と思う。さて、向き直り、後輩とこの一年間について語る。はずだったのだが、実際、どうでもいいことしか、話せていなかったかも。楽しかったから、まる。オールオッケー。

1時間半くらいおしゃべりして、解散。後輩は帰省(長崎の島原出身)。
私は家に帰って仕事をする。

「クリスマスらしい朝」かどうかは置いておいて、
ちょっとしたぜいたくや、おいしい珈琲、たっぷりの朝の時間には、いつも心がわくわくする。
日記もメモも、何も残していないけれど、これもまた、まだ、くっきりと一つひとつを、憶えている。

・・・

ここからが本題。
2020年、さいごに読んだ本のことを書き留める。
(やっと、サムネイル画像の本の話。汗)


岡田悠さんの『0メートルの旅』を読んだ。

めっちゃおもしろかった!スタバで一人笑いながら、首をうんうんと縦に振りながら読んだ。おもしろいところに黄色マーカーを引きながら読んでいたら、ぜんぶおもしろいから、毎ページ黄色が現れる。

岡田さんのこれまでの「旅」、16の「物語」が、描かれている。
16の物語が終わったところで、最後に岡田さんの「旅」についての考えが記されていて、「いいな」って思ったので、ここに引用させていただきます。

旅を辞書で引くと、「定まった地を離れて、ひととき他の場所へゆくこと」と書かれている。
定まった地とは、きっと日常そのものだ。日常は安心で、快適で、大切な僕らの基盤である。だけど予定通りの毎日を繰り返していくうちに、だんだんとその存在が曖昧になっていく。日常が身体にべったりと張りついて、当たり前になって、記憶にすら残らない時がただ過ぎ去っていく。
旅とは、そういう定まった日常を引き剥がして、どこか違う瞬間へと自分を連れていくこと。そしてより鮮明になった日常へと、また回帰していくことだ。

私は旅が好き。自分の世界をちょっと広げてくれるから。見たことのないものを見せてくれるから。人のあったかさとやさしさに触れて笑顔になれるから。時間があれば、「今いる場所」から離れた違う「新しい場所」に行きたくなる。

旅をすると、「リフレッシュ」とか「充電」というより、「思い出す」という感覚になることがある。「ああ、私はこういうことが好きなんだ」「なんか、懐かしい風景だなあ」岡田さんの言う、「回帰」の感覚に近いのかもしれない。

そんな旅をしたあとは、毎日が、きらきらして見えるようになる。少し嫌いだった大阪の空も、毎日、スマホで写真を撮るようになった。旅は、好きなことを思い出させてくれて、日常を愛すべきものにしてくれる。気がする。

実際私は、9月に尾道に行ってから、こういう感覚に陥った。
尾道では、ハワイみたいな絶景ポイントに行ったわけでも、「★5つ」みたいなすっごいお高い料理を食べたわけでもない。ただただ、チャリンコに乗って瀬戸内海の潮風を感じながら橋を渡ったり、島の食堂でおばちゃんたちとおしゃべりしたり、商店街の古い喫茶店で珈琲を飲んだりしただけ。だけどそれは、その一つひとつは、私の「好き」で溢れていた。心の動く瞬間があった。



さて、旅に出よう。



愛すべき毎日の何気ない瞬間が、ハイライトになる。そんな毎日を送ろう。テンションの上がることをしよう。

どこか遠くへ行かなくても、毎日を楽しもう。大切にしよう。

「旅」はそういうことだと、この本が教えてくれた。前から思っていたことと重なって、あったかい、ぽかぽかした気持ちになった。



すでに、旅に出ている船の中かもしれないが。
だって、今も、こんなにも大好きな毎日が送れているから。



クリスマスイブでも、クリスマスでも、そんな名前のついていない日でも、毎日、心動く瞬間を見つけて楽しもうと思う。頭の中を「好き」でいっぱいにしようと思う。毎日がかけがえのない日であることを、ぜったいに忘れないように、きらりと光る瞬間をキャッチできる人でありたい。


香川に帰省するバスの中で書いたnote。
これもまた、愛すべき2020年12月27日のひととき。きっと忘れない!




2020年、ありがとうございました。
年末年始のお休みも楽しむぞ~~~~~!

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