デザイン調べ_4 : 「ロゴについて考察_1」(その前にCIについて)AEG/ペーター・ベーレンス氏
当noteは様々なプロダクト/サイト/サービス etc の中で見えてくるデザイン仕事を調べ、「デザイン」って何なのか を考察しよう、という内容です。
今回は「ロゴ」
をテーマに考察を進めていきますが、具体例を取り上げる前に、ロゴデザインの重要性を前提づけている概念から整理していきます。
「ロゴ」はその企業や催し等のイメージをユーザーに印象づける重要なものと考えられていますが、その様な「イメージを統一したり、ブランドの印象をデザインして存在価値を高めていこう」という考え方/概念/戦略は、「コーポレート・アイデンティティ(略称:CI)」と呼ばれています。
CIが行われる際、その企業を象徴するロゴのデザインを改新したりすることがあるので「CIとはロゴを新しくすること」と理解されているケースがありますが、それはCIの手段の一つに過ぎません。
「その企業がステークホルダーとより良い関係を築いていく」という目的がCIの本質であって、その手段として「企業理念を明確で親しみやすい言葉にする」「理念が伝わるようにロゴをデザインする」「ステークホルダーとのコミュニケーションに活用する時の使用法を統一してブランドの価値を守る」等があるようです。
CIによってイメージ操作される「ブランド」ですが、この「ブランド」の考え方の起源は、18世紀中頃〜19世紀にイギリスで起きた産業革命が契機となったそうです。商品が大量生産/消費が盛んになったことが、商品のビジュアルを統一する必要性/ブランドイメージの重要性を高めたそうです。
しかしまだこの時点では、「ブランド」の概念は商品に対してであり、「企業」のブランドイメージを考えるものではなかったのかもしれません。
CIの「萌芽」とも言える仕事は、イギリスの産業革命に影響を受けた周辺諸国の一つであるドイツで、3人のドイツ人「ヘルマン・ムテジウス氏」「ペーター・ベーレンス氏」「パウル・ヨルダン氏」が関わり合ったことで成されました。
一人目、プロイセン商務省官吏のヘルマン・ムテジウス氏は1896年から1903年の間、第一次世界大戦(1914-1918)への気運が高まっていったイギリスにて、ロンドンの大使館に勤務していました。
大使館在任中の彼は、産業力と文化力を併せ持つイギリスの国力を肌で感じ、ドイツの国際化企業が競争力を持つにはどうすれば良いかと考え、芸術と近代産業の統一を構想し1907年に「ドイツ工作連盟」を設立しました。
「ドイツ工作連盟」では、デザインでの余計な装飾をなくすこと/イギリスの合理的な建築工芸を重要視すること/工業製品の標準化・規格化 が指向されました(この理念を「ザッハリヒカイト 」というそうです)。
二人目、「ドイツ工作連盟」参加者であるデザイナーのペーター・ベーレンス氏は、実用的な美を追求していた為、この「ザッハリヒカイト」に同調しました。
タイポグラフィ/イラスト/装丁等、デザイン全体に注力されたドイツで最初の愛書家向け雑誌『パーン(Pan)』の編集に参加したり、家具等のインテリアデザイン/カーペットや織物等のテキスタイルデザイン/食器などのプロダクトデザインなど様々なデザインを手がける中で、デザインマネジメント力を多面的に磨きをかけていった彼は、1899年に食器/家具/建築から全てを包括的にデザインした自邸を完成させました、が、
そこで彼が感じた問題は「コンセプトに具体的な形を与え、かつ全体を調和させることの難しさ」でした。この問題が後にCI萌芽の種となっていきます。
三人目、アルゲマイネ電気会社(略称:AEG)という家電/電気事業を取り扱う企業の工場長・建築顧問パウル・ヨルダン氏、は国際市場のシェア獲得の為には今でいうところの「インダストリアルデザイン」が重要に成る事を感じており、次のような言葉も残しています。
技術者が電動機を買う時に、分解して調べると思います?専門家の彼でさえ見た目で買うんだ、電動機もバースデープレゼントみたいに見えないと。
ヨルダン氏はAEG製品のインダストリアルデザイナーとしてベーレンス氏を起用しました。
しかしベーレンス氏の仕事は、卓上扇風機や電気湯沸かし器等の製品デザインにとどまらず、展示会ポスター、広告、広告に使用するフォント、工場の建築デザイン と、細部から全体まで実に包括的に行われました。
大量生産を前提とした製品デザインだけでなく、企業と労働者を結びつける精神的規律のデザイン、それによって生み出された製品/企業への信頼性に形を与えるデザイン、企業イメージを作る広報活動のデザインの一貫という形でAEGの要求に応えました。
AEG と ペーター・ベーレンス氏 の仕事がCIの歴史の原点といわれるのは、製品だけでなく企業自体もデザインの力によって統合された性格を得た為です。
CIの原初を確認したところで、具体的なロゴ事例を取り上げ考察していこうと思いましたが、そろそろ長くなってきたので続きは次回にします。
お読みいただきありがとうございました。