【レビュー】『死力を尽くした引き分け』~第10節ベガルタ仙台VSファジアーノ岡山~

2023 J2 第10節
4/16 14:00K.O. @ユアテックスタジアム仙台
仙台(1-1)岡山
11分 中島元彦
48分 佐野航大

スタメン

マッチレポート

勝点12同士の仙台と岡山。死力を尽くした引き分け

試合終了を告げるホイッスルが鳴ると、ピッチ上には膝や腰に手を当ててその場に留まる選手、ピッチに座り込む選手がいた。勝点12同士の仙台と岡山、互いに死力を尽くした一戦は引き分けに終わった。

試合はいきなり動く。11分、仙台が岡山のFKを大きくクリアすると、高く上がったボールを処理しようとする相手に中島が猛然とプレスを掛けていく。バックパスも単独で追い続けると、輪笠からGK堀田へのパスミスを誘発。GK堀田のトラップが大きくなったところを見逃さずに背番号7が左足で流し込み、仙台が先制した。その後も仙台が前線からのプレスでペースを握る。左サイドに誘導して縦パスを引っかけて、ショートカウンターを繰り出して追加点を狙っていく。20分、敵陣でのパスカットから郷家が放ったミドルシュートは枠を逸れた。41分にも郷家の敵陣でのボール奪取から中島が右足を振り抜いたが、GKに防がれた。

ミスからリードを許した岡山は、ボールを持つ時間を増やして反発していきたかったが、効果的に敵陣に入れない。選手間の距離が遠く、強いプレッシャーを受けてパスミスが頻発する。自陣でのボールロストからシュートを許すも、GK堀田を中心に我慢強く守って追加点を与えずに試合を進めていき、43分にはCKから柳がドンピシャのヘディングシュートを放つも、GKにキャッチされた。

ハーフタイムに両チームが1選手ずつ交代して迎えた後半、木村を投入した岡山が活性化した。背後への抜け出しとプレスをどんどん仕掛ける背番号19のエネルギーが全体に伝播して攻勢を強めると、48分に同点に追いつく。木村が右サイドを縦に突破してクロス。櫻川がニアに走ったことでフリーになった佐野が冷静なトラップから右足を振り抜いて左スミに蹴り込んだ。

再び試合が振り出しに戻ると、仙台はセットプレーを獲得して、岡山は途中出場のチアゴ・アウベスが積極的に左足を振り抜いて、最後まで勝利を目指す。それぞれが得点への意欲を強く出したことで、両チームのゴールを行ったり来たりするオープンな展開になった。その中で互いに決定機を迎えるも、GKの好セーブに阻まれて決勝点を奪えず。

どちらが勝ってもおかしくない。紙一重の勝負は1-1で終了し、仙台は2試合連続、岡山は5試合連続の引き分けとなった。

コラム

どんなに苦しくても崩れない。チームとして備える忍耐力

先制のネットが揺れた時、輪笠は頭を抱えて、堀田は地面に倒れたまま天を見上げた。自らで出鼻をくじくことになるとは――。

開始11分、ミスから先制点を献上する。河野のFKが跳ね返されて、大きくクリアされたボールが自陣に飛んできた。攻め上がらずに残っていた高木と輪笠が処理を試みるも、強烈なプレスを受けてバタつく。高木から輪笠のバックパスが長くなり、輪笠から堀田へのパスもズレて浮いてしまう。堀田はゴールに向かってくるボールを何とか足で止めるも処理しきれなかった。

チームに走るショックは大きかっただろう。6試合ぶりの勝利を目指してユアスタに乗り込んだ岡山は、立ち上がりは大きくクリアし、前線に長いボールを蹴り入れるなどシンプルなプレーを選択していた。開始早々の失点を避けたい中で、思惑とは裏腹にミスが失点を招いてしまった

しかし、チームは崩れなかった。前半は仙台のプレスを受けてなかなか敵陣に入れず、多くのピンチもあった。苦しい展開を強いられたが、最後の局面で何とか耐えしのいだ。戦う姿勢を保ち続けて追加点を許さなかったからこそ、一縷の望みをもって後半に入った。そして、追い付いて勝点1を持ち帰ることができた。

どんなに苦しい状況でも決して崩壊しない。チームとして忍耐力が備わっている。10試合を終えて1敗なのは、首位の町田と岡山のみ。引き続き強みの忍耐力を発揮しながら、次の10試合では勝ち切るチームに変貌を遂げたい。

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