【勝因】『襲い掛かるプレス、高速ショートカウンター、負けられない意地』~プレミアリーグ第14節ブライトンVSチェルシー~
試合結果
試合を選んだ理由
三笘薫がプレミアリーグ初スタメンを飾る試合でもあり、ブライトンとチェルシーは因縁の対決だと思ったからだ。ブライトンを指揮していたグレアム・ポッター監督が今シーズンの途中にチェルシーに引き抜かれ、コーチ陣も一緒にチェルシーに移った。絶対に負けたくない。ブライトンのチームとしての意地がホームゲームで見られるのではないかと思って選んだ。
襲い掛かるプレス、高速ショートカウンター、負けられない意地
戦前の想像通り、ブライトンからは意地を強烈に感じた。
キックオフすると、ブライトンはチェルシーに襲い掛かるような強烈なプレスを敢行する。フォーメーションを[4‐2‐3‐1]から[4‐1‐2‐3]に変化させ、3バック+2ボランチで行うチェルシーのビルドアップに対してハメに行った。
前線のMF三笘、FWレアンドロ・トロサール、MFソーリー・マーチ(左から)の3選手をチェルシーの3バックに当てはめ、MFモイセス・カイセドとMFアレクシス・マクアリスターのボランチでMFマテオ・コヴァチッチとMFルベン・ロフタス=チークを監視する。チェルシーのパス回しを制限するのではなく、敵陣でボールを奪う意図を明確に持ち、それを全員で共有していた。また、チェルシーの中盤には展開力のあるMFジョルジーニョが不在だったため、ブライトンの圧力がチェルシーを自陣に閉じ込めていく。
3分、チェルシーが後方からパスをつなごうとゴールキックをスタートすると、DFチアゴ・シウバの縦パスをMFカイセドがカットし、FWトロサールがループシュートを狙った。これはDFシウバがライン上のギリギリでクリアをしてしのぐ。そして獲得したCKのこぼれ球を拾ったDFペルビス・エストゥピニャンのシュートはまたもDFシウバのブロックに遭った。
開始早々に襲い掛かるプレスを繰り出したブライトンは勢いそのままに先制点を奪取する。5分、3選手が敵陣でMFメイソン・マウントを囲んでボールを奪った。MFマーチからFWトロサールへのパスは相手にカットされるも、FWトロサールのカウンタープレス(すぐに切り替えてボールを奪いに行くプレス)によって、MF三笘が敵陣でこぼれ球を回収する。そして、サムライはドリブルでPA左に進入して相手を引き付けると、横パス。相手2選手の間を通した先に待っていたのはFWトロサール。CFで起用された背番号11が冷静にGKをかわしてネットを揺らした。
先制に成功したブライトンは勢いを全く落とさない。強烈なプレスで相手を押し込み、CKを立て続けに獲得していき、14分の右CKではMFマーチの蹴った鋭いボールがMFロフタス=チークの足に当たってオウンゴールを誘発させた。
2点ビハインドのチェルシーもプレスの強度を高めていき、17分には敵陣で奪ったボールをつないで、MFコナー・キャラガーがPA内でシュート。これはGKロベルト・サンチェスの超反応に阻まれるも、こぼれ球をMFクリスティアン・プリシッチが押し込んだ。しかし、枠を外れた。20分にもMFラヒーム・スターリングが左サイドから上げたクロスをキャラガーが頭で合わせる。ゴール左スミに飛んだシュートだったが、これもGKサンチェスのセーブに遭った。
チェルシーにチャンスを作られながらも、GKサンチェスのハイパフォーマンスとDFルイス・ダンクとアダム・ウェブスターが情熱を出して守っていくと、43分に3点目を追加する。敵陣でテンポよくパスをつなぐと、左サイドを抜け出したDFエストゥピニャンのクロスがDFトレバ・チャロバーの足に当たって、2度目のオウンゴールでリードを3点に広げた。
後半はチェルシーがビルドアップの形を変えて、ブライトンのビルドアップを外してゴールに向かった。MFロフタス=チークが右SBに入り、DFチャロバーとDFチアゴ・シウバがCB、DFマルク・ククレジャが左SBに移り。MFキャラガーとMFコヴァチッチに加えて、MFマウントが中盤に下がる。後ろで数的優位を作りながら、縦パスの受け手を増やす。つまり、前半よりもビルドアップに人数を割いて、安定した前進を図った。それが奏功して、後半はチェルシーが押し込む時間帯が続き、48分にはMFキャラガーのアーリークロスをFWカイ・ハフェルツが頭で合わせて、一矢を報いた。
ブライトンのプレスがハマらなくなったことで、リードを2点に縮めたチェルシーのペースになる。63分にはDFベン・チルウェルとFWピエール=エメリク・オーバメヤンを投入し、明確にフォーメーションを[4‐1‐2‐3]に変更すると、シュートチャンスを作り出していく。
69分、FWオーバメヤンが左サイドから切れ込んでコントロールショットを放ったが、GKロベルト・サンチェスが好セーブで得点を許さない。74分のFWハフェルツのシュートはGKの正面に飛び、86分には右サイドからDFロスタフ=チークが折り返したボールをPA中央でマークを振り切ったFWハフェルツが左足で合わせるも、シュートは枠を越えた。
チェルシーは前半に続いてGKロベルト・サンチェスの好守に阻まれ、最後の精度が上がり切らずに、ネットを揺らせない。
被シュートが増えても落ち着いて対応するブライトンは、選手交代を行ってフォーメーションを[4‐4‐2]に変更して守備ブロックを形成する。そこからチームとしてプレスに行くときと行かないときのメリハリを付けた守備を展開していくと、試合終了間際にダメ押し弾を叩き込んだ。
90分+2分、敵陣で相手のパスをカットした途中出場のMFフリオ・エンシソがミドルシュート。これは後半からゴールマウスを守るGKエドゥアルド・メンディに弾かれるも、こぼれ球を拾ってMFエンシソがシュートを放つ。これも再びGK弾かれたが、右SBからトップ下にポジションを移したMFパスカル・グロースがゴール前に駆け上がり、こぼれ球を押し込んで勝負あり。
監督やコーチ陣というチームの核を引き抜かれたブライトンだったが、新たに就任したロベルト・デ・ゼルビの下で選手たちが意地を出し、勢いよくチェルシーに襲い掛かると、ホームでプライドを示す大勝を収めた。