プレゼンテーション1

スタジアムを埋め尽くした観客が呼び込んだ5分間の逆転劇〈 J2第21節ファジアーノ岡山vs鹿児島ユナイテッドFC〉

J2も早いことに折り返し地点。互いに豪雨災害を経験した両チームの選手やサポーターから復興を願う強い思いが垣間見えた一戦は岡山が試合終盤にPKを沈め逆転勝ち。劇的な幕切れとなった。惜しくも敗れたチームは次節をどう戦いどう勝つか、勝利チームは勝つことは大切だが、勝った試合からいかに反省するのか、向上していけるか。これからリーグをより面白くするであろう期待を抱いたこの一戦を振り返る。

試合結果

岡山 2-1 鹿児島
【得点】
後半12分 韓勇太(鹿児島)
後半41分 上田康太(岡山)
後半44分 中野誠也(岡山)

スタメン

ハイライト


マッチレポート

 早速試合を振り返っていこう。

右サイドからの形を模索し続けた前半



一瞬の隙を突かれた失点シーン

 ピッチ中央で岡山がファールをし、与えたフリーキックをMF酒本(鹿児島)がリスタートで高いライン設定をしていた岡山DFラインの裏を走るFW韓勇太(鹿児島)が落ち着いてゴールに流し込んだ。MF酒本の瞬時の判断力は敵ながらあっぱれだった。早熟の鹿児島ユナイテッドというチームにおいてベテランの経験値が良い方向へ働いた。FW韓勇太の決定力もお見事だったが、岡山は反省しなければならない。きっかけとなったファールは果たして必要だったのか。ゴールから遠い位置といえ油断していたのではないか。しっかり修正してほしい部分である。


交代選手がもたらしたもの



66分 FW赤嶺→FW中野
74分 MF久保田→MF上田
 
 この交代がチームを活性化させた。FW赤嶺は相手を背負いボールをキープすることを得意としていて、一方FW中野は裏への抜け出しを得意としている。高い位置を取る鹿児島DFラインの背後にある広大なスペースをFWヨンジェと共に突きまくる作戦である。その企み通り、GKと一対一になるシーンやDFラインの裏でボールを受けるシーンをいくつも作りだすことができた。
 司令塔MF上田康太の投入がもたらしたものは大きい。中盤の底から長短のパスを織り交ぜゲームを組み立て、ピッチをワイドの使う展開、一番大きかったのは4月の怪我からの復帰を待ち望んでいたファン、サポーターの心に火をつけたことだろう。彼が交代するとき、シティライトスタジアムを埋め尽くした1万5000人超えの観客が大歓声を上げ、一気に選手たちの背中を押した。会場はファジアーノが逆転すると言わんばかりの雰囲気に包まれ、テレビで見ていた私も画面から伝わる熱気に鳥肌が立ち、勝利を願った。これこそ応援のチカラだと思った。
 話をピッチ内の事象に戻す。仲間がゴールに向かってドリブルを開始。鹿児島DFはペナルティーアーク付近でこれをファールで止めた。ここで舞台は整った。もちろんボールの前に立ったのはキックの名手MF上田康太。ゴールまでの距離約19m。ほぼ正面。黄金の左足から放たれたキックは放物線を描きながら、壁を越えゴールに吸い込まれ同点。この試合ファインセーブを連発していたGKアンジョンスはこれはノーチャンスだった。
 試合は進み、後半44分FW中野があエリア内で倒され、得たPKをきっちり決め逆転。見事勝つことができた。


総括

 この試合は1年前に起きた西日本豪雨災害の復興の願いを込めたゲームで記念ユニフォームシャツの配布などもあり1万5000人もの人々が駆け付けた。そういった試合で劇的な逆転で勝利を飾ったことは集客増加も目指す岡山にとってリピーターを増やす意味でもよかったと思う。
しかし、後半中盤まではゴールキーパーがビルドアップに参加し、丁寧にパスを繋ぐ鹿児島に苦戦していた。得意の前プレスがはまらず、プレスのかけ所を見いだせなかった。前プレスがはまりにくい相手との戦い方はまだまだ改善の余地がある。一方で選手交代がうまくはまったことは好材料だった。
 有馬体制1年目のファジアーノ岡山がさらなる高みを目指し、見ている人にパワーを与える、魅了するサッカーをしていってほしい。
 

豪雨災害で被災した全ての人々に笑顔が生まれますように。1日でも早い復興を願って。

きばれ鹿児島


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