『米国最強経済学者にして2児の母が読み解く 子どもの育て方ベスト』を読んで
ビジネス書にありがちな煽りタイトルですが、まんまとつられて買ってしまいました。
本屋で立ち読みしたときに、目次がまさに出産後に自分が悩みそうなことを最新の研究/ファクトに基づいて結論づけてくれそうだと思ったからです。
結果的に読んで良かったです。が、読みすすめるうちに、論点に対して明確な結論が出ているといいきれるものはあまり多くないこともわかってきました。そういう意味では、ある種答えを求めている人にとっては不服かもしれません。ただ、それが今の限界なんだと理解した上で今後の判断をしていくのには参考になると思います。
特に「面白い」/「参考になる」と思ったのは以下です。
・高学歴な人ほど母乳育児を信奉する傾向にあるが、学力向上と母乳育児に因果関係は見られない。さらにいうと、健康面であれ認知面であれ長期的なメリットに関するエビデンスはデータからは認められない
・母乳によるメリット:(赤ちゃんの短期的なメリット)アレルギー性発疹の発症減少、胃腸障害の発症減少、NECのリスク低減、耳の感染症のリスク低減 (母親のメリット)乳がんリスクの減少
・SIDS(乳幼児突然死症候群)を防ぐためには、仰向け、添い寝をしない、親子同室、タオルケットなどはかけない(生後4ヶ月まで)が有効。(添い寝等はリスクを認識した上でやるべき)
・ワクチンを忌避したがるのも高学歴の親に多い。しかしその理由とされるアレルギーは治療可能なものであるし、ワクチンと自閉症の関連にエビデンスはなく、関連を否定するエビデンスは多い。有害事象や発熱や熱性けいれんであるが、発生は極めてまれ。ワクチンは子どもの病気を予防するため有効である
・産前/産後休暇を取ることは赤ちゃんにプラスがあるが、育児休業期間をすぎると専業主婦であるか否かかこどもにプラスかマイナスの影響を与えるというエビデンスはほとんどない。(アメリカでは、産休を取ると早産児がヘリ、乳児の死亡率が下がったというデータがある。また、ノルウェーの子供を対象とした研究では母親が4ヶ月間の産休・育休を取った場合の方が、子どもの学歴が上がり、成人後の収入まで上がったという結果が示された)
・子供のお世話に関しては1歳から1歳半はナニータイプ(ベビーシッター/祖父母等1:1での)の保育、それ以降は保育園の方がよいかもしれない(生後18ヶ月までに保育を受けた月数が長いと、4歳半までの認知スコアはわずかに低いが、それ以降は保育園の時間が長い子のほうが認知スコアが高くなった ※ただし、因果関係ではなく相関関係)
・質の高い保育園への通園が、子どもの「言語発達」と強い相関関係があった。(行動に関しては、保育園の質は影響しなかった)保育施設の質の評価の中心は、保育者と子どもの関わりが圧倒的。(書籍では、「早くから中国語に振れる」とか「オーガニックおやつ」などは、研究者が保育の質のよさの条件としなかったとして「お飾り」の特徴と呼んでいる)
・保育園の質の高さをどのように図るかというと、子どもに"反応する"、子ども中心の保育園かどうかが見極めのポイント。大人が子供と一緒にいて対話をしているか、子どもたちとポジティブな身体接触をしているか?子どもたちに読み聞かせをしているか、赤ちゃんが声を出したら応えているか。子どもがいろいろな場面で感情を行動で表したときにどのような反応をするか?(とくに悪いことをした子どもに対して)そして、子どもたちの様子が元気そうか、大人の対話をする時間があるかなどを見る。
・ただし、まず大事なのは親の関わりと子どもの成長発達の結果との関連性で。家に本があり、子どもに読み聞かせることの方が、保育園にどのような本が揃っているかよりも重要。
・ねんねトレーニングで「泣かせる寝かしつけ」(ベッドに母がこないことで赤ちゃんが泣き出しても様子を見に行かない)はよる子どもを寝かしつけるのに効果的である
・ねんねトレーニングをすることで、(母親が休めるようになるので)産後うつ病が低減し、母親の精神的な健康が全体的に向上するなど親へのメリットがあるというエビデンスがある。また、泣かせっぱなしを見に行かないのは可哀想に感じるし、赤ちゃんへの害を心配するかもしれないが、赤ちゃんに長期的な・短期的な害があるというエビデンスはない。(一部研究では、むしろ「泣かせておく」介入の後赤ちゃんの安心感と愛着は増大した、というものもある)
・0~2歳児はテレビから学習することができないし、3歳未満でテレビ視聴時間が長いと、学力テストの低くなることが示唆されている。逆に、3~5歳になるとテレビから学ぶことができる(例えばセサミ・ストリートは、就学前のレディネスを示す様々な尺度に向上が見られた)
・しつけに関して。最初のポイントは親が自分の怒りをコントロールすること。子どもは大人ではなく、子どもに話せて聞かせても行動を改善することはまずできないと認識すること。第二のポイントは、明快な「アメとムチ」のシステムを作り、そのルールに常時一貫して従うこと。最後のポイントは、決めたら一貫して使い続けること。(特に子どもがぐずるから、と言って折れてはいけない。「ぐずりつづければ自分の願いが通ると子どもが学習してしまう」)
・おしりたたきなどの体罰は、短期でも長期でも、マイナスの影響を及ぼすことがわかっている
・多くの文献で、乳幼児期に親が読み聞かせをした子どものほうが、後の読む力を測るテストの成績がいいことが示されている
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