フロム2002 ぴぴフェス
2024.8.14
前日の渋谷ミルキーウェイに続いてこの日もライブハウスへ。
前日の余韻冷めやらぬまま舞台は下北沢。
少し早く着いたため街を歩く。犬は歩けば棒に当たるが、下北沢を歩けばバンドマンに当たる。多くのバンドマンやライブキッズとすれ違った。
友達を連れて下北駅前のガストに入ると既に別の友達が並んでいた。下北沢がバンドの聖地であることを思い知らされる。
昨日タワレコで出会った友達とも合流し、開演ギリギリで下北沢最大のライブハウス、下北沢シャングリラへ。
下北沢シャングリラ
2002年代生まれの音楽インフルエンサーが主催する、2002年生まれバンド3組によるイベント。
前月の見放題で観た鉄風東京、前日に引き続きペルシカリア、そして今年1番多くライブを観たBlue Mash。そして470人ものオーディエンス。
この日も舞台は整っていた。
鉄風東京
他の2組と違い、あまり音源を聴いたことのないバンドだった。だからこそ後ろでしっかり観ていたのだが、1か月前に観たバンドと同じだと言われたとは思えないくらいエネルギー溢れるバンドだった。
ボーカル大黒の雄叫びと、浴びたことのないレベルの爆音がこの日の始まりを告げる。にしても音がデカすぎる気はするが。(すぐに慣れた)
2曲目(3曲目?)あたりでボーカルのエフェクトボードが壊れるトラブル。しかしそれを気にせず「ギター1本でやります」と告げてライブを続行する鉄風東京。
ギターを持たず身軽になった大黒は、ギターがむしろ枷だったのではないか、というくらい全身を使って等身大の思いを表現していた。
音に合わせて大きく拳を振り下ろし、時にフロアに近づく大黒の姿は、彼が誰よりも鉄風東京の曲を愛していることがひしひしと伝わるものだった。
フロアでみていたBlue Mashのボーカル優斗はボードの異変に気付くと舞台袖へ。
次の曲からはBlue Mashの音でライブが再開した。
大黒はメンバーに謝ると、セトリを次々と変更する。彼らの代名詞21kmはフロアを盛り上げる。
最後1曲になって、打ち合わせなしで再びセトリ変更。大黒が思っていた曲とは違った曲が始まったが、「もうどうにでもなってしまえ」と言いこの日3度目の21km。
ほとんど曲を知らなかったが、その姿に惹き込まれた。今日の目標は汗をかかない!と言って隣で観ていた友達は気付けばいなくなっていたし、汗だくで帰ってきた。このことがこのライブの良さを象徴しているだろう。
ペルシカリア
前日に続いて2日連続のペルシカリア。彼らのライブを観るのは今年8回目。昨日が最高だっただけに、今日のライブは昨日を超えることは無いと感じていた。
しかし、埼玉フロアワンマンを経た今のペルシカリアはやはりそれまでとは何かが違う。1ヶ月でこれほど進化するものなのかと、信じられないほどのライブをやってのけた。
この日の1曲目は「離愁」
離愁から始まるライブは観たことがなかったため、脳が一瞬混乱する。しかし、「離愁」から始めたことで、このライブに懸ける思いは十二分に伝わってきた。彼らは今日も「本気」で勝ちに来たのだ。
「音楽インフルエンサーなんて大嫌いだよ!!」
と言って始まった「ハウオールドアーユー」
「ハゥゥオォオルド、アァー ユゥウウ」と叫んでダークな照明に照らされる矢口結生の眼差しは、昨日以上に本気だったように見えた。
そこから、「優しい人」「歓声の先」「風道」「死ぬほどどうでもいい」と、今のペルシカリアを鉄風とBlue Mashに突きつけるかのように、激しい曲が続く。
この日は2002年生まれバンドによる決闘だ。そして誰よりも勝ちに行こうとしていたのが矢口結生だった。Blue Mashボーカル優斗、鉄風東京ボーカル大黒に向けての言葉が目立つ。
元々言いたいことが沢山あると語っていた矢口の思いが口から次々に紡がれる。彼が抱えていた02バンドへの不満。いや、不満とも少し違う。02バンドへの叱咤激励と言うべきか。厳しい言葉の裏に隠せないほどの愛が見受けられた。
去年の矢口結生は、中々新しい曲を作れなかった。しかしBlue Mashと対バンした翌日にすんなり産み落とされた曲がある。それが次に奏でられる「優しい人」だ。
恐らく矢口の最大のライバルはBlue Mashなのだろう。そんなBlue Mashのライブではシンガロンがない。それはBlue Mashのカッコ良さだ。
しかし矢口はそんなBlue Mashに最強のシンガロンを見せつける。ペルシカリアなりのカッコ良さ、ペルシカリアが築いてきたフロアを見せつける。
「僕ら」はいつまでも歌を歌おう。ここが複数形なのは、そういうことなのかと気付かされた。
大黒と優斗に物申したのなら、男として自分が示さなければならないものがある。
「あの頃と変わってないというのなら!」
そう言って矢口の口から出てきた歌詞は衝撃的だった。
今となっては幻に近い、さよならロングヘアー(2020ver.)だ。
ワンマンでも滅多にやらないようなペルシカリアの始まりの唄をこのイベントで披露したのだ。彼らのこのライブに懸ける想いが分かる。観客のボルテージはさらに高まる。シンガロンで少し目に涙が浮かんだ。
矢口だけでなくメンバーも気合十分。この日はたいぴょんが気を吐いていた。
「1番いいギター弾くから見とけボケ!」と叫んだり、普段見せない姿を見せていた。
そこから昔よくやっていたロンヘア→ショトカの繋ぎで「ショートカット」が披露される。
続いて「東京」
「そういえばこの曲は鉄風東京のこと思ってかいたんだったなア」と呟いた矢口からも02バンドへの愛が感じ取れる。誰よりも愛に溢れた人間だなと改めて感じさせられた。
最後の曲、「タイムオーバー」を歌い終えると、この日も、「埼玉県と渋谷ミルキーウェイからペルシカリアでした!」と言い残してBlue Mashにバトンを繋いだ。
完全に何倍も強く、かっこよくなったペルシカリアを見せつけられた2日間だった。昨日のライブは超えられないだろうという予想は半分当たって、半分外れた。確かに昨日のライブは超えられなかった。けど、昨日のライブもまた今日のライブを超えられなかった。それだけの話だった。
Blue Mash
今年Blue Mashのステージを観るのは9回目。しかしどれも大阪で観たものだ。前回観たのは見放題のBIG CATのステージ。Blue Mashの歴史に残るようなステージだった。
だからこそ、東京のライブはどうなるんだろうとドキドキしていた。Blue Mashは、ハコや街を大切にしているバンドだからこそ、BIG CATのライブを超えるのは難しいのではないか。
でももしそうなら、今日はペルシカリアに軍配が上がることになるぞ。なんてことを考えていた。完全に野暮だった。
リハの「このまま僕らが大人になっても」からボルテージは高かった。
「本番言う機会なさそうやから今言っておきます。ぴぴ、今日開催してくれてありがとう。」優斗はそう言い残して舞台を去る。
汗をかかないことを目標にしていた友達は昔からBlue Mashを聴いていたが、ライブは初めてらしい。Blue Mashのライブはほんとにやばいよ、と散々ハードルをあげていた。それだけBlue Mashを信じていた。
銀杏BOYZのBABY BABYが流れてメンバーが登場する。今1番大好きなバンド。BABYBABYが流れると浮き立つ心を抑えられない。
予定調和のように「素直」が始まる。ただBlue Mashのライブは予定調和には決してなり得ない。
ローテンポな楽曲ながらラスサビで一気にテンポが上がるこの曲で早速ダイバーが溢れる。
2曲目にはショートチューンの「このまま僕らが大人になっても」
優斗が02バンドへの思いを語る
東京のライブハウスだからこそ、関東を拠点にするペルシカリアの客が1番多いと思っていた。それだけにこのMCには涙を誘われた。泣いていたのかもしれない。この日は泣きすぎてどこで泣いたのかも定かではない。
曲順も全く覚えていない。ソノダマンがいなければこのレポートは書けていない。
「2002」「春のまま」そして新曲の「セブンティーン」へと続いていく。一見、矢口ほど対バンを意識していない様子だった優斗。しかし曲間に「矢口結生、倒してやる!」と叫んでいるのを聞いて、内なる闘志を見た。
忘れているんだよ、と言った矢口に対して、「おい矢口、俺はあの日ミルキーウェイで話したことを忘れたことはないぞ!」と言い返す。
「2002」の間奏では、「おい、げんげん。この5.6年で1番かっこいいギター弾いたれ」と優斗は言う。それにげんげんは気合十分のギターソロで応える。
「春のまま」では、元カノに今日来てもらうよう連絡したが断られたことを打ち明けていた。でも、「ひょっとしたら来てるんじゃないかなって思ってしまう」とも言っていた。「東京ラストティーン」の間奏で、優斗は客席の後方を舐めまわすように見ていた。確信はないけど、探していたんじゃないかな。もしかしたら観に来ているのかもしれないって。
そう語る優斗の胸にはBlue Mashの文字が輝いていた。
MCでは、居酒屋での炎上問題に触れる。
新曲の「セブンティーン」を披露した後、前語りから、俺の全てが詰まった曲、といって始まったのは「東京ラストティーン」
物販の時、泣いてしまったと優斗は言っていたが、この日のラストティーンは、半分くらい歌えてなかった。東京という街がそうさせたのかは分からないが、泣きながら歌う優斗を見て、こちらも涙ぐむ。
ライブはラストスパートを迎える。
そう告げて02バンドへの愛を叫ぶ。
そう叫んで海岸線のイントロが始まる。
優斗はバンドを続ける意味を告げる。それは、皆に生きていて欲しいから。そして、ペルシカリアにも鉄風東京にも生きていて欲しいから。
何十回と対バンした仲。大黒とは殴り合い寸前の喧嘩になったこともあったらしい。それでも色んなことを話して、色んなことを共に夢見てきた。
ペルシカリアとBlue Mashが、あの日渋谷ミルキーウェイで何を話したのかは分からない。
泣きながらひとり下北沢の坂を歩いたあの時。
「いつかこの場所をパンパンにしたいと思ってた」
その夢は、この日最高の仲間と達せられたのだ。
最後はショートチューン、「M19」
そう叫ぶと4人は舞台を後にする。
アンコール
へとへとになったメンバーが登場する。
そうして始まったのは本日2度目の「2002」
どうしてこの曲なのかは、言わずとも分かるだろう。
この日の2002は、これまで以上に02バンドへの愛を感じる曲だった。
「僕らならきっと大丈夫さ」
ここが複数形なのも、そういうことなんだな。
ペルシカリアとBlue Mash。何かと自分の中で比べてしまった。でも、比べることはロックじゃないってことに気付かされた1日だった。
そして確実にバンドの成長を見た1日だった。
「この年に生まれてよかった」と優斗は言っていた。インディーズロック界において本当に奇跡の世代だと思う。
だから、これからは「伝説の世代」になって欲しい。なれる。そう強く感じた。