「ニュース速報テロップ」を早く出せるテレビ局はどこだ?
はじめに
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これは、2020/8/17にNHKで発報されたニュース速報である。
ニュース速報はその名の通り「速報性」を何より優先しているコンテンツだ。普通、ニュース番組では丁寧にVTRを繋げてテロップを付けて原稿を用意して、といったようにある程度の手間がかかった上で一つ一つのニュースを報道している。しかし、ニュース速報はテキストだけだ。速度を大切にしているため最低限の方法で報道しているわけである。
あの、「ピコン」と鳴る瞬間、視聴者はテレビに釘付けになる。「ピコン」の瞬間は何のニュースかわからない。悲しいニュースなのか、嬉しいニュースなのかはわからない。だから一応冷めた感じ「何だ?」という顔でテレビをぐっと見る。非日常がスタートする予感がするあの瞬間。喜怒哀楽のどれでもないあの気持ちを全視聴者が抱く。もう番組の内容なんてどうでもいい、早く内容を見せてくれと息を飲む。そして、体感3分実寸数秒経って、ニュース内容が表示される。私はあの瞬間が嫌いじゃない。
そんな視聴者を釘付けにする「ニュース速報テロップ」だが、冒頭書いたとおり、当然のことながら「速報性」が大切である。内容が正確という前提ならば出来るだけ早いほうが良いだろうし、例えば報道メディアの代表格であるテレビ局ならば、「他の局に負けたくない」という気持ちを抱くだろう。そういう意味では各局のプライドに関わっているはずである。
そこで、今回はあるニュースを報道するにあたっての主要テレビ各局の速報テロップの発報スピードについて検証することとした。
取り上げるニュースと検証素材
取り上げるニュースは全てのテレビ局で速報テロップが発報されているであろう、『新元号「令和」の決定』とした。記憶にも新しい、菅義偉官房長官が会見で額縁に入った「令和」を掲げたあのニュースである。このニュースを速報テロップ出さないのはおそらくないであろうという思惑だ。
そして検証素材は以下を利用する。テレビ各局の映像をまとめたものである。見てみると局間で微妙なズレがあるが、1秒以下の誤差であると思われるため、今回はそのズレは無視することとした。
発表に至るまで
ここからはスクリーンショットをもとに検証をしていく。
菅義偉官房長官「新しい元号は…(11:41:19~11:41:21)」
菅義偉官房長官「令和であります(11:41:22~11:41:23)」
ここで菅義偉官房長官の"口頭"での発表が完了した。しかし、まだどのような漢字が当てられるかはこの時点では不明である。
11:41:25 額縁がちらっと見える
11:41:26 令和の字がちらっと見える
11:41:27 完全に掲げ、「令和」がはっきり見える
ここで菅義偉官房長官が額縁を掲げ、漢字と読み方がわかった状態になった。ここで各局はおそらくテロップ作りに入ったと思われる。さあここからはテロップ表示が早い順に紹介をしていく。(※なお、以降動画キャプチャ内に発表が11:41:29と書いてあるのだが、この時間は発表タイミングより明らかに遅い。本稿では11:41:27を掲げたタイミングとする。)
第一位 NHK(11:41:31発報(掲げてから4秒))
新元号は「令和」 官房長官が発表
圧倒的な速さだったのが、NHKである。なんと掲げてから4秒でテロップを出している。速すぎて事前流出を疑うレベルだ。(画像赤線は筆者追加)
流出していない前提で話を進めると、ある程度事前にテンプレートが用意されていたとしてもステップとして ①「れいわ」と打つ→②「令和」と変換する→③最終チェックする→④送信 があるはずなのだが、それを4秒でこなしているのは流石としか言いようがない。NHKは手話ワイプが「令和」の文字と被ったというアクシデントがあったが、その裏でこのような神業があったのだ。民放には絶対に負けないぞという強い意志を感じる。
第二位 日本テレビ(11:41:35発報(掲げてから8秒))
速報 新元号「令和」
二位は視聴率が絶好調の日本テレビである。記録は掲げてから8秒。十分早いのだが、NHKの2倍の差を付けられているのが悔しいところだ。
ちなみに、日本テレビでは画面上部のテキストのみの速報テロップという形ではなく、news every内のニュースタイトルテロップという形で発報していた。「速報ニューステロップ」と言えるかは議論が分かれるところかもしれないが、画面上に掲出するスピードがどうだったかを検証することに重点を置くため、第三位以降もどちらの場合でも発報とみなすこととしたい。
第三位 フジテレビ(11:41:37発報(掲げてから10秒))
新元号は令和に決定
第三位は一時期の勢いを取り戻せていないフジテレビ。記録は10秒である。一桁秒に到達出来なかったのが惜しいところだが、十分早い。テロップが派手なのもフジテレビっぽくて良い。
第四位 テレビ朝日(11:41:43発報(掲げてから16秒))
新元号は「令和」
第四位はわが家のともだち10チャンネル、テレビ朝日。記録は16秒。CM1つ分以上時間が掛かっている。このくらいの差になるとそろそろザッピングしている視聴者を逃すレベルになっているかもしれない(どれだけ影響があるか知らないが)。
第五位 TBS(11:41:45発報(掲げてから18秒))
新元号は令和に決定
第五位は赤坂五丁目、TBS。記録は18秒だ。テレビ朝日の16秒に僅差で負ける結果に。Twitterでは「5000兆円欲しい」に似ているテロップだと話題になったことは記憶に新しい。
最下位 テレビ東京(11:41:52発報(掲げてから25秒))
新元号「令和」
最下位は通好みの、テレビ東京である。記録は25秒。なかなか報道特別番組を組まないことでおなじみ(褒め言葉)であるから予想通りだった方も多いだろう。テレビ東京の場合は逆に30秒以内であることを褒めるべきかもしれない。
まとめ
各局の結果をまとめると以下のような結果となった。
第一位 NHK(11:41:31発報(掲げてから4秒))
第二位 日本テレビ(11:41:35発報(掲げてから8秒))
第三位 フジテレビ(11:41:37発報(掲げてから10秒))
第四位 テレビ朝日(11:41:43発報(掲げてから16秒))
第五位 TBS(11:41:45発報(掲げてから18秒))
最下位 テレビ東京(11:41:52発報(掲げてから25秒))
やはりNHKは強い。なにかがあったとき、「NHKをつけろ」とお父さんが言っていたのはあながち間違っていないということだろう。この4秒という間に何があったのか。「プロフェッショナル仕事の流儀 NHK速報テロッパー」の企画をどうかお願いしたいところである。