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志村ふくみ100歳記念@大倉集古館

何十年も前の学生時代だったか、なぜ手に取ったかも忘れてしまったが、志村ふくみの『一色一生』というエッセイ集を読んだ

前後して大日本印刷の「日本の色」シリーズという色見本帖を手元に置いていた
小説を書くための準備だったが、実のところはもう少し色そのものに関心があったのかもしれない

現在は小説書きを諦めて、シティプロモーションなどを専門とする研究者というか、なんだかわからないながら、地域に関連した仕事をしている

その視点から、今回の展覧会を眺めれば、志村のしごとが「土地の色を探す」「土地の色を見出す」「土地の色を染める」「土地の色を織る」という視点から考えることが可能になるというか

そもそも、こうした志村ふくみの文章が、私の今の仕事に結びついたのかもしれない

一方で、志村が色を「受苦」として把握していることへの凄みを感じる
与えられ、そのなかで生きる、しかし、そのなかで新たな色を滲み出させるという思考も可能だろう

染色という仕事に媒染という作業が経過されることにも想像力が誘われる
椿灰汁による媒染とは、その言葉だけでも心に触れる

また、志村が石垣りんと新作能の取り組みを行っていることも興味深い
私も素人ながら能はよく見る 能の持つ限定された情報による想像力誘発は、志村の染めた着物を見ているうちにも彷彿とする

さらに、小裂帖(春夏秋冬)という存在もとても面白い。織裂や残り裂を保管しておき、そうした裂が「私を使って」と呼びかけてきたという志村の思いは、土地や地域の側から人を見るという仕掛けにも繋がりそうだ

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