オペラ「トスカ」@新国立劇場
初心者ゆえ、またクロスオーバーの人ゆえ、オペラという高尚なものでも、舞台美術とか衣裳に専ら関心が行って、オーケストラや歌い手さんの凄さはそれほどわからないわけです
その意味で、今回鑑賞したトスカはとても正統的でした
原作というか、物語の時代をきっちり再現する方向なのかと思います。
で、わたしはそういうパターンだと、関心が削がれてしまう困ったものです
舞台美術や衣裳に、ある意味過剰な(モノとしてはシンプルであっても)意味を付与させ、想像力を刺激する演出が端的に好きなのです
物語としては、トスカとカヴァラドッシは、巻き込まれた人です
歴史という物語では、トスカとかカヴァラドッシとかは、まあ、どうでもいい人
主人公はナポレオンであり、登場人物として、せいぜいマレンゴの戦いで逆転負けを食らったメラスや奇襲攻撃に成功したドゼーあたりがいるということでしょう
しかし、ナポレオンもメラスもごく僅か言及されるだけであり、ドゼーについては名前を呼ばれることもないはず
歌手のトスカも、画家のカヴァラドッシも、いてもいなくてもナポレオンのイタリア遠征、その後の歴史的変遷に影響を与えることはないでしょう
いや、カヴァラドッシが共和主義者として、ナポレオンの勝利に歓呼の声をあげ、ある意味、それゆえに死ぬ一方で、その後、ナポレオンは共和主義の希望から帝政をひくようになります
無駄死にかもしれません
しかし、トスカもカヴァラドッシも、なんとかして自らの生を実現しようとしてはいました
与えられたなかで、いや、それをわずかでも破ろうとして
悪役のスカルピアは嫌な奴です
オペラで最も嫌な奴との評判もあるようです
確かに、それでも
トスカやカヴァラドッシに比べれば歴史の登場人物にはなっていたのかもしれません
小さな物語を大切にし、大きな物語を構想する
そんな仕事をしてみたいところです
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