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映画「季節のはざまで」について

普通の人々にはおすすめの映画であるが…

2024年3月Bunkamura渋谷宮下にて鑑賞。
デジタル・リマスター版ということで、「デジャヴュ」と同時に公開された。
長らくダニエル・シュミット監督のファンであるが、「季節のはざまで」についてはまったく興味がなかった。
一応、長く偏った趣向の映画を観続けてきたため、その映画を自らが好むかどうかの「嗅覚」を知らず知らずに身に着けてしまった。
同じ監督の映画とはいえ、好むものと好まないものがある。
ということで、「ラ・パロマ」「デジャヴュ」「トスカの接吻」を「推し」とする者としては、「季節のはざまで」は通り過ぎてしまっていた。
だが、こうして、デジタル・リマスター版が公開ということで、しかも「デジャヴュ」も上映されるとすれば、立ち会わないわけにはいかない。
ということで、鑑賞するに至った。

だが、しかし、予想通り「季節のはざまで」はワタシの映画ではなかった。
面白くないとは言わないが、あまりにも予定調和過ぎた。
過去に賑わったホテルの光景と朽ち果てた現在が、わかりやすく交互につながる。
郷愁が一定の感動を呼ぶのかもしれない。
だが、ひねくれ者のワタシとしては、どちらかと言えば、「デジャヴュ」の不親切な過去と現在の行き来の方が好ましい。
映画製作を一般的な接客業と同じ「サービス業」と仮定すれば、「季節のはざまで」の方が「デジャヴュ」よりはるかにわかりやすく、観客に対して充分に親切である。
「デジャヴュ」には多くの「?」が存在するが、「季節のはざまで」には、おそらくほとんどそれがない。
丁寧に作られた映画である。
だから、ワタシにはつまらない。
あまりに陳腐ではあるまいか???

そんなことを言ってしまうと、多くの丁寧に作られた良作を敵に回すことになるが、別にかまいはしない。
ワタシは、ただの偏屈な映画ファンに過ぎぬ。
よくよく考えてみれば、同じ映画監督で、すべての作品を好むという監督は、ひとりもいないかもしれない。
数本は癖愛するが、他はそうでもないというパターンが多い。
文学や写真、アート作品などとは異なり、映画は監督だけではなく、製作者(プロデューサー)や多くのスタッフによる総合芸術であることも起因するかもしれない。

ただ、この渋谷の映画館で、今回「デジャヴュ」と連続で「季節のはざまで」を鑑賞したのだが、明らかに「季節のはざまで」の方に客が入っている。
「デジャヴュ」が午前開始で、「季節のはざまで」が午後からということだけが理由でないだろう。
やはり「季節のはざまで」の方が一般受けするようだ。
あるいは、今回の上映について、配給会社は「デジャヴュ」だけでは採算が取れぬことを見込んで、あえて「季節のはざまで」も上映したのかもしれない。
ともかく、「ラ・パロマ」「デジャヴュ」「トスカの接吻」を「推し」とする者としては、残る「ラ・パロマ」のデジタル・リマスター版を望んでやまないのである。

2024年6月22日UP
※このテキストは、筆者がYahoo!検索(旧Yahoo!映画)に投稿したものを転載したものです。


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