色々理屈があっても最後は人の問題

昨日の朝、スマホを開くとLINEが1件入っていた。

相手は小中の同級生のI君からだった。

彼とは普段からやり取りする間柄でもないが

実は16歳~19歳くらいまで一緒にバンドを組んでいた仲だ。

バンド解散後、風のうわさで焼き肉店を開いたと聞いた。

知らない間柄でもないしお店にお邪魔することにした。

彼の自慢でもある「焼かなくても食べれる肉」の提供

それほど新鮮な肉を提供をする自慢の店。

最初は奥さんと従業員の小さな店だった。

それから、あまり行くこともなく久しぶりに話を聞くと

2店舗目を出店。彼の過去を知る僕は、彼が

早くも2店舗目を出すのか。。。大人になったなぁ~と思った。

自営業をする自分も負けてられないと思いながらも

陰ながら応援してた。

当然2店舗目へも足を向け食べに行くと、大勢のスタッフを

抱えスタッフのモチベーションの高さ、気配り

インカムを付け細やかなやり取りで、お客様を送り出す際は

お客様が見えなくなるまでお見送りをする。

ホスピタリティー満載のお店に急成長。

そんなI君のお店でプチ同窓会をすることになった。

その時のI君は、パリッとしたスーツを着

ツヤツヤの髪、恰幅のいい体型で

むしろ胡散臭いオーラ満載で少し鼻に付くくらいに

社長感を出していた。

仕事の話になると熱く、「これはこういうもんだ」

「目標を掲げ」云々、どこかの教科書から丸暗記したような

セリフを並べ、良くも悪くも彼は変わった。

以前までのIじゃなく、いけ好かんIになっていた。

それからまた数年後、大阪の中心地である場所に

3店舗目をオープンさせたと聞き見に行った。

何だか仰々しく入りづらい。。。。。同級生の店なのに

何故か行きにくい。そう、もうバンドを一緒にやってた

Iじゃなくなっていたというのが、どこか距離感を

こちらから開けていた。彼はとある経営コンサルで

社員を研修に出し店も急成長。

やはりアウトソーシングの社員教育、経営ノウハウを

学ぶことで小さな店も大きくなるんだなと感心した。

でも、彼にはもう近づきたくないというか、

3店舗どこのお店にもおらず、完全社長業にシフトしたのだろう。

それから数年、海外の友人が焼き肉を食べたいということで

I君の「焼かなくても食べれる肉」の店を紹介しようと思い

ネットで検索すると。。。。。。。

あれ????ホームページが3店舗あったのに

1店舗しかない。。。。。社長業について4~5年くらい経ったか

もう2店舗が消滅している。ここが、飲食業界の難しいところだろう。

ひとまず、残っている1店舗に予約を入れた。

僕もその海外の友人とお店に行くと、インカムを付けたスタッフはおらず

広いお店に少人数のスタッフ、慌ただしくお店の入り口に入った僕たちにも

気づかないくらいスタッフ数が足りていない。

席に通され少し経ち、スタッフさんに

「I君の同級生のKと言います。今日社長は?」と聞くと

「あっ、今日はまだ来てないですねぇ」

「そうですか。。。。まぁいいんですけど」とやり取りが済み

数分後、「Kさん、社長に伝えたところ今から向かうという事です」

そっか、僕が来てるということで、来てくれるんだと思った。

更に数分後I君がやってきた。

「おお~~久しぶり~~~!!」と。

数年前に見たパリっとしたスーツも、テカテカした髪

ツヤツヤした顔の脂もなく、ユニクロのワッフルニット

髪は洗いざらし、白髪も増え顔色もどこか良くない

あまりの変わりように「お前どないしたんや???」

何となく気づいてはいたが、社長の姿はなく

商店の兄やんみたいになっていた。

彼は怒涛の如く、合わなかった時の様々な出来事を

お客さんいる前でも吐き出した。

スタッフの管理、売り上げの減少、離婚など

この10年以内の間で目まぐるしく起きたようだ。

でもまぁ、嫌みなギラギラした社長よりも

フラットなI君に戻って僕は良かったと思う。

あれから数年後の朝、前述したLINEには

「久しぶり!電話番号教えて!」とLINEに書いていた。

確かに、電話でのやり取りというのはほとんどしたことがなく

LINEと、お店に電話するくらいだったのでお互いの

番号までは把握していなかった。

朝、8時くらいに送り返すと、30分後くらいに

電話がかかってきた。

僕「おぅ、久しぶりどないしたんや?」

I君「あのな、もう店閉めようと思って」

「・・・・・・・・」

同じ商売をする者として衝撃的な内容だった。

I君「求人募集してもさぁ、まったく来ぇへんし

スタッフは辞めていくし最後に残った社員も辞めたい

って言うてきたから、この際誰もクビにせずに

辞めることにしてん」

僕「そっか。。。人手不足はどこも抱えてる問題やしな

お前これからどうすんねん?」

I君「これから、嫁さんと2人でやんねん」

僕「そっか!それは良いわ!」

I君「会員制の一見さんお断りで、オーナーおすすめの

コースとあとはアラカルトで1日2組くらいで完全予約で」

そう、誰も雇わずお客様の顔と対面しながら商売をしていくと。

彼曰く「俺は今まで、お客さんの顔を見て商売をしてなかった。

美味しかったんか、まずかったんかわからんまま

数字だけで判断してたわ。原点に戻ってお客さんが美味しいのか

まずいのかきちんとお客さんの顔を見ながら仕事することにした」

僕は大賛成。まず、こだわりが強くバンドでも彼はドラム

僕はギターこの2人でバンド内でよくケンカになった。

それくらいこだわりが強いI君が、いつのまにやら

受け売りの言葉を羅列して、世の中をすべて知ったかのような

I君より「この肉は、なかなか手に入らない貴重な部位で」と

言ってるI君の方が、I君らしく、小さくても自分のやりたい仕事

出来る仕事を1周回って気づけたのは事業失敗ではなく、

原点回帰出来てよかったように思う。

人は変わると言うけれど、本質は変わらない。

こうなりたいという夢も、それがその人の本質の部分で

叶えられるのか?叶えられないのか?継続できるのか?は

自分にさえわからない。

彼は何百人の人を雇える人材ではなく

何百何千のお客様を喜ばせる人材だったということだ。

それに気づけて良かったと思うし、僕も彼から学びたいと思う。

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