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国際市民メディア @GlobalVoices のボツ原稿で伝えたかったこと(3/4)「支援現場の立場」編

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最終更新日:2019.02.10|ENGLISH

悪戦苦闘しつづける現場

THE STRUGGLE OF THOSE ON THE GROUND

性暴力被害者は被害の後できるだけすみやかにDNA検査を受けることが推奨されているが、そのための「レイプキット」なるものは、[被害者には] 容易に入手可能なものとは捉えられていない。その上で、被害者を支援する社会的・医療的なセーフティネットは依然として脆弱である。

"残念ながら [当時は] お迎えに行ったりできる体制はありませんでした。"

東京都内で唯一、性暴力被害者の支援を専門に受け持つ緊急救援センター「SARC・東京」(性暴力救援センター・東京)の運営委員を務める田辺久子氏は、『GV』のメールでの取材にこう答えた。

大阪に設置された「SACHICO(Sexual Assault Crisis Healing Intervention Center Osaka: 性暴力救援センター・大阪)」同様、「SARC・東京」は日本で初めて稼働した24時間体制の性暴力救援センターの一つだった。田辺氏によると、「SARC・東京」は『ワンストップ支援センター』として性暴力被害者と必要な支援を提供することが可能な医療機関などを繋げる機能を果たすという。

”日本で初めて24時間体制の性暴力救援センターが設置されたのは、2010年大阪のSACHICOで、2012年6月に東京で、SARC東京が発足しました。2つとも民間の女性たちが手作りで作り上げたもので、病院内あるいは病院に併設されて設置されました。(病院拠点型と言われています)どちらも、とにかく24時間電話をうけ、支援につながるということで1名体制で始まったのです。”

田辺氏によると、『ワンストップ支援センター』は、「SARC・東京」が仲介となって面接を行い、医療機関や必要な支援を提供することが可能な機関に繋げるという形で機能する「システム」であるという。

”SARCにいらしていただきたいと案内したことにはそのような根拠があります。”

田辺氏はこう書いた。

"電話した時、「出かけていく気力も体力もなかった」と詩織さんは言われています。そういう方に、残念ながらお迎えに行ったりできる体制はありませんでした。警察通報ならば、機動力がありますから、車でお迎えに行ったりすることは可能だったでしょう。当時は、なんとかしてSARCに来ていただくしかなかったのです。現在であれば、被害者が無理なく来れそうな近くの協力医療機関を案内して、SARCから支援員が飛んでいくことは可能ですし、そうしています。"

メールでの回答で田辺氏はさらに、レイプキットを巡る事実関係についてこう説明した。

"東京都の場合は、警察に通報した場合は、警察がレイプキットを持参して病院に駆けつけます。被害を申告したくない場合は、内閣府で現在実施中のモデル病院ではレイプキットが配布されているので、それを使用し、証拠採取等ができます。"

田辺氏はまた、本人が被害届を出したいとした場合、その証拠物が証拠として利用されるが、本人がそう望まない場合は、被害者の身元を番号等で把握することにより本名が秘匿され、したがってプライバシーが保護される。「SARC・東京」には証拠を保管する機能は備わっていないが、他の県のワンストップセンターでは保管機能を有しているところもあるという。

「詩織」さんのことがあった3年前に比べると、東京都内の性暴力被害者に対する救援体制はずっと整ってきたと田辺氏は言う。

45名の登録スタッフがおり、24時間ロテーションを組んで常時2名のスタッフが稼動する「SARC・東京」は、設立から3年後の2015年、東京都と協定(英語版は存在せず)により補助金を得られるようになった。この協定により、「SARC・東京」は東京都と性暴力の防止に取り組む唯一の連携民間支援団体となった。しかし3年前に詩織さんが必死に救援を求めて電話してきた時には事情が違った。東京都との協定が締結されたのは2015年7月。詩織さんの事件の3か月後のことだった。

田辺氏によると、この協定に基づき都内で連携する病院は60に増えたという。かぎられた資源のなか、「SARC・東京」には事前の面接を行って連携病院を紹介するしか手立てがなかったのである。スタッフはその連携病院に詩織さんを連れていくつもりだった。偶然にも、その病院は4月18日に詩織さん自身が実際に一人で訪ねた病院だった。

こんにちの「SARC・東京」は、韓国等の同形機関には劣るものの、自治体と同形の協定関係にある他県の機関(性暴力被害者支援センター)に比べても財政規模は国内随といえる状態にある。

国としては47都道府県に各一箇所の性暴力被害者支援センターを作る方向で、田辺氏によると、現在すでに40箇所が設置を完了している。公的な財政負担は各県の事情に合わせ様々な形で行われている。但し、その予算規模は約1.6億円(およそ150万ドル)に留まっている。

#MeToo 運動がようやく日本社会にも伝わりはじめ、被害者をはじめ、その支援者や制度そのものにも変化が表れ始めている。

田辺氏によると、年間、およそ5000件の電話相談性暴力被害(リピーターも含む)が「SARC・東京」に相談されている。年間で平均100名から150名が、相談の次の一連のステップに進んだという。これには、面接相談、警察への通報支援や、連携産婦人科への紹介、精神科医や弁護士の紹介などの専門家の紹介を含む精神的ケアの提供などが含まれる。

「認知件数」の問題

2017年度の前半、「SARC・東京」に相談を寄せた77人の被害者のうち、驚くことにその五割の37人は警察に通報している。これは田辺氏によると、例年に較べると「結構高い数字」と言えるという。おそらく、田辺氏がニューヨークタイムズで語ったように「ホットラインに電話してくる女性に警察に行くように勧めても、警察が信じる筈がないと拒まれることがよくある」からだろう。

"性暴力救援センター・東京(SARC東京)でレイプ・カウンセラーを務める田辺久子氏は、ホットラインに電話してくる女性に警察に行くように勧めても、警察が信じる筈がないと拒まられることがよくあるという。「彼女たちは、自分が間違ったことをしたと指摘されると思っているんです」"

こうした警察への不信の原因に、田辺氏は怒りはおぼえるという。それは、レイプの件数をどのように数えているかということだ。

田辺氏によると、日本におけるレイプ件数は「認知件数」、すなわち被害届が受理された件数で数えられる。これは、警察に被害申告した件数ではないし、実際の被害の氷山の一角に過ぎない。したがって、そのような中で「有罪率」を測ろうにも、相談される全体数に較べればゼロに等しいのだという。具体的には、「立件されて検察に送検されたものが、2~3件、有罪は1件ぐらい」だという。

「ほとんどが証拠がないと被害届も受理されない」のが現状ということだと、田辺氏は憤りを見せた。

しかし、新たなレイプ対策法の施行後、警察当局の態度だけでなくその本質に変化がみられる。2017年6月23日、7月13日に改正法が施行されるおよそ3週間ほど前に、警察庁は全国の警察組織に向けて通達を行った。主に被害者への対応を変えることがその主旨だったが、それは「レイプ被害者」にすべての年齢の男性被害者が含まれるようになったからだった。

この通達により警視庁は、男性被害者の受け容れ先として都内で、2箇所を連携病院として指定した。「SARC・東京」と東京都も、男性被害者への取り組みに関する検討をしているという。

田辺氏はメールをこう締めくくった

”SARC東京ができてよかったことは、多くの被害者が泣き寝入りして、それでも心に深い傷を負って生活していて、そうした過去の被害を抱えた方の相談だけでなく、被害直後にお電話くださる方が増えたことです。”

4へつづく

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