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フライヤーデザインしました。

昨年末のM-1決勝戦、ウエストランドさんの漫才に出てきた「チラシのことフライヤーって呼んでるコント師〜」の件りに絡めて、自虐も絡めちゃったりして、軽快にこの記事を書き始めて、はや1ヶ月。
もはや2月なので書き出し部分は全部カット。いやはやー。

今回は、制作に毎回それなりの手間と時間をかけて取り組んでいるフライヤーデザインについて、です。

もともとイラストを描くのが好きなので、自分の俳優活動、はたまた学校の文化祭などでフライヤーやポスターが必要になった時にはデザインやイラスト部分を担当する機会がよくあって、
自団体コヒツジズでも結成当初からビジュアル関連全般のデザインを担当しています。
ありがたいことにそうやって活動していく中で、デザインを見た団体さんからご依頼を頂き、フライヤーなどのデザインをお受けする機会も度々ありました。

依頼を受けて制作したフライヤーデザイン

そして先日(と言っても1ヶ月前)、
コヒツジズ 最新公演のフライヤーのデザインが、無事完成しました。

「新生・日本昔話のような話」ぜひ観に来てね。

いつもデザインが完成する度、InstagramやTwitter、各SNSで(文字数とか調整しながら)簡単にデザイン物の紹介をしていましたが今回せっかくnoteを始めたので、
いつもより詳しく、そもそもフライヤーデザインって何?みたいな部分も、制作過程を通して紹介してゆきたいと思います。

遡ること2022年秋。
出演舞台が終わり、いよいよ本格的にデザイン作業に取り掛かろうとなると、まず初めにすることはデザインの《方向性決め》です。
ノートとスマホを机に出して、今回のデザインで出来うる最高の“イケ”とは何か、を考えます。

そもそもフライヤーデザインがイラスト・絵画と違うところは、「団体を知らない人にも興味を持ってもらえる」「紹介したくなる」「出演者が気持ちよく配りたくなる」などなど、けっこう実用性が必要とされるところです。

もし衝動のみで作った場合、実用的効果薄々(うすうす)の、なんかイケてる気がするけど、これが何かのお知らせなのかもよく分からない代物が出来上がる可能性高高(たかたか)になります。
なのでフライヤーをデザインする際は、毎回折り込みチラシの束や劇場入り口付近の棚の中で、一番目立ってる!とはいかなくとも、
その時の公演に対してかけ離れすぎず正しくワクワク出来て、お客様の先入観・イメージがよりイイ感じの角度で劇場に来てもらえる、そんな役割をもりもり担えるようなデザインを目指します。……めちゃめちゃ理想を語ってますが、続けます。

まず初め、公演タイトルや公演テーマで考え得る・実現し得るデザインを求めて、ノートの上でのとんち大会を開催します。
結果的に全然果たされない文言もあれば、言うだけタダの理想を書いたり。
アイデアというよりもお題(目的)探しがメインです。

もはや大喜利って書いてあります。

そして、今回果たす必要があったお題は大きく分けて2つでした。
1つ目は、公演タイトルの「新生」感をどう表すか

今回の「日本昔話のような話」という作品は、一度コヒツジズが2015年に上演した初演版があり、8年ぶりにリニューアルして上演する作品。

同じ人が再演デザインを担当する場合に厄介なことは、
タイトルや公演内容から連想する一番良いなと思いつくデザインは、大抵の場合すでに初演で自分がやってしまっていること。

初演のフライヤーデザイン。元々駐車場を改装したという会場で、出演者3名。でも絶対面白いことやるよ!という気概でダイナミックなイラストを藁半紙に印刷したフライヤーでした。

そんな良い(と自分で思う)デザインならば、色とかマイナーチェンジしたバージョン違いデザインでも良いんじゃないか…とも思いますが、
せっかくタイトルに「新生」と付けた訳だし、新しい部分をアピールしたい!
そして初演を観た人にも、出来れば「あぁ、アレね」で片付けられてしまいたくない!と思い、向き合って考えてみることにしたのです。

続いて2つ目のお題は、制作期間が師走ということ。

自分もみんなもいそがしい、師走の時期に作るフライヤー。
実際に調べてみても、今回の出演俳優さんは皆、12月に出演舞台の本番が代わる代わる立て続いていました。

もし、この状況で1枚の写真に全員集合スタイルのフライヤーを企画しようものなら。
俳優陣+カメラマンのスケジュール調整で確実に骨が折れることになるし、仮に写真撮影をするにせよ今回のテーマは「日本昔話」。
解釈の仕方(それこそ、とんちの利かせ方)にもよるけれど着物の衣装か昔話的小道具を用意するか、もしくは昔話的な風景の場所に集まってもらうことになるかもしれない。

例えばこういうデザイン。劇場に行けばこの人たちのパフォーマンスが観れるんだ!というワクワク感がある。

ならばせめて、人数を抑えてコヒツジズ3人だけでどこかで撮る…?など、スケジュールを確認しつつしばらく悩みました。
「思い切って、凄く日本昔話らしい景色の場所を見つけてスケジュールを合わせて集まっても、その当日雨だったら嫌だな…。」とか。

そしてこの2つのお題を大いに考えあぐねた結果。
今回は、風景の素材だけ色んな所へ撮影しに行き、フリー素材の動物写真、それから初演時の翁姿コヒツジズの写真を使い、
文字のレタリング、写真のコラージュ、配色、配置、デザインの工夫によって出来る「新生」を探ることにしました。

それが上手くいけばレトロ・フューチャー感、まさに新生なのに昔話、のようなチグハグワードに似合う、和風・洋風を越えたある意味アングラ的今昔感を出せるかも。と。

方向性が定まってきたら、簡単にラフを描いて、今回のデザインにはどんな素材と行程が必要になるか箇条書きにして、作る順番も決めます。

ラフ。

今回は用意する素材が多くなりそうだし、項目を把握しておけば作業期間の目安も立てられて、
あまりにも面倒なことになりそうな作業が見つかった場合は他の方法に変えても遜色ないかとかも事前に作戦を立てられます。

特に順番決めは超〜重要で、素材を並べる順番・色調整の順番を何も考えずに手をつけてゆくと、途中で何がどれだか分からなくなったり、けっこう目立つ箇所なのに様子見で序盤に作ったせいでなんだか粗い印象…などなど、結果的に3倍は時間がかかった。とか、容易に起こります。

まずは素材の準備。

コヒツジズのロゴに使われている山と空の部分は、京都嵐山でフライヤーのために撮影した写真です。
その割には使われ方が小さい。いやむしろ、このままだと使わないかもと思ったので無理矢理にでも使いました。

キャスト名の背景に使用した写真は、片瀬江ノ島で6月に実際に撮影したもので、裏面の車窓は2021年に新潟で撮った写真です。
きっとそのうち何かに使えると思って撮った写真は、案外本当に使える日が来ます。


そしてフリー素材を組み合わせて作った、新生、日本昔話のような写真
昔話ってやっぱり動物の登場人物が多いので、実写だと異様というか凄い世界観。

ぜひこの機に拡大してみてね。

巨大な桃が川から流れてくる写真もシュール。サイズ比較のために“やや大きめの桃”も一緒に流してます。
従来ならばフリー素材から動物や果物を一つ一つ切り抜く作業は膨大な時間がかかるはずでしたが、タイミング良く登場したiPhoneの新技術。
すぐに切り抜き素材を量産することが出来たのでした。

素材が揃ったら、ひたすらに配置します。
なんだかんだで一日二日で一気にやれない作業量なので、1日の区切りごとにバランスを見て、ノートとかスマホのメモ帳に修正点を書き、少しずつ改善させてゆききます。
風呂場にスマホを持ってゆき、シャンプーしながらデータを眺めて「ロゴを間開けてやや小さくして右に寄せる」とか打ったりします。(べつに風呂上がりにちゃんと見てメモすれば良い。)

そして配置の最後に、手書き文字・イラスト関連の部分をまとめてペン入れ、プリクラ機械の仕上げの気概で描き込みます。
あとは全体の質感の加工と、色味を調整して、完成です。

フライヤーデータが完成すると、コヒツジズの時の恒例で、フライヤーに使った素材をバラバラに並べ直してwebページやSNS用デザイン、グッズ用のデザインも副産物的に作ります。

今回は、フライヤー裏面の「車窓から見た竜の子太郎」(と命名)を軸に再配置。
それこそフライヤーとしての機能性、公演の雰囲気をあまり考えなくて作るデザインだったらこのデザインでも良かったと思うくらい個人的には好みで、
別の想定で作った素材の再配置の割に、しっくりくるデザインを見つけられたなと思いました。
朝方に「分かったこうすれば良いんだー!」とか言いながら、グアーッと5種類ほどデザインしました。

グアーッと出来上がる時の感覚をもう少し細かく言うと、素材を並べてゆくなかで「この配置にすれば意味合いを兼ねられる」「形とか雰囲気が共存できる」というのがどんどん重なってその時なりのパズルの正解みたいなしっくり感に辿り着ける感覚です。
その時は自分で自分に「デザインが深まってるね〜」と言ってました。

コントや演劇、映像でもこういう「しっくり」な感覚はけっこうあって、創作の分野全般でも言える感覚だと思います。(スタンリー・キューブリック監督の映画とかもう、深まってるね〜という感じ)

ちなみに今回のグッズデザインを出すならばこういう感じ。 実際に発売してます、ではなく、グアーッのなかで生まれた副産物の副産物、的なもので、実際に売る予定が無くともとりあえず作ってみました。
2023/2/9追記:ネット限定、期間限定で「コヒツジズのネットショップ」から販売することになりました!是非!


……さて。そんなこんなで今回のフライヤーデザインは出来上がった訳です。

いかがだったでしょうか。
読んでみて「フライヤーデザインって面白い作業だな」と思ったでしょうか。それとも「フライヤーデザインって面倒くさいんだな…これって全部愚痴なのかな」と思ったでしょうか。
面白いと思えた人は、物作りの旨味(?)の分かる人なのかも。いやむしろ、旨味が分かる人のほうが、面倒くさいと思うのか…。

“フライヤーデザイン”と一口に言っても、何を狙って作っているのか、一体どのぐらい準備するものなのか、制作過程を見れる機会もなかなか無いし、想像しづらい分野なんじゃないかと思います。
そもそもこうして時間をかけて(それも本番も近くなってきた頃に)裏側を紹介する必要も果たしてあったのか…というのは気にはなれど。

なんてったってnote始めたてのこの機会。
厚木が舞台稽古や台詞覚えや映像編集、公的機関の手続きとかと並んで年に何回かまとまった時間を費やす作業内容のひとつということで、なかなかのボリュームで紹介してみました。

今後も例えばイラストとか、色んな作業をメイキング的に紹介するのも機会があれば書き記してゆきたいと思います。もちろん俳優分野のことも。本業ですから、俳優業!
それではまた。

厚木拓郎


《 公演情報 》

第33回下北沢演劇祭参加作品
コヒツジズ 第8回公演

『新生・日本昔話のような話』

---日本にはたくさんの昔話がある。古いものだと800年も前から寸分変わらずに語り継がれているらしい。
桃太郎、金太郎、一寸法師、泣いた赤鬼。どんな人でも一度は聞いたことがあるだろうその昔話。
今回お届けするのは、よく聞く昔話のようでちょっとだけ違う、昔話のような話に登場する者たちの物語。---

作・演出 下亜友美

出演

亜カリ友洋

厚木拓郎

河野友保
(以上、コヒツジズ)

岡教寛(Jungle Bell Theater)

瀬川圭介

田中沙季(Superb Sick Squad)

内藤羊吉

西出結

音楽 池崎浩士(立体映画館)

舞台監督 小田島凜(劇団ミックスドッグス)
照明 伊藤侑貴
衣裳 内海詩野(演劇集団壺会)
制作 小松美月
宣伝美術 厚木拓郎

2023/2/15(水)~19(日) 全7ステージ

・15(水) 19:00

・16(木) 19:00

・17(金) 14:00/19:00

・18(土) 14:00/19:00

・19(日) 15:00
※開場は開演の30分前

前売 当日 4,000円(税込)

会場 OFF・OFFシアター
〒155-0031東京都世田谷区北沢2-11-8 TAROビル3F

▼チケット予約フォーム

https://www.quartet-online.net/ticket/nihonmukashi?m=0bafjfi

▼コヒツジズ 公式ページ
https://chtzz.tumblr.com

▼第33回下北沢演劇祭
https://engekisai.com/program33/

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