ウイスキーをスコットランドから日本に持ち帰ろうとしている人が知っておくべきこと
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はじめに
コロナ禍で、ここ数年海外に行くことができなかった人も多いのではないでしょうか。しばらく行かなかった間に、さまざまなルールが新しくできたり、これまで許されてきたことがダメになっていたりしています。ウイスキーを海外から日本国内に持ち帰ることは、以前よりも明らかに難しくなっていました。
今回、スコットランドでウイスキーを買って、無事に日本に持ち帰ることができましたが、一瞬「これはムリかも」「最悪廃棄か」と思ったことも。
わざわざ実際に蒸溜所まで足を運び、貴重なウイスキーを見つけて買ったにも関わらず、あわや日本に持ち帰ることができなくて捨てて帰らないといけない、というのはさすがに厳しいものがあります。
そこで、スコットランドで買ったウイスキーを日本に持ち帰る方法について、人柱としての体験をまとめてみました。
飛行機で自分で持って帰れるのは1人当たり5リットル、7本まで
ウイスキーは、「アルコール濃度24%から70%の酒類」という「航空貨物の危険物」に該当する。そのため、機内持ち込み・預け入れ手荷物に関わらず、飛行機への持ち込みは1人当たり5リットルまでと、航空会社に関係なく、国際的に規則で制限されるようになった。したがってボトル7本までしか持って帰ることはできない。
以前と同様に制限なく持って帰れると勘違いしたあるバーテンダーが、たくさんのボトルが入ったトランクをチェックイン。ラウンジで休んでいたら呼び出され、上限超えた分のウイスキーのボトルの廃棄を迫られた、という実話がある。
どの7本を持ち帰るかの選択権は乗客側にはなく、保存期間が2日程度だったそうだ。あわや廃棄、というピンチに、スコットランドに残っていた仲間が、急遽空港まで引き取りに行って難を逃れた、という話を聞いた。
つまり、7本ルールをナメてたらリスクがある、ということ。
また、7本のウイスキーは10kg弱。航空会社のステータス持っていない場合、23kgの手荷物重量制限も考えないといけないので、念のため。
では8本以上ウイスキーをスコットランドで買って、持って帰りたい人はどうしたらいいのか、をまとめたのがこの記事だ。
ロイヤルメールは鬼門
イギリスには、インターネットショッピングで買ったものを日本に転送してくれる業者がいる。
転送業者は、国際宅配便の大口ユーザー。我々のような個人と違って、ボリュームディスカウントされて配送料が安くなっている。その分転送手数料を上乗せして儲ける、つまり(大口割引配達料+転送手数料)<小口の配達料金、の転送手数料部分で儲けるビジネスモデル。
そして転送手数料の計算のもとになるインヴォイス(後述)がちゃんと作ってあるかどうかも、商売のプロセスの一つなのでしっかり確認してくれる上(逆に言うと買値の証拠を出せとまで言われる可能性も)、通関事務がスムースに行われるよう、サポートもしてくれる。
いろいろな蒸溜所でちょこちょこボトルを買い、それがある程度の量になったらまとめて箱に入れて国内便で転送業者に送り、再梱包することなくそのまま日本に国際便として転送してもらう、という使い方が想定されるが、ここにも鬼門が。
イギリス国内郵便ネットワークで、一番身近な存在であるロイヤルメールは、国内配送の場合でもウイスキーの場合、1個口あたりの上限が1リットル。海外配送は不可だ。
そのため、イギリス国内の転送業者を使って日本にたくさん送ろう、と計画していた人は要注意。
仮に100本送ろうとしたら、100個個別包装したパッケージを送ることになり、梱包資材を持っていくのも大変。郵送コストもかかる。仮に国内便で100本送ることができても、転送業者に費用を払って再梱包してもらう必要がある。正直現実的ではない。
以下がロイヤルメールの「Prohibited Items (輸送禁制品)」からの抜粋。
特にアイラからボトルを送りたい時、個人向け配達サービスを取り扱っているのは島内では郵便局つまりロイヤルメールしかないので、要注意。
DHLはDHLでもDHL Expressに行かないとダメ!
ロイヤルメールがダメなら、いつも日本に送ってくれるDHL使ってイギリスから送ればいいんじゃね?と思うかもしれないが、イギリスで最もポピュラーなDHL UK Parcelでは、実はウイスキーを海外に送ることはできない。
アルコールを含む液体物は、Prohibited Items for International Delivery、国際輸送禁制品に指定されている。
じゃあ大量のボトルを買ってしまった私はどうしたらいいの?と途方に暮れるかもしれない。そんなときの味方が、DHL Expressだ。DHL UK Parcelとは送れるものが違う。
エディンバラ、グラスゴー、アバディーン、インヴァネスなどの少し大きな街にあるDHL Expressの配送センターに行けばいい。
念のためだが、DHL Expressの国際輸送禁制品リストはこちらになる。
酒類(Alcohol)は禁制品リストに入っているが、「イギリス国内での酒類の配送は可能、英国外への酒類の輸送は現地の規制による」と書かれており、国内と日本への配送は可能。だからDHL Expressを使えば、イギリスの転送業者に送ることもできてしまう(が二度手間になる)。
街中にあるDHLサービスポイントからでもDHL Expressは送れるとHPに書いてある。だが、日本で言うとセブンイレブンから宅急便送るようなものなので、正直どこまで国際輸送に対応してくれるかわからない。そして、DHL専用の箱の在庫がどれだけあるかもわからない。
だから、それなりの本数があってクルマが使えるのであれば、DHL Expressの配送センターに直接行く方がいい気がする。筆者は配送センターからしか送らなかった。
日本から必ず持っていくべきもの
ボトルにプチプチを巻いて箱に入れるだけでは、輸送中に割れるリスクが高い。
せっかくのボトルを破損しないために、こういうエアパッキンを十分な数、日本から持参すること。
もし足りなくなったら、イギリスのアマゾンで買って、宿泊先のホテルに届けてもらうという手もあるが、受け取れないリスクが高いのであまりオススメしない。
下の写真がエアパッキン付属のポンプ。先端についた緑色のノズルは、海外でボトル買ったときのエアバッグについたまま送られてくることがあるが、これがあると空気入れる効率が上がる。
またこのポンプは相当ちゃちな作りなので、壊れてしまうとエアバッグを膨らませられず、ボトルが送れなくなる可能性がある。百均で売っている自転車用のポンプを予備として持っていくことをオススメします。
あとしょうもないことだが、エアバッグにボトルを入れてから膨らませること。通常のボトルだと膨らませた後でも入るが、ダンピーボトルだとなかなか入らなくて、ラベルが剥がれそうになったりする。
それ以外にも、ガムテープ、カッターナイフもしくはハサミ、マジックペンは梱包時に必ず必要。エアキャップ、いわゆるプチプチも持って行った方が何かと便利だ。これらは現地のCo-opなどで買うことはできるが、念のため持参した方が安全。
日本からかさばる段ボールをわざわざ持っていく必要はない(後述)。
DHL Expressからの発送
ではどうやってDHL Expressから日本にボトルを送るのか、具体的にまとめてみる。
DHL Express配送センターに行って、
「日本に荷物送りたいんだけど、サイズ5の箱をもらえますか?」「I would like to ship some items to Japan, can I have a Box 5?」
などと言うと、DHL専用の段ボールがタダでもらえる。日本からかさばる段ボール箱を持参する必要がない、というのはとてもありがたい。
Box5だとボトル9本程度、最大のBox7だと15本程度が入る。写真では見にくいが、一番下の「Rest of World」に日本は該当し、送料はBox5だと138.95ポンド、Box7だと199.95ポンド。
ボトル1本当たりだと、Box5の場合15+ポンド、Box7の場合13+ポンド。Box7がおトクだが、DHL Expressの配送センターに箱の在庫がない可能性があり、また15本となると日本での通関時に個人輸入とみなされないリスクがある(が、私は2箱だけゲットして無事に送れた)。
もらった箱に、エアパッキンに入れたボトルを詰め、封をせずに(←ここ重要)カウンターで箱を渡す。DHL側で内容物を確認して、チェック済みのシールを貼る必要があるためだ。
量が多ければ、箱をもらいに行ってからホテルでパッキングし、改めてDHLに持ち込むのがいいだろう。
DHLの箱は、ガムテープを持参して必ず底を補強することを強くお勧めする。繰り返しになるが封はしないこと。
箱の外には持参したマジックペンで「FRAGILE (割れ物)」と大きく書くか、Fragileと書かれたステッカーを貼り付けること。
ボトルを送る際に、箱ごとに中身を記載したインヴォイス(送り状)を作る必要がある。正確には、DHLの社内システムに、DHL担当者がインヴォイス情報を登録する必要がある。それがないと輸出、輸入ができない。破損時の補償、日本通関時の消費税と酒税の計算に使われる、大事な書類だ。
必要な情報は、ウイスキーの名称、容量、アルコール度数、本数、1本当たりの価値(と一箱あたりの合計額)。それをまとめた紙を、DHLの人に渡してシステム入力してもらう。そしてFor Individual Use, Not For Businessと必ず書き添えるようお願いすること。そうでないと通関時に面倒な問題が起きる。
1個口ごとにボトルの情報をDHLの人が細かくシステム入力しないといけないので、本数が多いと大変だ。めんどくさがられて適当に入力されると、日本通関時にハマるリスクが高まる。
それを避ける意味もあり、何度かDHLに行って分けて送ることをオススメする。最悪時のダメージを減らすことができる。スケジュールに余裕を持ち、大きな街に行くごとにDHL Expressから日本に送っておくことを強く推奨。
以下にも書きますが、時間的余裕のなくなった旅の最後にガッツリ送ろうとすると、トラブルが起きた時に超ハマる可能性がある。
DHL Express配送センター所在地は、
グラスゴー: 41 Colliery Rd, Glasgow G32 8SL
インヴァネス: Unit 2, 2 Henderson Rd, Inverness IV1 1SN
他にはエディンバラ、アバディーンにもある。
配送手続きが終わると、送り状とインヴォイスの写しを見せられるので、かならず内容物の詳細と価値が間違いないか、またFor Individual Useと書かれていることを確認してからサインすること。
内容物の価値やアルコール度数が間違って高く計算されていると、日本通関する時にかかる消費税約10%、酒税(度数x10円x0.7(700mlボトルの場合))がそれに応じて高くなる。
何か問い合わせる必要があるときは、送り状に記載されたWAYBILL番号(イギリス人はAWBと略す場合もある)が必要なので、絶対に送り状の控えはなくさない。
配送状況については、配送されるまでこまめに以下のウェブサイトで確認、日本通関時の税金をカードで支払わないと配送してもらえないので、到着時期が近づいたら必ずモニターする必要あり。
ウイスキーを送る場合の税金
イギリスでは、海外からの旅行者への免税での買い物、いわゆるタックスリファンドが2020年末に廃止されていたことを、今回の旅の途中知った。ガイドブック的なやつを一冊も買わなかったので知らなかった。したがって出国時に20%の付加価値税、VATは返ってこない。
海外インターネット通販では、日本から買うと、定価からVATを引いた上で海外発送してくれるところもある。高額ボトルを買う場合は、イギリスで買うよりも日本から通販で買った方が安い可能性もあるので、念のため。
海外で買ったウイスキーを日本に持ち込む際は、3本までは免税。
それを超えた分は、別送品扱いにして消費税・酒税に関し簡易税率(1リットルあたり800円)の適用を受けるか、普通に税金を払うかの2択。
別送品扱いにすると時間と手間がかかる。DHLの保税倉庫に4日以上(土日祝日を除く)保管している貨物については、保管料課金の対象となり、900円/運送状もしくは15円/kg/日のいずれか高い方がかかる可能性がある。
普通に税金払っても一箱9本で6000円から8000円ぐらいと、簡易税率が適用された場合(9本6.3リットルの場合5040円)とさほど変わらないことを考えると、手間をかけて別送品扱いにしなくてもいいかもしれない。
3回日本に送って問題なかったのに、4回目はまさかの大ピンチ
筆者は、インヴァネスのDHL Express配送センターから2回、グラスゴーから2回、計4回日本にボトルを送った。
3回目までは、無事問題なく日本にボトルを送ることができた。
通常は、上にまとめた手順で間違いなく送れるはず。また、繰り返しになるが最悪時のダメージを減らすために、ちょこちょこDHLに行って何度かに分けて送ることを強く推奨。スケジュールの余裕のなくなった旅の最後にガッツリ送ろうとするとハマる可能性がある。
ご健闘と、楽しいスコットランド蒸溜所巡りの旅をお祈りいたします。
以下は、どうやって4回目の大ピンチを乗り越えられたのかをまとめました。
がっつりウイスキー買う予定で、万が一ボトルを日本に送れない事態になると本当に困る、という極めて限られた一部の方には、念のための知識としてかなりお役に立つかもしれません。私がとてつもなく苦労した体験からの教訓をまとめてあります。
それ以外にも「この記事面白かった!」という方がいらっしゃれば、投げ銭代わりにご覧くださいませ。他人が異国で大変な苦労した話を読むのは、そこそこ面白いと思います(笑)
最後にグラスゴーのDHLから送ったときは、はっきり言って最初から「お断り」状態だった。
「1週間前にここから日本に同様にウイスキーのボトルを送った時には、何の問題もなく送れたのに、何で今日は送れないの?」
「いや、あなたはイギリス国内に住所がないから送れない」
「旅行者なんだからイギリス内に住所なんかないよ」
「じゃあ送るのはムリね」
「いや、これ前回の時の送り状なんだけど、別にイギリスの住所なんか必要じゃなかったよ」
「それでもダメなものはダメよ」
こんな押し問答を続けて、正直「これは今日ここから送るのムリかも、最悪ボトル置いて帰ることになるな」と何度も思った。
運悪く、担当者の上司を説得してもダメだった。だが、旅行のスケジュール上、どうしてもこの日のうちにグラスゴーから送ってしまう必要があり、こちらも引き下がるわけにはいかない。引き下がることは、ボトルを捨てて帰ることを意味するからだ。
さらに上の上司に出てきてもらって、いくつかの追加資料を見せ、事情を説明することで、4時間ほどかけて何とか日本にボトルを送ることになった。
私の苦労した体験からの教訓
正直、グラスゴーのDHLを2度目に訪れた途端から、嫌な予感はしていた。
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