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非オーナー企業に就職したらこんなことが大変だった(民主的な社風の会社の弱点)

オーナー会社はやばい。民主的で公平な会社がいい。
就職活動の頃や若手社員時代、私はそう思っていました。

でも今は、オーナー企業やトップダウン型の会社に就職した方が、安心して定年まで働けたのかもしれない、と思っています。
こうした会社は、一族経営の帝王学だったり、カリスマ社長の営業力や指導力があったりして、経営基盤が磐石であることが多いですからね。

時代に変化が無く、同じものを作り続けていれば業績が安泰の会社であれば、オーナー企業だろうが非オーナー企業だろうが、安心して働けるんですよ。

でも、ビジネスモデルが時代遅れで業績も右肩下がりの会社だった場合、さらにそれが非オーナー型の民主的な社風の中小企業だった場合はどうなのでしょう。

はっきり言います。地獄です。

非オーナー型で民主的な社風の会社、一見よさそうな響きはあるけれど…

非オーナー型かつ民主的な社風の中小企業には、下記のような一見よい響きがあります。

  1. 社長も役員もみんな従業員出身で、社員との距離が近くなんでも話せる

  2. 正社員であれば誰でも一定の年齢で管理職に登用される

  3. 大企業と違い、役員に出世できるチャンスさえある

私は新卒で、上記3点を満たす中小企業に就職しました。
20代の頃の私はこれにとても満足していました。
ここで出世して、人よりもたくさん稼ぐんだ、と前向きな気持ちでいっぱいでした。

私とは逆にオーナー会社に就職した知り合いに対しては、厳しい規則や管理のもと働かされているのを知って大変だなあと勝手に同情していましたし、愚かにも私は彼らを見下してさえいました。

定年まで残るメリットを確信できなくなった40代

ところが、40代になって中堅社員になることで、私の考え方が変わりました。

「民主的な会社は最高」「オーナー会社の社員はかわいそう」という見方はあまりに視野が狭かったなあと、今は反省しています。

私は民主的な会社で働いているゆえ、今とても苦しく、定年まで会社に残るメリットを確信できません。
どういうことなのか、これから見ていきましょう。

社長も役員も従業員出身ということは、経営陣のマインドは善良なサラリーマン

①社長も役員もみんな従業員出身で、社員との距離が近くなんでも話せる
→これは、社長や役員のマインドセットがサラリーマン的なものからスタートするということです。

ベンチャー創業社長の場合のように新規事業のアイデアが浮かぶなり投資家や銀行から資金調達をして、人員を差配して事業を体制化するようなダイナミズムやリーダーシップは、サラリーマン社長には期待できません。
なぜなら、50代半ばまで普通のサラリーマンとして働いてきた人にスタートアップ社長のようなマインドチェンジを求めるのは、非現実的なことだからです。
これは能力とか才能とかの話ではありません。

また、大企業のエリート型社長のように、長年のロビー活動やトップ交際の中で大きな案件を引っ張ってくるということもありません。
なぜなら、民主的な価値感を大切にする会社で叩き上げられた社長の価値観に、そのような仕事の取り方は相いれないからです。

民主的な会社のサラリーマン社長の下で働く場合、強力なトップダウンの業務命令による激しいプレッシャーやストレスを受けることはそこまで多くないと思います。令和の働き方改革、コンプライアンス社会ならなおさらです。
労働者の視点からすれば、これは一見楽だし、魅力的にも映ります。

しかしその代わりに、会社の成長や従業員の昇給の原資となる新規の仕事が、社長や役員から降りてくることはありません。
このような会社で働き続ける場合、
新規案件を取ってくる主体は従業員になる
、ということを受け入れなければなりません。

誰でも管理職になるということは、みんなで会社にコミットするということ

②正社員であれば誰でも一定の年齢で管理職になる
→これは、社員の誰もがキャリアの後期は経営的な課題にコミットしなければならない、ということを意味します。

中小企業の場合、部下なし管理職がプレイングマネージャーとして顧客対応と収益管理を兼ねることが珍しくありません。
年齢が上がり役職が上がるほど、「従業員」として割り切って働くことが許されなくなってきます。

民主的な会社では、会社(の事業)は社長のものではなく、社長・役員・管理職と、みんなのものなのです。多くの場合、株式も社長・役員・管理職・従業員持株会でシェアしています。
経営へのみんなのコミットメントが求められます。私の今の会社の雰囲気は、まさにこれです。
この環境は、分相応に働きたい人や割り切って働きたい人にとっては、重いです。

この重いという言い方には、「従業員の甘えだよ」と言う批判もあるかもしれません。
私は次のように反論します。

オーナー企業や上場企業だったら経営陣が頭を悩ませて取り組んでいるような課題も、民主的な中小企業では従業員みんなでコミットすることが求められる事になるのです。
やはりここには歪みがあるのではないでしょうか。

役員のなり手がいない、誰も引き受けない

③大企業と違い、役員まで出世できるチャンスがある
→ビジネスモデルが時代遅れとなっており、業績の右肩下がりと財務悪化が続く会社で、役員をやりたいと思う人などいるでしょうか。

いま、「社長の継承者不足」「管理職志向を持たない若者世代」などがメディアでよく取り上げられます。

「役員のなり手がいない」、いや、「誰も役員を引き受けない」という事象が、これからの非オーナー会社中小企業で増えてくる気がします。
我が社の場合、このババを同僚の誰かが引かなければならないということになります。

若い世代へのメッセージ

ああ、やっぱりこんな会社に夢はない。
正直、責任が増えるだけで長くいればいるほど疲弊する会社に残る理由なんて、ないんですよね。

これだけだとただの愚痴になってしまうので、本投稿の最後に、若い世代にメッセージを送らせてください。

オーナー会社にはオーナー会社のよさがありますよ。

ワンマン社長にはワンマン社長のよさがありますよ。

「いい会社」は、若いときはいいけど、管理職になってからが修羅の道ですよ。

ここまで考えて就職先を選ぶ必要があるということです。
また、就職してゴールではなく、自分の会社の実力を見極めて常に転職を視野に入れていくことが大切でしょう。
価値観は成長とともに変わっていきます。価値観の合致する企業で働くことが、働く人にとっても企業にとっても幸せなことだと私は考えます。

逆説的に考えると

ただ、業績不振にあえぐ民主的な中小企業の救世主になりうるのもまた、次の世代であることには違いないでしょう。

  • 経営のピンチを救うパワーが自分にはある!

  • 改革のリーダーシップを発揮して絶対役員に出世し、ゆくゆくは社長になりたい!

こういう頼もしい志のある若者であるなら、非オーナー型で民主的な会社への就職はおすすめできるかもしれません。

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