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【雑記】唐津旅行(2)

海岸まで出ると、息子が左方を指さす。
「ほら、唐津城が見えるよ」
息子の指さしたほうを見ると、たしかに小さく唐津城が見える。

見渡すと、たしかに8kmはあろうかと思われるアーチ形の松原がある。
福岡県宗像市に「さつき松原」という松原がある。玄界国定公園の一環として神湊から鐘崎まで続いている。
我が家からは比較的近いので、ここへは家族で何度も行った。全国白砂青松100選にも選ばれているらしい。
「虹の松原を見ると、さつき松原が小さく感じるね」
息子が言うが、さつき松原だって5.5kmの長さがある。本当にその違いがわかっているのかどうかは怪しいものだ。

なぜか息子は桜貝を集めまくっていた。
「あ、ここにも桜貝があるよ。すごいね、この海岸。さすが」
あんまり松原とは関係ないと思うが、やたらと感心する息子。

帰りに松原を歩いて帰ったのだが、やはり海岸にいたときより、明らかに温度が低い。
「なんでここ、こんなにひんやりしてるんだろうね」
「木が水分を大気中に蒸発させてるからだよ。だから気化熱によって寒くなる。蒸散って習ってるよね。君ちゃんと勉強してる?」
「してるよ」
「実生活に役立てなきゃ、勉強する意味がないからね。わかってる?」
「ちぇっ、わかってるよ」

あたり一面の松林を歩きながら、息子が興奮気味に言う。
「さすが日本三大松原だね。ねえ、虹の松原って、日本三大松原なんだよ」
「知ってるよ。君から耳にタコができるくらい聞かされたって。だから君は今回ここに来たかったんでしょ」
息子が挑戦的な目をした。
「ふうん、じゃあ、三大松原を全部言える? 耳にタコができたんでしょ」
「は、は、言えるさ」
「なら、言ってみてよ」
「えっと……虹の松原でしょ。で、三保松原。あとは……」
あれ? 思い出せない。なんだったっけ?
松島? アホか。それは日本三景。松がつくからって全然違うでしょ。
いかん。このあいだ行った日田天ケ瀬の松原ダムが頭から離れなくなった。あれ、たしか梅林湖とも言ってたよな。
「ええっと……」
「あれえ、言えないの?」
息子がしらじらしく意外そうに声をあげた。
「ま、まさか、さつき松原じゃないよね?」
「違うに決まってんじゃん。気比の松原だよ。福井県敦賀市にある。やっぱ知らないんじゃん」
「いや、知らないんじゃなくて、度忘れしたんだよ。度忘れ」
「それを世間では『知らない』って言うんだよ」
息子が勝ち誇ったように言い放った。

蒸散のところでつまらない言いがかりをつけたため、息子に逆マウンティングされてしまった。
これからはやつも受験勉強で知恵つけてくるから、油断しないようにしないといけない。


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中学受験 将棋 ミステリー 小説 赤星香一郎
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