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【雑記】唐津旅行(3)
唐津城に着き、車を停めると、城の反対側に風情のある橋がかかっている。
息子が橋まで走っていった。
「お父さん、この橋『じょうのうちばし』って言うんだってよ。名前までカッコいい」
近寄って看板を見ると、「城内橋」と書いてある。
「これ『じょうないばし』って読むんじゃないの?」
「あ、そうなの?」
「『じょうのうち』なら城と内のあいだに之(し)が入ってるでしょ」
「『し』ってなに?」
「芥川龍之介の字だよ。ひらがなの『え』に似たやつ」
「ああ、あれね」
橋を渡って看板を見ると、今度はひらがなで「じょうないばし」と書いてあった。
「あ、本当だ」
「君が『じょうのうち』なんて言うから、おニャン子クラブの城之内早苗を思い出したよ」
「なにそれ?」
「いや、君は知らなくてもいいんだけどね」
怪訝そうな表情をしている息子を尻目に唐津城のほうへと歩いた。
「ねえ、見て!」
唐津城の階段の前に来たとき、息子が叫んだ。
見ると、公衆電話の中に猫が二匹いる。
これ、電話しようと中に入った人はどうなるんだろうか。猫好きの私は邪魔したら可哀想だから、電話できないかもしれない。
「メチャメチャ可愛いじゃん」
昔猫を飼ったことがあり、猫の扱いのうまい妻が、指を猫の目の前で早く動かしたりゆっくり動かしたりした。たちまち猫が興味深そうな表情で妻の指先を見つめる。
「ボクもやる」
しかし指の動かし方が下手なので、猫は乗ってこない。イマイチ修行が足りませんな。
「にゃう」
別の方角から鳴き声がしたので振り向くと、別の猫が足元にまとわりついてきた。私の足にすりすりしてきて、妙になついてくる。どうも私は猫に好かれる性質の気がする。実家の近くの黒猫も私を見たら、必ず近づいてくる。
「ここ猫のいる城で有名なのかな? 猫城みたいな」
息子が呟く。
ふと、お隣の佐賀藩では、化け猫騒動があったことを思い出した。あちらは外様、こちらは譜代。
階段を上ろうとして隣を見ると、学校があった。
「ここ、早稲田佐賀みたいだよ」
おー、ここにあるのか。早稲田佐賀よ。いいところにあるねえ。でもなぜかひっそりとしているね。休みだからかな。
あとで知ったのだが、その日は入学試験の日だったらしい。そりゃ静かですよね。
ん? でも大隈重信って佐賀藩士だよね。ここは唐津じゃん。
なんでここに早稲田なの?
息子に聞かれて馬鹿にされないように、こっそりと調べた。
1.第2代学長天野為之が唐津市出身。
2.海に面し、優れた自然環境にある。
3.福岡市から地下鉄・JRで約1時間の位置にあり、利便性が高い。
4.九州全域から生徒が集まるよう、寮の整備も検討されている。
5.早稲田大学が理工科の開設で苦労している時に助けたのが、唐津にゆかりのある竹内明太郎だった。
今度息子に講釈垂れてやろうっと。
人が多いなら引き返そうと思っていたが、すれ違う観光客もまばらだったので、城の中に入ることにした。
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