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第6話 虐待の話

学校のイジメから逃げ帰った先が安住の地とはいかなかった。
9歳の私にとって最も地獄だったのは家の中だった。

母はもともと厳しい人だった。

私が5~6歳の頃、飲み込み方に苦戦してほうれん草を頬張っていると、母は私の頬を片手で掴んで持ち上げ「飲み込めー‼︎」と怒鳴った。
持ち上げられて筒状になった喉の中をほうれん草が重力によって下ると、噛み切れていない繊維が喉を圧迫してほうれん草を口内へと押し戻し、そしてまた下ろうとする、また吐き出す…嗚咽を何度も繰り返した。
必死に”躾られた”ほうれん草の特訓だったが、現在も火の通ったほうれん草は飲み込めない。

そんな母は、祖父母と離れ、引っ越しをしたことで覚醒した。
躾が厳しくなり、価値観の押し付けが露骨になり、気付けば虐待になっていた。

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