第10話　家出の話〜後編〜

家出とは、所謂いわゆる”いけないこと”抜きで語れない。
空腹を凌しのぐために万引きをするように、何かと”いけないこと”をしていた。
仲間とつるむ以上、移動手段は自転車か原付に限るので、当然盗んだバイクは欠かせない。
煙草も切らすわけにはいかないし、喉も渇くしシャワーも浴びたい、金もいる。

かつて虐待の飢えを凌ぐために覚えた万引きが、家出で活きる。

今でこそ考えられないが、当時は盗めない物などないと思わせる程に世間の防犯レベルは低かった、簡単だった。

毎日”朝あさパン”で始まる。
先輩か誰かに教わったのだろうか覚えていないが、それは”朝あさパン”と呼ばれていた。
白んでくる早朝、早起き者が目を擦っている頃合い、カラスの鳴き声と共にスーパーの裏口は開ひらかれる。
尻けつから綺麗に駐車されたトラック、運び出される大量のパン、人気ひとけのない駐車場に運ばれていない大量のパン！
これらを頂戴するところから朝は始まるのだ。