異国で見た色。
恥ずかしながら「心細し」を「こころぼそし」と読んでいた。
読み方とその意味を知り、真っ先に思い浮かんだのは、2012年の秋、カナダで出会った風景だ。
異国の地での旅は不安がつきもの。
その日も、iPhoneに保存したはずの乗車用チケットがうまく表示されず、トロント行きの列車に乗れなくなるかもしれないという失敗を犯している。
そんな朝5時、「心細さ」と共に乗り込んだ私を迎え入れてくれたのは、夜明けとともに色付いてくる世界だった。
森林と耕地を交互に抜ける列車。
朝焼けの淡い橙。
赤茶けた牧草。
紅葉の朱色や黄色。
湖と空の青。
草原の緑。
そして雲の白。
車窓からの景色全部が綺麗で仕方ない。
きっともう、この瞬間は二度と訪れない。
でも、今感じている思いをまた引き出せるきっかけが欲しい。
夢中でシャッターを切った。
下手くそな写真だが、この色を見る度、あのとき心を撫でていった「うらぐわしさ」が蘇る。