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生命力を感じた|スクラップ・アンド・ビルド【読書感想】

羽田圭介さんの「スクラップ・アンド・ビルド」を読み終えました。

「早う死にたか」
毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、
ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。
日々の筋トレ、転職活動。
肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して……。
閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!

あらすじより

仕事を辞めてモラトリアム中の主人公健斗が、再就職するまで
実家で祖父の介護をしながら自己研鑽に励んだりするお話です。
ずっと気になっていたのですがやっと読めました。

祖父母と同居していた経験があるわたしにとって、介護は身近な存在でした。
共感できたり、できなかったり。
わたしの祖父も「わしなんかもう死んだらいいと思ってるんやろ」
とか言ってくる厄介なタイプのおじいさんでした。
介護に対しては正直ネガティブな記憶ばかりなので
まっすぐにおじいさんのことを迷惑がっている、
健斗の母親の気持ちが一番よくわかるような気がします。
口が悪すぎて笑えるけど、素直なだけですよね。
健斗は少し捻くれていて、死にたいとぼやくおじいさんの気持ちを汲み取り、
苦しみなく死に近づけてあげようという使命を持ちます。
その方法は、過剰な介護で身体機能や脳機能を弱らせていくということ。
面白い発想だなあと思いました。
一方で、介護に向き合い
「使わない能力は衰える」という信念を持った健斗は
どんどんストイックに自分を鍛えていきます。
勉強、筋トレ、就活…などなど。
きっかけはなんであれ、人がポジティブに変わっていく姿は爽快でした。

終盤の
「自分より弱い肉体が、そばにない」
という一文が、一番印象的でした。
健斗は自分より弱い存在(祖父)と自分を比較して、圧倒的な強さに自信を持っていました。
だから離れると心許ない。周りに弱そうな存在を探してしまう。
弱々しいはずの祖父は祖父で、自分が強く出られる存在(息子)に対しては強気の発言をします。
人間の嫌な部分が出てるなあとも思うし、少し共感できることも嫌だ…と思ってしまいました。

強さはフィジカルだけでなくメンタルにも現れる。
弱い肉体が見つからなくても、勉強、筋トレ、就活などで鍛えたメンタルは、
強さとなって自分を支えてくれるでしょう。誰だってそうだと思います。

自分もそんな形で自信をつけたいと思ったし、どことなく希望を感じるお話でした。


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