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日本の航空技術を革新した一番鳥。その名は「隼」

前回の投稿で飛行機プラモの話題に触れましたが、その勢いのまま、回顧モードで紹介してみようと思います。といっても、現物は薄汚れて目も当てられない有り様なので、過去に撮影した写真を、ちょっとアートな感じに加工して使っていこうと思います。今回は太平洋戦争時、帝国陸軍のフラッグシップ的存在だった一式戦闘機「隼(ハヤブサ)」のバリエーションです。


◉最初に手に取ったアリイ版

夕暮れの空をパソコン画面に表示させてさくっと撮影しています

前回投稿で紹介した飛行機プラモの世界に僕を誘ってくれたキット。アリイさんの「1/72 中島キ-43-Ⅰ 一式戦闘機"隼"一型甲」です。前述したように、あちこちが可動しまくりの、まさに"動かして遊ぶ"キットで、そのうちフラップやラダーがゆるゆるになってプラ~ンとなってしまったんじゃないでしょうか(それ以前にいろんなところがポキポキ折れたり取れたりしそう)。僕は飾る様用に可動部分を固定して作りました。前方の支柱から尾翼にかけて張られているのは通信用のアンテナ線ですが、特殊なテグスを使って自作しています。キットにないものを使った改造部分はそれくらい。

マーキングは、「加藤隼戦闘隊」として名を馳せた飛行第64戦隊隊長の加藤健夫中佐機のものです。一番最初に「隼」が配備された部隊のひとつが加藤隊で、彼らによって「隼」のポテンシャルは引き出されてゆくのでした。最初は酷く過小評価されていたんです「隼」くん。

陸軍機が好きな理由のひとつに、パイロットや隊ごとに個性溢れるマーキングをしているからというのがあります。シャアをはじめ、ジオン軍の手練れがそれぞれ専用カラーやマークを機体にまとっているのを彷彿とさせます。一方の海軍はそういう遊び心が許されなかったようでめちゃくちゃ地味。同じ国の軍隊でも、そういう部分に隊の思想や理念の違いが現れていることを知りました。加藤隊長機もそうですが、鋭い矢印を好んで使う人が多い印象です。キットには同じ第64戦隊の第2中隊機のデカールも付属していて、そちらは尾翼の矢印が白フチどりの赤になっています。前回も書きましたが、肝心の塗装のほうは慣れないチッピング(塗装の剥がれを表現する技法)が下手すぎて、見た目のオモチャ感がマシマシになってしまいました。

◉とにかく「隼」を極めてやろうと思って・・・

見た目は大きく変わっていませんが旧型(甲型)から15%もパワーアップした機体です

実はここから怒涛の「隼」製作キャンペーンに突入した僕。飛行機キットのおおまかなパーツ構成や組み立て手順を理解したかったので、それならまずは何回も繰り返して覚えようと思ったわけです。幸い「隼」は形式違いのバリエーションが売れていたり、複数のメーカーが販売しているのでちょうど良かったんですよね。

同じアリイが販売する「1/72 中島キ-43-Ⅱ 一式戦闘機"隼"二型乙」は、上記の<一型甲>と比べると搭載エンジンの馬力が約200馬力アップ。それに伴い、プロペラの羽も2枚から3枚になり、主翼の長さもちょっぴり延長されています。武装もパワーアップして、結果的にこのタイプが一番沢山生産されたんだとか。大戦中、日本の空を守った機体ですね。零戦が敵陣へ向かうオフェンサーだとしたら、隼は敵の攻撃を迎え撃つ頼もしきディフェンサーだったという感じでしょうか。

マーキングは飛行第25戦隊・坂川敏雄少佐機のもの。説明書に「(デカールの)ストライプは、写真等で確認できますが、色等不明な点が多い為、とりあえずこのようにしておきました。」と書いてありました。当時は戦場写真なども基本的にモノクロなので、なかなか決定的な資料が無いんでしょうね。先ほどの文章に続けて「このストライプに関しまして、御存知の方が見えましたら、当社までお知らせ頂きますと幸いです。」という一文も、なんか昭和の大らかな感じがあって好きです(笑) ストライプの真相はともかく、尾翼の「00」の文字が某アニメの「俺がダンダムだ!」の人みたいでカッコいいです♪

◉日本の飛行機プラモの雄、ハセガワの「隼」

個人的には飛行機ってこのアングルが一番好きかもしれません

3機目の「隼」は、日本の飛行機系プラモでは圧倒的な歴史とラインナップを誇るハセガワのキットをチョイス。「中島キ-43 一式戦闘機"隼"二型」は1982年(昭和57年)に発売開始された古株ですが、クオリティはさすがの仕上がりで、とても作りやすいキットです。「これから飛行機プラモやってみようかな」という人にはお薦めしたいですね。飛行機の面白さと難しさを両方ちゃんと学べると思います。

パーツ構成の大きな違いは、当然ながらフラップやラダー、キャノピーは固定されていること。また、簡素ではありますがコクピット内部パーツもあって操縦桿や計器盤などが再現されています。座席もアリイ版はパイロットと一体成型ですが、こちらは別パーツ。ただし、ハセガワのほうはパイロットフィギュアは付属していません。このあたりで好き嫌いが分かれそうですね。あと主脚部分が支柱とカバー部分が別パーツになっているので、塗装のしやすさではハセガワ、組立てのEASYさではアリイに軍配が上がりそうです。

塗装プランはアリイ版とは異なり、飛行第50戦隊・第3中隊の自称「白色電光戦闘穴吹」こと穴吹智軍曹機と、飛行第59戦隊・第3中隊の広畑富男曹長機の2パターンが用意されています。僕はシンプルに最初に紹介されていた穴吹機を選びました。難しかったのは上面全体に施されている斑模様の迷彩塗装。ニューギニア戦線での使用機なので、ジャングルの上を飛行したり、駐機する際にこうした迷彩が効果的だったのでしょう。エアブラシのような高価な機器は持っていないので、筆の先でポンポンと叩くようにして塗りました。塗料の量や筆を叩きつける加減など、なかなか緊張しながら塗った記憶がありますね。穴吹機のマーキングは、二つ名にちなんで曹長自身が考えて描いたという白い稲妻が自己主張全開でカッコいいです(笑) 尾翼下には「吹雪」と書かれていますが、これは穴吹曹長が愛機に付けた名前。その後、乗り換えた機体には妻・君子さんの名前を取って「君風」にしたそうで、穴吹曹長ってホントにヒーロー漫画の主人公みたいです。同じ型番でも塗装やマーキングが変わるだけで全く違う魅力を発するので面白いですよね。

◉哀しいまでに美しい新技術の結晶、それが戦闘機

パネルごとに色を微妙に変えることで小さくても存在感がアップするんです

最後の「隼」はフジミ模型から出ているキットです。フジミも飛行機プラモデルを頑張っているメーカーですね。こちらはアリイと同じ「中島キ-43-Ⅰ 一式戦闘機"隼"」になります。パワーアップ前のやつですね。

パーツ構成はほぼハセガワと同じですが、カウリング上部の機関砲口の部分と、排気管が別パーツになっていて、立体感がさらに向上していますね。

フジミバージョンは写真でもわかるように、銀ピカボディ(アルクラッド処理:ジュラルミンにアルミ箔コーティングしたもの)に映える、赤い稲妻マーキングのデカールが用意されているのが一番の売りかもしれません。これは中国の飛行第59戦隊・第1中隊のもの。加藤隊と同時期に「隼」を最も早く受領した時の、初期の初期のビジュアルだと言われています。シャープな稲妻ラインが、無駄のない凛とした強さを漂わせていると思うのは僕だけでしょうか? 個人的には4機の中で一番好きなカラーリングです。塗装も銀色一色でのっぺりと塗るのではなく、パネルモールドごとに3~4色の銀色で塗り分けをしましたし、フラップやラダー部分は帆布っぽい色に。

というわけで、4種4様の「隼」を見ていただきました。どれも1/72スケールと箱画や組立て説明書には書いてあるのですが、実はアリイ版だけはもともと1/75スケールとして製造・販売されていたことが解っています。とはいえ、このくらいのサイズになればそれも誤差の範囲と言えるレベルなので、並べてみても違和感はありません。

今手元にある完成品は捨ててしまうと思いますが、「もう一度買って作ってもいいかな?」と思わせてくれる美しい機体です。しかし、これを設計した技術者・小山悌(やすし)氏は、戦後、二度と航空機はもちろん、自動車などの設計を行うことはありませんでした。戦前の日本航空機産業を牽引してきた人物でありながら、零戦を設計した堀越二郎氏らとは違い表舞台には姿を現さなかったそうです。

戦後、彼はこんな言葉を遺しています。

われわれの設計した飛行機で、亡くなった方もたくさんあることを思うと、いまさらキ27がよかったとかキ84がどうだったと書く気にはなりません。

「不滅の戦闘機 疾風 日本陸軍の最強戦闘機物語」鈴木五郎・著より

その言葉からは、優秀な航空機が兵器として使われたことへの後悔を感じます。たまに、こうした戦闘機のデザインやテクノロジーについて賛美すると戦争肯定派のように言ってくる人もいたりしますが、それはそれ、これはこれなんじゃないの?と僕は考えていますが・・・。

ご紹介したキットはハセガワからはまだラインナップにあるようですが、それ以外は廃盤品になっている可能性が高そうです。デッドストックを探せばまだ入手できそうなものはあると思います。

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