【JMS#14】世界最古のダイキャストミニカー、シカゴより来る
ヤフオクで「まとめて500円」で出品されていたヴィンテージ・ジャンク・ミニカーに猛烈に惹かれて、どうせまた凄い値段になるのだろうと思いつつポチっていたら、知らぬ間に500円で落札してしまっていました。
◉愛娘の名を与えられたミニカーたち
「TOOTSIETOY」(正確な発音が不明ですが「トッツィートイ」で統一しておきます)というブランドも全く知らなかったので、少し調べてみました。もともとは1890年代に設立された2つのダイキャスト鋳造会社が始まりで、1910年頃に「ダウスト・ブラザーズ」という会社に統合され、1927年から「トッツィートイ」の名のもとにダイキャスト・ミニカーなどの製造販売を本格的にスタートさせたようです。「トッツィー」というのは創業者の孫娘の名前からとられているのだそうです。
前身の会社で最初のミニカーが製造されたのが1909~1911年の間ということで<世界最古のダイキャストミニカーメーカー>の称号を戴いているダウスト社。今回入手した素朴なミニカーたちも、1960年代終わりから1970年代の間に製造・販売されたものかと思われます。ジャンクとはいえ、そんな昔のミニカーが500円で手に入ってしまうとは♪
TOOTSIETOY MIDGETS 「1939 MERCEDES」(1968~1979)
おそらくは「ベンツ320」あたりをモデルにしているキャストで、最初からヘッドライトやミラーなどの飛び出る部分はオミットされています。なぜか左側の前後フェンダー部分に切り欠きがあります。なにか加工しようとしたのか劣化で破断したのか不明ですが・・・。
最古というだけあって本当にシンプルな構造になっていて、それは裏面を見れば一目瞭然。
のちに「MIDGETS」という名称で呼ばれるようになる2.5インチサイズ(6㎝ちょっと)のラインナップはすべてこんな造りになっています。
TOOTSIETOY MIDGETS 「CHEETAH」(1968~1979)
1963年にビル・トーマス氏によって設計・開発されたシボレーのレースカー「チーター」がベースのキャスト。フロントには「18」のゼッケンもモールドされています。実車はシェルビー・コブラのライバルとしてコルベットベースで開発されたのですが、結果を出せない残念な車でした。
MIDGETSのラインナップはカラーバリエーションも豊富で、塗分けなどはないものの、柔らかいトーンの色合いがヴィンテージトイっぽさを感じさせてくれます。
TOOTSIETOY MIDGETS「FORD G.T.」(1968~1979)
ボディの裏側に「FORD G.T.」の刻印がありますが、ベースになっているのは「FORD GT "J"」、通称"Jカー"と呼ばれ、9台のみ製造されたテスト車両のようです(厳密には2世代目の"J-2")。ロータス・ヨーロッパのような背面のシルエットが無骨で、いかにもテスト車両的。実車にはフロントノーズに、グリルへの切り欠き部分がありますが、これはそこまで再現されていないですね。
実車は1966年8月、テスト中のトラブルにより炎上大破。乗っていたドライバー、ケン・マイルズも死亡しています。このキャストがいつ頃発売されたものか正確にはわからないですが、少なくとも事故後には違いなく、そういう意味では希少で、実際Jカーをラインナップしたメーカーは少ないです。ちなみにホットウィールでは初期ラインナップからGT Jがあったようで、実際に手に入れた方のレポがこちらにあります。
TOOTSIETOY MIDGETS 「TORONADO」(1968~1979)
GM社の「オールズモビル・トロネード」がモデルのキャストも、なかなか珍しい気がします。3インチクラスの界隈では見かけたことがないかも。初期型の特徴である、リトラクタブルヘッドライト採用のシャープなフロントマスクがカッコいいですね。キャストではフロント左右に張り出したグリル形状までは再現していません。こういう形、めちゃくちゃ好きなのですが、現在では安全基準満たさなくって実現できないでしょうね・・・。
改めて調べてわかりましたが「トロネード」って特に意味はない名前らしいです。てっきり「トルネード」のラテン読みとかかと思ってました。
TOOTSIETOY MIDGETS 「VOLKSWAGEN BEETLE」(1968~1979)
誰が見てもわかるこのカタチ。そのせいでもあるのか、車名の刻印が見当たらないキャストです。あらためて調べると「タイプ1」としてこの世に誕生したのが1938年というから、このキャストが出た段階ですでに30年のロングセラーってことですね。すごすぎます💦 そのすぐ1年後に、これを作らせたヒトラーが戦争をおっぱじめてしまいますが、それでも生き残りつづけた名車です。
ちなみに戦時中は、この「ダウスト・ブラザーズ」をはじめとしたダイキャストメーカーは、その工場ラインをすべて軍事転用せざるを得ず、ダイキャスト商品の製造はできず、紙のおもちゃなどを作っていたそうです。
TOOTSIETOY MIDGETS 「PANEL TRUCK」(1968~1979)
最後を飾るのはフォードの「ブロンコ」をモデルにしたキャスト。角トンガリまくりのソリッドなフォルムが僕好みの1台です。真っ赤なペイントが郵便車か消防車にも見えますね。ザ・アメリカ!なブロンコは、ワイルドな大地を縦横無尽に走れる男子憧れのクルマなんじゃないでしょうか。
ということで、今回ワンコインでゲットした5車種を紹介してみました。どれもこれも塗装のハゲが際立っていて、時間の経過を感じさせるジャンクではありますが、これもまた味わい。イリノイ州の工場で生まれて、今、日本の田舎の町まで辿り着いたってことですねー。しみじみ。ようこそ。
実は今回入手したのは7台セットだったのですが「フォードG.T.」と「ブロンコ」は2台ずつ入っていたんです。紹介したのは程度のいいほうのキャストです。2台目はこの際、さくっとリペイントしてみちゃおうかなと思ったりしています。
とても単純な構造で、シャシーもインテリアパーツも窓もない、世界でもっとも古いダイキャストミニカー。昔の子供たちはこういうクオリティのミニカーでも十分に楽しんでいたんでしょうね。きっと、現代の子供たちよりもイマジネーションの力は高かったんだろうと思います。