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私のうつ病は。③

 何度か経験しているものの、うつ病が重かった頃のことを思い出して書き出すことは、追体験することなので、一時的でも気分が悪くなる。私さえいなくなればいいんでしょ!という気持ちにもなる。私自身は長い投薬治療でなんとか家事は出来ていると思う。毎日きっちりとは出来なくてもシンクに汚れたお皿や鍋を山積みにしたり、汚部屋にしたままなんてことはなくなった。今は可愛い黒猫さん、リズちゃんとつばさくんが居るので、自然と掃除は必要になってくるので良かった。

 前回の②を書き終わった後は...。一時的にひどく落ち込み、ここから逃げるために昔からの知人が住む、築60年の中古マンションが200万で売りに出されているのが買えたら、生まれ育った明石市に帰ると血迷ったことを口走る。
私の状態が良くなって来たのは住むところの環境が変わっただけで、実は親も兄弟もだれも何も理解していないままなので、また追い込まれるような事態になると悪化してしまう。根本的なことは何も解決していないからだ。

 娘が小学6年生になる頃に離婚問題が噴き上がった。
「出て行け!」という台詞は何百回、何千回と吐かれた。離婚して出て行くことは、一つの選択肢としては家族にとっては良いのかもしれないな、どこに出て行く?実家か、すぐ近くにあるアパートに住んで、娘の様子を見守りながらやって行こうか?と迷う。あるいは娘は夫に任せて、私一人どこかでひっそり生きていくのが良いのかもしれない。しかしどうしても娘から離れるということは考えられなかった。うつ病にも理解がないのに、娘の目に見えない障がいについてはさらに理解してもらえていなかった。
夫の家族、私の家族ほぼ全員、「見た目も普通だし、読み書きや会話もおかしくないじゃないか」と言ってくる。自閉症の特徴や性質は目に見えないことが大前提にある。その上、それは個人差が大きいのだ。
これからその先がずっといろいろあって、周囲が無理解のままだと本人が一番苦しんでしまうのだ。特に小学校では途中から特別支援学級に編入しており、娘本人も幼稚園からずっと一緒だった同級生も、その変化にそれぞれ違和感やら、これまでの娘の行動に対して合点がいったと考えてくれたこともあったと思うけれど、やはり子どもは純粋にして残酷な面がある。同級生の何気ないひとことでも、いたたまれない気持ちになる。

 5年生の時の、夏休みのプール開放も、当番の日に娘の様子がわかってショックを受けた。水着に着替えて、プールサイドに出て来た娘の表情が今でも忘れられない。

「一人になるのが怖い」

娘はそう言った。
この日を限りに夏休みのプールには行かせるのをやめた。
ウチの子と仲良くしてください、そう思って子どもたちに接していた。ずっと前から。私に話しかけるよりも娘に...。お願い...。

 一年生の頃からプール当番の日には様子は見て来た。クラスで面倒見が良い男の子や女の子がいたし、プールで泳ぐことそのものが良くて抵抗はなかったようだったけれど、娘の精神年齢には問題はなかったので成長していく。それで、なぜ自分が一人になってしまうのか、と気づき始めたのだ。こんな状態で母親がいなくなったら、この先どうなる?いや、うつの母親だから余計、その家族から離れろ、と言われることもあった。私は離婚したくないのに、部外者が離婚だ!いや離婚は考え直せと言って来る。
うるさいんだよ、あなたたちは当事者じゃない。黙れ。

 娘が小学6年生の時の、交流学校の担任が黒いLEXUSに乗って、私に会って説得しに来た。

「お母さん、お辛いでしょうが離婚は考え直して下さい。このままでは◯◯ちゃんが困ってしまいます。おうちでのサポートも重要なんです。離婚は踏み止まって下さい!」

はぁ。なんでこの人、うちの内情知ってるんだろう?しかも離婚離婚と言っているのは私ではない。夫だ。田舎の情報網は恐ろしい。なんで知ったのかと思ったけれど、どうでも良かった。なんとでも言え。

「そんなこと言うなら夫に言って下さい。私は離婚を言い渡されている方なんです。」

担任は夫にも直談判したかどうかは知らない。多分行っていない。

 発達障がいは、本当は誰にでも当てはまる特質も多くある。
自閉症スペクトラムの、スペクトラムとは、光学や物理学で使われる用語で、境界線や範囲が明確ではない状態が連続しているさまを表すとのこと。
人類という大きな括りで、それを大きな輪で囲んで境界を作るとすると、輪の中や外に、夜の星空のように点在しているもので、どこかに塊があって、発達障がいの集まりが別世界に置かれているわけではないのだ。精神年齢の成長もちゃんとある。
何を言っても通じてないんじゃないかというのは大間違いなのだ。悪意も善意もちゃんとわかるんだ。完璧な人なんかいない。自分は完璧だと思っている人がいるだけで。

 日本人は差別が好きなのだ。

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