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童話 グロッタの洞窟探検

洞窟がある。中はすぐ暗闇になっていて一寸先も見えない。

この村の長老が指名すると、指名された人物は問答無用で洞窟に入らなければならない風習がある。中に何が待っているかも分からない暗闇に足を運ぶのはとても勇気がいることだ。だから、指名された人物が洞窟へ向かう日、村の衆は皆揃って見送りをする。十分な装備を持たせて、向こうでも不自由なく暮らせるようにと。

洞窟の入口付近にはいつもある程度の人がいる。
いけよいけよと押しつけ合う人たち、
勇敢に何の装備もなくただ一人入口に向かう人、
それを必死に止める人、泣きすがる人、

彼らは入口に集まって議論を始める。この奥には何があるのか。
「猛獣がいるかもしれない」
「出口があって、花の楽園に繋がっているかもしれない」
「なにもない洞窟だけがただひたすら続いてるかもしれない」
憶測は加速してゆく。そのうち、話題が広がってゆく
「幸せとはなんだ」
「この村にいる間にしっかり準備して向こうで快適に暮らすことだ」
「違う、この村にいる間にどれだけ作物を残せるかだ」
「それじゃ向こうに行ったとき意味無いじゃないか」
「でもどうせ向こうに行くなら村にいる意味が無いじゃないか」
「そもそも向こうに行って安全かも分からないんだったら村で快適に暮らしてた方がいい」
「何の議論なんだ」
「そもそもこの風習がおかしいんだ」
「いや、この風習は絶対だ、変えられるはずがない」
「じゃあ向こうに行くまでいかに自分らしく暮らすかだな」
「いやいや、向こうに怪物がいてどうせ食われるなら一緒じゃないか」

白熱する議論の中、男が一人、ふらっと歩いて来る。

「おおちょうどよかった、そこのおまえさん、ちょっと知恵を貸して欲しいんだが..」

男は静かに笑った。

「中に入りもしないのに、何も分かるわけ無いじゃん」
そういって男はすたすたと闇の奥へ消えていった。

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リズムの書き遺し
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