第11回 発達障害と夜尿症 ①

こんにちは。外科医ちっちです。自閉スペクトラムの診断を受けた長女いっち、長男にっちと、幼稚園不登園を経験した次男さんちの子育ての発信をしています。今回は、長男にっちの夜尿症に関しての話です。にっちは、昼間のオムツは1歳半ごろに卒業しましたが、夜のおねしょは2歳、3歳、4歳…現在10歳ですが、いまだに卒業できません。そこで、どんな状態が夜尿症と診断されるのか、わが子の夜尿症治療にたどり着くまでについてお伝えします。

おねしょがいつまでも続く「夜尿症」の定義は?

日本泌尿器科学会の定義で、夜尿症は「5歳以上で1か月に1回以上の頻度で夜間睡眠中の尿失禁を認めるものが3か月以上つづくもの」です。簡単に言うと、「5歳以上でおねしょが月に1度以上ある場合」です。
あまり世間話の話題にはのぼらないので少ないと思われがちですが、小学1年生(7歳)の場合、10人に1人は夜尿症です。親の育て方や子どもの努力不足ではありません。ほとんどは膀胱の働きや、夜の尿量が多いことが問題です。
また、自閉症児の16~75%に夜尿症が見られるという報告もあります。
うちの自閉症の長男の場合、おねしょは、ほぼ毎日。しかも、一晩でだいたい、2回。多い時には3回のおねしょがありました。
さらに、おしっこで起きない割に、布団が冷たいことは感じているようで、毎夜おねしょをしては、濡れていないエリアに転がっていき、さらに次のおねしょをするという状態です。ひどい時には、敷布団3枚、毛布2枚を翌朝洗ったこともあります。匂いのしみついた布団を毎日洗うことは、精神的に辛いものがあります。



そのうち治ると思ってしまい、泌尿器科の夜尿症外来を探して受診するのは遅くなりがちです。我が家でも長男が初めて夜尿症外来を受診することになったのは、小学2年の秋でした。

睡眠や膀胱機能、ストレスなどが夜尿症の原因に

夜尿症の原因は主に3つあります。

夜尿症の原因(1) 睡眠から目覚める能力が未熟

夜尿は主にノンレム睡眠の時に起こります。夜尿症の子どもは、睡眠が浅く質が悪いのに、起こしても覚醒しにくい特徴があります。一種の睡眠障害です。

夜尿症の原因(2) 膀胱に尿をためておく能力が未熟

膀胱の容量の目安は、25×(年齢+2)mlです。たとえば7歳ならば225mlですね(25×(7+2)ml)。睡眠中にこれ以上の尿が作られると、耐えきれず排出されます。

夜尿症の原因(3) 夜に作る尿が多い

6~9歳で一晩に200ml以上、10歳以降では一晩に250ml以上作られれば多尿です。
このような体のしくみが1つ、あるいは複数関与することで夜尿(おねしょ)という結果になります。また、発達の遅れや遺伝も影響します。両親のどちらかが幼いころ夜尿であれば、5~7倍、両親どちらもが夜尿だった場合、11倍夜尿になりやすいという報告があります。
一度夜尿が治ったのに(6か月以上)また始まった場合は、ストレスなどの精神的な原因が考えられます。

おねしょの相談は何科? いつ受診すべき?

おねしょがなかなか治らない、その時の受診先は小児科もしくは泌尿器科です。一部の病院には、子どもの夜尿症外来があります。夜尿症の専門家は少なく、大学病院などの大きな病院が多いのです。
「もう少し大きくなって治らなかったら、受診しよう」とは思うものの、「では、実際にいつ受診するか?」が決めづらいのが夜尿症です。
受診の推奨時期は小学校入学後。こういった急を要さない受診は、夏休みや冬休み中は込み合うものです。学校を休んでも差し支えなければ平日でもいいのですが、学校を欠席させたくない場合は、早めに夏休み・冬休みの予約を取ることをおすすめします。
受診するにあたって、かかりつけの小児科医に状況を話し、紹介状を書いてもらいましょう。

夜尿症の診察までの流れと、検査の内容

実際に病院を受診するまでの流れと検査内容についてまとめました。

受診の流れ

(1)かかりつけの小児科で、おねしょが治らないことを相談
(2)小児科で夜尿症外来への紹介状を書いてもらい、予約を取ってもらう
(3)大学病院の夜尿症外来(泌尿器科)を受診
(4)検査・観察

検査の流れ

  • エコー検査で排尿後の膀胱に尿が残っているかどうかを確認する。(膀胱の機能検査)

  • 外来で渡された尿用の計量カップで、1日のおしっこの回数と量を測って記録する。(期間は1週間~1か月程度。排尿回数、パターンを把握)

  • 尿検査で糖尿病や腎臓の疾患がないか確認する。

自閉スペクトラム症児は、先の見通しが立つと安心できるので、事前にこのような痛くない検査をすることを伝えておくといいでしょう。

受診を焦る必要はなし。ただ気になることがあれば早めに

私が長男にっちと一緒に夜尿症外来を訪れた時、担当医に言われたアドバイスは以下の2つでした。

  • 他の病気と違い「早期発見・早期治療」となりにくいので、焦らなくてよい。

  • 1つの目安は「トイレの存在や必要性を理解した上で、昼にオムツを外せたかどうか?」。昼にも我慢しづらい子は、膀胱の機能や、尿の濃縮能の検査を早めにしたいので、気になったら受診をして欲しい。

実際に、我が家も少し遅めの受診になってしまいました。前項にもある通り、受診して調べる段階で痛い検査をする可能性は少ないので、「気になった時点で、一度相談すればよかった」と反省しています。
次回は、実際の診察と治療に関して、その後10歳になった長男のおねしょはどうなったのか、具体的にお伝えします。

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