子どもの自殺について
夏休みも終盤戦、都道府県によってはもう終わっている時期ですね。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
子どもの自殺って夏休み明けの登校日が一番多いんだという小ネタをよく耳にします。そこで今回は子どもの自殺をテーマにします。
この件についてはさして詳しいわけでもないので、あまり中身もありません。短いです。
言いたいことは、自殺について勝手に脳内でストーリーを組み立てて熱く語るのはやめましょうね。ただそれだけです。デュルケームの『自殺論』なんていう社会学の古典もありますが、自殺を分析するときに情緒によらず「何が言えるのか」にフォーカスして冷静に語ってほしいものです。。
高校生が最も自殺している
まずは2022年度の小中高生の自殺者数を確認してみましょう。(子ども家庭庁の資料より抜粋)
小学生17名、中学生143名、高校生354名
圧倒的に小<中<高ですね。年数だけでいえば小学生が2倍いるはずなので、それも加味すれば尚更です。私が最初にこの統計を知ったときの感情を素直にいうと、「こんな差がつくもんなの!?」っていう驚きです。ちょっと年齢が違うだけで10倍以上になるもんなんだと。自殺は各年代で均等に起こっているのではなく、ある年代で固まって起こっているんですね。
中高生にもなるといろいろ悩むこともあるからでしょうか。何を悩んだのでしょう。自然と、自殺の原因を推測してしまいますよね。
文部科学省が少し前(平成25年)にまとめたところでは、学校生活に関するもので進路12%、不登校10%、学業不振7%、友人関係8%、異性関係6%、教職員の指導3%、いじめ2%。家庭に関するもので保護者との不和10%、離婚7%、貧困5%。個人に関するもので精神科治療歴14%、性格傾向11%、自殺ほのめかし10%、自傷8%、孤立8%、厭世6%(少数第1位を四捨五入、複数回答可)だそうです。
当然ですが、これは自殺者の周囲の人間が勝手に推測してチェックした項目で、実態ではありません。
その上でコメントするなら、めちゃくちゃ散らばっているなと。実際、どれもそれほどのシェアを占めていません。なんともコメントに困る散らばり度合いです。
それもそのはず。
結局のところ、なぜ自殺してしまったのか、家庭の問題か、個人(健康など)の問題か、学校の問題か、複合的なものなのか、よくわからないのです。自殺の原因って遺書でもなければ知りようがないものですから。
子どもの自殺の報道姿勢
ところが、報道はどうでしょう。子どもの自殺で報道されるのはいじめによるものが大半です。それも件数の多い高校生ではなく、小学生や中学生の話題が大半を占めます。報道の量は統計的な事実と大きくずれています。
メディアによる子どもの自殺の報道姿勢は、けっして実態に則したものではありません。メディアの関心は話題を呼ぶか否かでしかないので、ありのままの姿を伝えるのは目的でないからです。
そんな中で、私たちが一番気を付けるべきことはなんでしょう。冒頭で述べた通り、脳内でわかりやすい物語を作らないようにすることです。
いじめを苦にして学校が嫌になり自殺したという物語はわかりやすいですが、実際のケースの大半はわからないわけですから、そのわからないものをそのまま受け入れることです。勝手に解釈のフレームにあてはめるのは、ある種、死者に対する冒涜ではないでしょうか。
自殺はキャッチーであるからこそ取り扱い注意
自殺はセンセーショナルでキャッチーです。今の子どもが不幸であることを証明するかのように、「今の日本って子どもの自殺が多いんですよ」と喧伝することは可能です。説得力を持たせるために、なんらかのそれっぽい統計をくっつけることもできるでしょう。しかしそれはあくまで喧伝で、証明にはなっていません。
たとえばOECD加盟国の中でいうと、日本の子どもの自殺死亡率は比較的高い方のようですが、それは裏を返せば、病気や事故で死ぬ子どもが少ないことの証明ともいえます。(比率でいうと、アメリカの子どもは何と自殺より他殺の方が多いそうです。日本の自殺が多いというよりアメリカの他殺が多い=治安悪いという方が正しい気がしませんか?)
私は専門家ではないのでデータに対して正確な分析はできませんが、こうした繊細なテーマについて、性急に結論を出してはいけないということくらいはわかります。データを慎重に扱うことは大切です。教育において、自殺をダシにしたアジテーションはやめてもらいたいものです。
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