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不登校問題は問題だ③

以前にも不登校について語りましたが、2024年11月に2023年度の文部科学省の調査結果(『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果』)が出ましたので、少し補記します。

まず不登校はどの年代に多いのか問題から。

いっそ小<中<高<大かもしれない

以前の繰り返しになりますが、不登校の正確な調査は難しく、例えばその数(規模)にしても、義務教育である小学校中学校までしか把握できません。高校は不登校になったら退学するか転学してしまうからです。

不登校になった高校生の転学する先の多くは通信制高校で、そして通信制高校にはコンセプトからして不登校という概念がありません。(ほとんど通学しなくても卒業できるので。)だから見かけ上、高校の不登校は少なくみえてしまいます。

そのうえで注意してほしいのが、最近話題になっているニュース。

先日から「不登校児童・生徒の総数が小学校中学校合わせて30万人を突破した、何なら35万人程度に増えちゃった」というのが記事になっています。ところが、ここで高校や大学の不登校が話題にならないのは、不登校が少ないからではなく、正確な把握ができないからです。むしろ事実は逆かもしれません。

実態として、小中高大の不登校比率はどう変わっているんでしょう。

調査結果をみると明らかなように、小学校<中学校です。小学生より中学生の不登校比率が高い。実人数(概数)でいくと、

  • 小1 9千人

  • 小6 3万7千人

  • 中1 5万8千人

  • 中3 8万人

となっています。一目瞭然、かなりの勢いで単調に増加しています

どうやら小学校6年から中学校1年で一気に増える傾向はありまして、ここは環境適応の問題だとは思います。しかしそれさえ霞んで見えるほどに、年を経るごとに単調に増えています。(ちなみに学年ごとの総数はどれも100万人程度で大差ありません。)

ここから推測するに、不登校比率はいっそ小<中<高<大かもしれません。まあ大学は同世代の半数程度しか進学しないので除いたとしても、小<中<高なのは確かだと思います。

学年が上がると不登校比率が増えるという傾向は、どこかで抑制がかかる理由がないからです。むしろ、年を経るごとに家庭の登校圧力(学校行きなさい!)は小さくなっていきますから、増えていく方が自然です。

ただし、それは調査結果には現れません。単に不登校という定義がなくなり、ただの通信制高校の生徒であったり、退学した生徒であったり、高校に行かなかった生徒になってしまうだけです。

原因を突き止める意味は?

で、これって問題なのかどうか。前回、こんこんと述べました。

その結論は、不登校は学力低下という一点においてのみ問題であるということでした。

そして不登校になった原因は、(生徒から、保護者から、学校から、医療機関から、それぞれの立場で食い違って当然なので)調べるのが困難だとも述べました。もっといえば、不登校になった原因は本人さえもわかっていないものだと思います。

だからスケープゴートを探すために、原因をつきとめようとするのはやめるべきです。「原因になっている何かをつきとめて、そこを変えれば不登校が減る」という考え方は、不登校問題の解決策として悪手でしょう。良識ある日本の大人が、政治家が、こういった安易な解決に向かわないことをつとに願うばかりです。

不登校といじめを結び付けてはいけない

具体的にいうと、いじめです。

学校はいじめが増加しているから、子どもにとって学校は安心安全な場所じゃないから行きたがらないんだ。不登校になった子どもは何もおかしくない。子どもをせめてもしょうがない、いじめが蔓延している学校を変えなければどうしようもない。

こんな物言いが散見されますが、これって物語(ナラティブ)として極めてわかりやすい。だからこそ危険です。まったくといっていいほど根拠がないからです。

いじめは別問題としてしっかり議論されるべきですが、以前述べた通り、定義や認知に問題があります。不登校以上にその定義がガバガバで、その気になればいくらでも認知が増やせます。

だから「いじめが増えている」という発言は、その根本からしてまったく無意味なのです。それを根拠に不登校を語っても何の意味もありません。

子ども同士の関係性が未熟なのは古今東西変わらず、そこでトラブルが発生するのは当然。ケンカもします。嫌いな人もできます。嫌いな人がいる場所(例えば教室)に行くのを嫌がる気持ちもわかります。

でも、それがいじめというマジックワード(殺し文句)にくっついてしまうと、「いじめを無くせばいいんだ」というありえない解決策について議論することになってしまいます。

これはしない方がいいです。絶対に解決に結びつきません。

例えば以下のような記事ですね。

リセマムが文科省の通知を紹介する記事です。タイトルの時点ですでに、いじめと不登校がセットで語られています。因果については何も説明されていません。

しかし、読み手は「いじめが増えたから不登校も増えたんだな」と結びつけてしまうでしょう。こうしたわかりやすい理解が危険なのです。

(この件に限らず、一般に、読んでいて気持ちよくなる物語には注意が必要ですよね。読み手を気持ちよくさせるために書かれているので、物事を解決に向かわせる議論とは別物だからです。読んでついつい語りたくなっちゃうような、Yahoo!ニュースのコメントが伸びるような物語からは距離を置く。これぞ生きたメディアリテラシー。)

解決策を議論するなら?

不登校問題に対してすべきなのは、学校に通っていない子どもをどうやって他の方法で教育するかというアプローチです。通常の学校ではない学びの場、いわゆるフリースクールを用意すること等ですよね。

私自身、通常の学校教育に限界を感じているので、フリースクールを立ち上げた方とかすごくリスペクトするようになって、自分もそういうことしたいと考えるようになりました。

不登校問題を真に憂うならば、こういう解決策に時間を投じてほしいものです。

ちなみに、今回の調査によって2023年度でも不登校児童・生徒は急増していることがわかりました。つまり新型コロナが5類に変わってもなお、不登校は増え続けていたわけで、どうやらコロナは原因ではなさそうです。影響はあるのでしょうが。

コロナが完全に無関係になったといえる来年度、増え方は落ち着くかもしれませんが、そうはいっても増加傾向は続くでしょう。不登校は一時的な問題ではなく、本格的に手を打つ必要があるということですね。

[参考]


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