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新しい脳マッピングツール「START」、精密な神経回路解明で次世代神経治療の幕開け ソーク研究所

2024年9月、米国のソーク研究所は、新しい脳マッピング技術「Single Transcriptome Assisted Rabies Tracing(START)」を発表しました。この技術は、モノシナプス性狂犬病ウイルス追跡法と単一細胞トランスクリプトミクスを組み合わせ、脳内の神経細胞間の接続パターンをかつてない解像度で解明します。特に、脳の抑制性ニューロンのサブタイプがどのように接続されているかを特定でき、特定のニューロンや回路に標的を絞った治療法の開発を可能にします。

従来、ニューロンは興奮性(脳の活動を促進する)と抑制性(活動を抑制する)の2種類に大別されますが、STARTではこれをさらに細かく分類し、それぞれのサブタイプが脳内のどの部分に接続しているかを特定します。特に抑制性ニューロンのサブタイプについては、従来の方法では明らかにできなかった接続パターンが判明し、これにより、脳機能の詳細な理解が進むと期待されています。

たとえば、STARTを使用して、視覚野に存在するSst Chodlという抑制性ニューロンが、睡眠リズムを調整する脳の領域である視床にどのように関与しているかが明らかになりました。これは、睡眠障害や自閉症、統合失調症といった神経・精神疾患の治療に向けた新しい手がかりとなる可能性があります。

また、START技術は、各ニューロンのサブタイプごとに特定のウイルスや遺伝子編集技術を用いて、個別の治療法を開発するための基礎となります。将来的には、この技術が神経疾患の治療に革命をもたらし、従来の薬物療法に代わる精密な治療法が提供される可能性があります。

研究者たちは、この技術が今後10年から20年の間にどのように進化していくかを予測することは難しいものの、脳に対する現在の治療法が大きく変わることは確実であるとしています。また、START技術はオープンソースとして神経科学コミュニティ全体で利用でき、さらなる研究が進められる予定です。

この技術の登場により、脳の回路がどのように働き、我々の思考や感情、行動に影響を与えるかを理解するための新たな一歩が踏み出されました。次世代の神経疾患治療に向けた革新的なツールとして、STARTは今後の医学・科学に大きな影響を与えることが期待されています。

詳細内容は、ソーク研究所が提供する元記事を参照してください。

【引用元】

【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7

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