異なる時間スケールで言語を処理するニューロンを発見 マサチューセッツ工科大学(MIT)
私たちが会話をする際、脳はどのようにして瞬時に言葉の意味を理解しているのでしょうか?この問いに答えるべく、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、脳内で言語を処理するニューロンが異なる「時間スケール」で働いていることを発見しました。この発見により、脳がどのように複雑な言語情報を処理しているかが、さらに明らかになりました。
言葉は、私たちのコミュニケーションの根幹をなすものです。しかし、言葉を処理する際、脳がどのようにして単語を理解し、文全体の意味を把握しているのかは、長年の謎でした。言語処理は一瞬で行われるように感じられますが、実際には脳内では複数のプロセスが同時に進行しています。
MITの研究者たちは、脳の言語処理エリアにおいて、ニューロンが異なる時間スケールで言葉を処理していることを発見しました。この発見は、単語ごとの処理から文全体の意味の把握まで、脳が多層的に働いていることを示唆しています。
研究チームは、てんかん患者の脳内の電気活動を直接記録し、脳が言語刺激にどのように反応するかを調べました。その結果、ニューロンは異なる「時間窓」で活動していることがわかりました。つまり、あるニューロンは単語単位で即座に反応する一方、別のニューロンはより長い時間にわたって複数の単語や文全体を処理しているのです。
具体的には、短い時間スケールで活動するニューロンは、発せられた単語にすぐに反応し、言葉の音や意味を処理します。一方、長い時間スケールで活動するニューロンは、複数の単語が組み合わさって文脈を形成した際に活性化され、文全体の意味を統合する役割を果たしています。このことは、脳が単語単位の情報処理だけでなく、広い文脈での意味理解も行っていることを示しています。
研究は、2016年に行われた6人のてんかん患者から収集されたデータを基に行われました。患者たちは、様々な言語刺激にさらされ、その際の脳内活動が記録されました。このデータを分析することで、言語処理に関わるニューロンが、異なる「時間窓」で活動していることが明らかになりました。
これまでの研究では、脳の言語処理の全貌を理解するのは難しかったのですが、今回の研究は、ニューロンがどのように異なるリズムで働いているかを明確に示しました。言語処理は単純な一元的なプロセスではなく、複数の時間スケールに基づいた動的なプロセスであることが証明されたのです。
この発見は、言語処理のメカニズムに関する理解を深めるだけでなく、言語障害の治療や人工知能(AI)による自然言語処理の進化にも貢献する可能性を秘めています。例えば、異なる時間スケールで言葉を処理するニューロンの働きを明確にすることで、言語障害を抱える患者に対する新しい治療法が開発されるかもしれません。
また、AI技術においても、脳の働きを模倣することで、より高度な自然言語処理システムが生まれる可能性があります。脳が言葉をどのように処理しているかを理解することは、未来の技術革新にもつながる重要な一歩です。
MITの研究は、脳の言語処理における複雑な仕組みを解明する上で大きな進展をもたらし、今後のさらなる研究の道を切り開くものとなるでしょう。
詳細内容は、MITが提供する元記事を参照してください。
【引用元】
【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7