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量子計算の新時代、二重符号化でエラーゼロの計算を実現 インスブルック大学
量子コンピュータは、従来のコンピュータでは解決が難しい問題に対して革新的な解決策を提供する可能性を秘めています。しかし、その計算過程は非常に繊細で、微小なエラーが結果に大きな影響を及ぼすことがあります。この問題を解決するために、量子誤り訂正符号が開発されてきました。しかし、従来の誤り訂正符号では、すべての計算操作を効率的かつエラーなく実行することが難しいという課題がありました。
この課題に対して、インスブルック大学の研究チームは、RWTHアーヘン大学およびユーリッヒ研究センターのチームと協力し、量子コンピュータが二つの異なる誤り訂正符号を切り替えながら計算を行う新しい手法を開発し、初めて実験的に実証しました。
従来、量子情報は複数の量子ビットに分散してエンタングルメント(量子もつれ)を利用して冗長的に保存されていました。これにより、エラーが発生しても情報を復元することが可能となります。しかし、特定の誤り訂正符号では、すべてのゲート操作(量子ビット間の操作)をエラーから保護することが難しいという制約がありました。
この問題を解決するために、研究チームは二つの異なる誤り訂正符号を組み合わせるアプローチを採用しました。具体的には、計算の途中で量子ビットの符号化方式を切り替えることで、各符号の得意な操作を活用し、全体としてエラーに強い計算を実現しました。
この手法の実証には、インスブルック大学のイオントラップ型量子コンピュータが使用されました。このシステムでは、カルシウムイオンを電磁場で捕捉し、レーザー光を用いて量子ビットとして操作します。研究チームは、このプラットフォーム上で二つの異なる誤り訂正符号を適用し、計算中に符号を切り替えることで、エラーを効果的に抑制することに成功しました。
この成果は、量子コンピュータの実用化に向けた重要な一歩となります。従来の手法では、特定の操作に対してエラー訂正が難しいという制約がありましたが、二重符号化のアプローチにより、これらの制約を克服し、より柔軟でエラーに強い量子計算が可能となります。
さらに、この手法は他の量子コンピュータのアーキテクチャにも応用可能であり、量子計算の分野全体に大きな影響を与えると期待されています。今後、さまざまな量子誤り訂正符号の組み合わせや最適な切り替えタイミングの研究が進むことで、量子コンピュータの性能と信頼性がさらに向上するでしょう。
量子計算の実現には、エラーの抑制が不可欠です。今回の研究は、二重符号化という新しいアプローチでこの課題に取り組み、実験的にその有効性を示しました。これにより、量子コンピュータがより実用的で信頼性の高いものとなる未来が一歩近づいたと言えるでしょう。
詳細内容は、インスブルック大学が提供する元記事を参照してください。
【引用元】
【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7