息子が右目だけで見る世界
毎年、新学期に担任の先生に話すこと
6月から子供の小学校が再開した。
4月に1日登校しただけだったので、6月からが実質的には新学期のはじまりだ。
この時期には、いつもすることがある。
それは、息子の担任の先生に、彼の眼についての話をすることだ。
現在、小5の息子は、生まれつき左目の視力が極端に弱い。
今までの経緯
はじめに「なんだかおかしいな」と思い始めたのは、3歳頃だった。どうも、横やななめを見るとき、焦点がずれる気がした。なんとなく違和感を持ったまま、まだ成長途中だからとしばらく様子を見ることにした。
しかし、やっぱり気になったので、幼稚園の年少の頃、眼科に連れて行った。近所の眼科だったのだが、その後、子供医療センターという大きな病院を紹介された。結果は、先天的に左目の視力が弱く、右目だけで見ている状態だと言われた。手術で治るものではないということだった。
効果はほぼないだろうが、悪くなることもないから、と4歳頃から眼鏡をかけ、夏休みにアイパッチにチャレンジした。見える目(右目)を眼帯みたいなもので隠し、左目を使う練習をするのだ。
少しでも望みがあるなら、と思ってがんばったが、これが辛かった。1日1時間くらいだが、左目だけだと、顔を紙におしつけるようにしないと見ることができない息子はイライラした。当時、年子で2歳になる娘がいたので、私も余裕がなくてイライラした。1カ月続けたが、辛かったし、効果はないだろうと言われていたので、断念した。
こんなに小さい頃に分かったのに、なにもできることはないのか。
そう思って、大きな大学病院を紹介してもらった。しかし、そこでも同じ診断だった。
できることはすべてやった。受け入れよう。
そう思った。
その後、眼鏡も効果はないだろうということで、1年程度で終わりにした。
息子の見ている世界は
去年から、右目が近視になったので、また眼鏡をかけることになった。せめて右目は、視力がこれ以上悪くならないでほしいと、いのるばかりであるが、成長に伴って、視力もある程度までは悪くなっていくらしい。どうしようもない。
毎年4月、担任の先生が変わるたびに、息子の左目について説明をする。
「右目だけで見ているけど、問題ありません。」
でも、右目だけで見る世界ってどんなだろう?
毎年、先生に説明しながら、それでも、決して息子ではない私が分かるわけもない、息子の見え方について説明している。
昔、病院の先生に「3Dって認識できるんですか?」と聞いた時、「たぶんできない」と言われたが、息子に聞くと「分かるよ」と言っている。「立体的に見える?」と聞くと、「うん」と言う。
私はよく考える。
息子から見えている世界はどんな景色だろうか?
3Dとか立体的というものを、私と同じイメージで共有しているのだろうか?
両目で見える世界を、見せてあげたい。
でも、そこでふとこうも思う。
両目であっても、1人1人、見ている世界は違うのかもしれない。同じ景色も、見る人によって、捉え方は変わってくる。もしかしたら、自分以外の誰かと、全く同じ景色を見ることは不可能なのかもしれない。
息子には、息子しか見ることのできない世界を大事にしてほしい。
この先、自分の状況に、傷つく場面が訪れるだろうか。それでも、唯一無二の自分の世界に誇りを持ってほしいな。そして、その世界のことを、私にたくさん教えてほしいと思う。
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