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わたしのすきなもの#03 桜

学生のとき、わたしは自分の誕生日があまりすきじゃなかった。

ちょうど入学式が行われ、学年と学年が入れ替わり、クラス替えが発表されるその頃、きっと誰もが自分のことでいっぱいいっぱいになるでしょう。

新しく始まる生活にわくわくして、どんな人に出会えるのか、そんなことを考えているときに他人が生まれた日なんて結構どうだっていいでしょう。

まさに、そんな日にちを選んだかのように生まれてきたわたしは、学生時代ほとんどリアルタイムで「おめでとう」を言ってもらったことがなかった。

頭上から落ちてくる花びらがなくなって、緑色の葉っぱが濃くなってくる頃、ようやく馴染んだクラスメイトたちとの「誕生日いつ?」のやりとりで実はもう終わっていて…なんて会話、今までに何度したでしょう。

ちえっと愚痴ると、夏生まれの子も夏休みに重なりがちであまり祝われたことないよ、なんて言うから、じゃあ秋と冬生まれの子はたくさん「おめでとう」って言ってもらえて羨ましいねえ、なんて会話をよくしていた。

クラスの誰よりも先に歳を取ることが嫌だったわけではなかったけど、よーいどんで学年はスタートするのに、わたしはもうすでにひとつ歳を取っていて、例えば3月に生まれた子たちはこのあと12ヶ月ゆっくり過ごせるなんて、なんだか損をしている気がしていたのだ。

(今じっくり考えてもやっぱり損してた気はする)

でも、学生じゃなくなってみんなが一斉に何かをする仕組みから解放された今はそんなこと結構どうでもよくなってきた。

学生じゃなくなって随分経つ今でも、年齢をいうと学年数えで同じ歳かそうでないかを比べる話になると、いつまでも縛られちゃうその感じに笑ってしまうけど、でも損してる、なんて感じはもう思わない。

むしろ、みんなが一斉に気合いを入れ始める季節に誕生日がくるのは他の人より「よっしゃ度」が上がる気がしてなかなか気に入っている。

この季節に新しい自分にちょっとだけ期待して、いくつかの小さな約束をするのがすき。(例えば「メイクしたまま寝ない」とか「毎朝一駅分歩く」とか。守られたこと今まで一度だってないけど。)

街ゆく人たちがみんなちょっとだけ上見て楽しそうに会話する、そんな桜がわたしもやっぱりだいすきで。だからそんな桜が満開になる頃に生まれて、よかったと今なら素直に思えるようになりました。

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hitomi.
もっともっと新しい世界を知るために本を買いたいなあと思ってます。

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